大前研一のニュースのポイント

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ソフトバンク流中国市場の攻め方。今後の動向にも注目

2008年06月03日 | ニュースの視点
ソフトバンクが中国のインターネット市場への攻勢を強めている。

中国のネット人口は今年、世界最大になるとの見方もあり、孫正義社長は以前から市場開拓の重要性を強調してきた。

ソフトバンクは中国のネット大手オーク・パシフィック・インタラクティブ(OPI)に40%出資し、筆頭株主になることで合意。孫社長が取締役に就任。投資規模は約400億円になるとのこと。

孫社長の特徴として、「インターネット関連事業は国境を越えられない」ということをしっかりと認識した上で戦略を構築していることが挙げられると思う。

今、中国でも外資のインターネット関連企業は軒並み苦戦を強いられている状況だが、自ら米国でヤフーを買い、その株を売りながら日本のヤフーを育てたという経験を持つ孫社長の手腕が光っている。

孫社長が目指すインターネット関連事業の海外戦略の基本は「その国のチャンピオンサービスを買ってしまう」というものだ。

今回の買収の結果、ソフトバンクグループが出資する中国企業は、中国最大のBtoB企業のアリババ・ドットコム、最大のCtoC企業のタオバオ、そしてSNSのオーク・パシフィック・インタラクティブとなり、見事に各分野におけるチャンピオン企業ばかりを押さえた形になっているのだ。ここに、ソフトバンク流・孫流の戦略の真髄が見える。

また、こうした大きなディールに関する決断が驚くほど早いというのも、孫社長の特徴の1つだ。数百億円規模の投資案件についても、即断・即決をするため、しばしば相手が驚くことも多いと聞く。

私がかつてソフトバンクの社外取締役だったころ、たった2年の間に臨時取締役会が18回も開催された。

これは、例によって孫社長が即断・即決によって大きなディールをまとめようとするため、その度に臨時取締役会を開催する必要が出てきたからだ。

04年末には1億人に満たなかった中国のネット人口は、昨年末に2億1千万人に達したと言われている。今年中には米国を追い抜くのではないかという見方もある。

しかも、2億人とは言え、中国の人口から考えるといまだに普及率は20%に満たない割合だ。今のうちに投資しておけば、後々株式市場から爆発的に大きなリターンを得ることも夢ではないと私も思う。

また、今のうちに投資することのもう1つのメリットは、今の段階で影響力を発揮して、恩を売っておくと、後々になっても影響力や発言力が残るということだろう。

今ではソフトバンクの米ヤフー株式の保有割合は4%に過ぎないが、未だに孫社長の米ヤフーへの影響力は強く、ジェリー・ヤン氏との関係も継続している。

同じように中国についても、一旦筆頭株主として影響力を持ち、投資先企業の成長とともに徐々に株を売却しキャピタルゲインを確保しつつも、その影響力をある程度保持するという方法は有効だと私は見ている。

米ヤフーとの関係性という意味では、マイクロソフトによるヤフー買収というビッグディールに関して、孫社長が全く表舞台に出てきていないのは、不思議だ。

今のところ沈黙しているところを見ると、大きな画策が当たらずに終わってしまったのかも知れない。

また、ソフトバンクが優先株の発行を取りやめたことの真意についても気になる。今の株価ならば、この株価を持って第三者割当増資をすることで借金を返すのが得策だと私は思う。

今、孫社長がなぜ動かないのか私には分からない。何か大きな理由があるのかも知れない。いずれにせよ、ソフトバンク・孫社長の今後の動向には注目していきたいところだ。

1 コメント

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Unknown (高3)
2008-06-05 02:58:02
孫さん


すげ~日本人だな
日本の人が世界で活躍してんの見ると燃えます(笑)

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