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コーツ:交響曲第1番、第4番、第7番

2016-10-23 22:18:56 | CD


グロリア・コーツ:

・交響曲第4番 「明暗」
 指揮:ヴォルフ=ディーター・ハウシルト
 シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団

・交響曲第7番 「平和な時に壁を壊す者たちに捧ぐ」
 指揮:ゲオルク・シュメーヘ
 シュトゥットガルト・フィルハーモニー管弦楽団

・交響曲第1番 「開放弦による音楽」
 指揮:エルガー・ハワース
 バイエルン放送交響楽団

CPO: 999 392-2



 アメリカ生まれの女流作曲家グロリア・コーツは大変に多彩な人のようで、作曲家の他にも女優や画家などの肩書きもあるそうです。このディスクのジャケットも彼女が描いたものです。

 で、その音楽はといえば、サイコホラーのような極めてダークな感じの作品ばかり。不協和音や変則リズムやその他モロモロのデタラメだけの音楽ではないような気はするのですが、伝統的な形式にとらわれずに、暗い音素材を繰り返し、不気味な伴奏を次々に重ね、真っ黒いかたまりのような作品になっております。なにより、グリッサンドを多用しているために大変な不安定感があります。まさにサイコホラー映画において自己が変容していく様を思わせます。

 最初の交響曲第4番には「明暗」と表題がついていますが、ネイビーブルーとエボニーブラックの差くらいにしか感じられません。3楽章構成で、それぞれ「イルミネーション」「神秘的な破裂音(Mystical plosives)」「夢の連続(Dream sequence)」などのよくわからないタイトルが付いています。第1楽章では絶望的に暗いながらも聴きやすい和音進行ですが、楽章が進むごとに抽象性が増していくのがだんだん深みにはまっていくようでたまりません。

 次の第7番の「平和な時に壁を壊す者たちに捧ぐ」とはベルリンの壁のことでしょうか。作曲年代は1990〜1991年とあり、ベルリンの壁崩壊は1989年なのでおそらく間違いないでしょう。こちらも3楽章構成で、「時の回転木馬(Whirligig of Time)」「時のガラス(Glass of Time)」「時の回廊(Corridors of Time)」などの意味深なタイトル付き。そうかといって何かエピソディックな音楽というわけでもなく、むしろ微分音やトーンクラスターを用いた晦渋な絶対音楽です。あるいはデザイナーズ音響といった雰囲気で、なんとなくペンデレツキの「広島の犠牲者に捧げる哀歌」を思わせます。ところどころ次の交響曲第1番に似ているように聴こえます。

 そしてその第1番「開放弦による音楽」ですが、これがまたイカした音楽なのです。



 弦楽のための作品で、ひょっとしたら特殊な調弦をしているのかもしれません。特に第1楽章が最高で、テーマとなる数音のモチーフを繰り返しながら、ギュインギュインとうねるグリッサンドやバッチンバッチンと叩かれるバルトーク・ピチカートが重なっていくのが病みつきになります。第2楽章はリズミカルなスケルツォ。ダークながらもユーモラスな印象です。第3楽章は真の太い音が持続する東洋的な音楽。そして最後の第4楽章は「43声のための屈折鏡像カノン」というなんだかそのうちラノベに出そうなタイトルで、とにかくウネウネしまくっています。

 というわけで、とにかく意味が有るような無いようなタイトルとダークでうねる音楽は聴く人を選びまくるでしょう。毎日が楽しくてしょうがないという人がコーツの曲を聴くのは時間の無駄でしょうが、毎日生きるのがつらいという人には希望になる曲かもしれません。ペッテションの交響曲とともにオススメです!


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