大前研一のニュースのポイント

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住専、サブプライムと同じ問題が中国でも起こっている/中国経済は爆発寸前か?コマツへの影響は?

2013年07月05日 | ニュースの視点

中国の代表的な株価指数である上海総合指数が24日に急落した。前週末比5.3%安となり、心理的な節目である2000を約半年ぶりに割り込んだ。そんな中、米ヘッジファンド、グランドマスター・キャピタル・マネジメントのパトリック・ウルフ氏は、中国の腐敗や不良債権の増加が危険な状態に達しており、今後株価が急落する可能性がある、との見方を示している。

今週は少し落ち着きを見せたが、上海銀行間の金利は乱高下を続けていて、13%まで金利が上昇する局面もあった。上海総合指数は下降傾向が続いており、今中国は非常に手が出しづらい状況だ。

中国経済の大きな問題の1つは「シャドーバンキング」だ。かつての日本の「住専問題」や米国の「サブプライムローン問題」と同じように裏金融が膨れていくという問題だ。

先月29日には中国の銀行業監督管理委員会の尚主席が、高利回りの資産運用商品である理財商品の2013年3月末の残高が8兆2000億元(約130兆円)に達したと明らかにしている。理財商品は銀行の通常の預金・融資とは別ルートで資金を集める中国の「シャドーバンキング(影の銀行)」の代表的な存在であり、理財商品を通じて企業や個人から集まった資金は主に地方政府の不動産・インフラ投資に流れている。

地方政府の悪党役人が、自分のプロジェクトのためにシャドーバンキングから資金を借りまくっているのだが、当然支払い能力がない。中国経済のバブルが崩壊したとき、この問題が表面化してくるだろう。日本が住専につけかえたように、中国もほとんど似たような状況になるのではないかと思う。

約130兆円という規模は中国のGDPの16%程度だ。当時の日本よりはやや軽くなるが、それでも中国経済に打撃を与えるに違いない。多くのアナリストが、この問題を中国の「住専」、中国の「サブプライムローン」と判断し、警戒を始めている。

中国は社会主義国家だから、中央政府が強引に問題解決に乗り出して資金を提供してしまえば、ある程度は対処できるかも知れない。しかしその場合には、これまで悪事を働いてきた人も救済することになってしまうので、舵取りが難しいところだろう。

中国の習近平指導部が経済成長の鈍化を容認する路線に傾いている。前指導部時代が残した課題を一掃する政治的な思惑も働き、安易な景気刺激策には動かない構えだ。そんな中、産経新聞のメディアが「中国経済、7月恐慌!6大時限爆弾が破裂寸前」と題する記事を掲載した。輸出の鈍化、消費低迷などに加え、地方政府の巨額債務や「影の銀行(シャドー・バンキング)」など六重苦が連鎖しており、いったん火が噴けば、危機が連鎖する「複合恐慌」となりかねないと指摘している。

今、巷にはこの手の情報が溢れている。これを反転させるのは、習近平政府にとっても至難の業だと思う。ロバート・フェルドマンをして、バブル崩壊直前の日本経済は「逆立ち」しなければ良い面は見えてこないと言われたが、まさに今の中国経済に関する報道も似たような状況になっている。中国経済のバブル崩壊という地雷は、まさにこの7月にも爆発するのではないかと言われている。

中国経済に暗雲が漂い始め、日本企業にもその影響が見え始めてきた。25日の東京株式市場でコマツ株が一時、前日比120円(5%)安と急落した。中国市場での短期金利上昇などを受け、現地ユーザーの資金調達が難しくなるとの懸念が台頭したためで、市場の関心は中国金融市場の動揺が建設機械市場にどう波及するかに向かい始めた模様だ。

コマツは中国でも上手に事業展開をして、かなり好調だった。しかしここに来て、やや中国での状況に変化が現れてきた。「日本(コマツ)が輸出するショベルカーなどに搭載されているGPS機能で、中国の個人情報を盗んでいる」などと報じられる事態も発生している。ただ実際のところ、コマツの株価が下落したのは、中国経済がパワーダウンし、ブルドーザーやショベルカーなどの高額商品を購入できる企業が少なくなったからだと私は思う。

中国の問題が大きく騒がれているが、コマツの売上に占める中国の割合はそれほど大きくない。中国よりも、アジア全体のほうが大きいし、中南米、北米、オセアニアでも強さを見せている。全体的に非常にバランスが良い状態なのだ。中国での問題によってコマツは久しぶりに問題を抱えているが、それでもコマツの経営は安定しており大勢には影響はないと見て良いと思う。


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