アラン・ペッテション:
・交響曲第9番
指揮:アラン・フランシス
ベルリン・ドイツ交響楽団
CPO: 999 231-2
救いようがない音楽です。
救いようのなさが異次元に突入していて、
笑うしかありません。
もちろん、これは音楽の出来が救いようがないほど悪いという意味ではありません。
スウェーデンの作曲家ペッテションは最悪の家庭環境と健康状態の下に、17もの交響曲を作曲しました(ただし1番と17番は破棄)。そのちょうど中間の第9番は長大な単一楽章の交響曲です。この演奏では70分かかっています。ベートーベン以来の作曲家は「第9」というナンバーに特別なものを感じているようですが、それにしてもこの交響曲はやり過ぎ。
交響曲はソナタ形式とか4楽章構成とかのような典型的な型があります。これは「苦悩と勝利」みたいなものをイメージさせるのにはちょうどいい感じのツールなのです。ところがこのペッテション第9はそういった形式を使わずに、小太鼓が攻撃的なリズムを繰り返したり、途中取ってつけたように妙に感傷的な部分が現れたり、なんだかよくわからないけど
不幸と怒りと戦闘と苦悩と決定的敗北とあっけない死
という巨大なマイナスのイメージを構築しているのです。
普通の生活を送っている人間にとってあまりにも現実離れした不幸っぷりです。このディスクを聴くと大抵の悩みはどうでもよくなり、むしろ笑いがこみ上げて元気になってしまいます。悲劇の主人公を気取っている連中に聴かせたいですね。ペッテションの他の曲もみんな悲惨な感じですが、笑えるほど悲惨なのはとにかくこの第9です。
余談ですが、このジャケットはピエール・スーラージュの絵画です。大体このようにべったりと黒い絵の具を塗りたくってこすりつけたような絵です。CPOレーベルのペッテションCDのジャケットはこのスーラージュの絵画が多いのですが、これがまた曲にマッチしていると言えましょう。
動画は上記CDの演奏、1時間以上あります。あまりにもネガティブな音楽で、聴いていて笑いすらこみ上げてきます。
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