大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

神奈川に期待すること/復興会議は首相が主体的に/高台開発をしても漁場は荒れない

2011年05月31日 | ニュースの視点
私は今回の大地震を契機にして、日本経済の活性化のために中央集権から地方分権に統治機構を大転換することを提案した。具体的には、道州制移行への第1ステップとして5つの「都」「州」を作ることだ。その中に含まれる「神奈川都」について、少し解説したい。

私が神奈川に期待しているのは、「羽田空港」と「みなとみらい」という2つのインフラを大いに活用した街づくりだ。羽田空港をアジアの拠点にし、横浜を東洋のベニス化させ、世界に誇れるウォーターフレンドリーな街づくりを目指して欲しい。

羽田空港が国際化した際には、様々なグローバル企業のアジア本社を神奈川に誘致することができるはずだ。羽田まで15分という立地は魅力的であり、また水辺の環境がいい土地に事務所や住宅が立ち並ぶ、そんな街づくりができるはずだからだ。欧州の一部の街で実現しているようにモノレールやローボートを走らせて羽田や横浜を結ぶようにすれば、日本には例のない「素晴らしい街・都」になるだろう。

復興会議メンバーの選定について、様々な意見があるようだが、今回の会議メンバーを見た私の率直な感想は、「寄せ集めでは駄目だ」というもの。誰かに任せて提案が出てくるのを待っているのでは話にならない。

私ならば、1人で丸1日部屋にこもって考えれば、大体の方針を固めることができる。実際、私は3月13日、3月19日というタイミングで今回の問題に対する対処方法を発表した。さらに尖った提案を考える必要がある場合、特定の分野に限って誰かに手伝ってもらおうという判断もあるが、その際でも、1週間時間をもらって私自身が「この人なら」を思う人を選抜し、一緒に丸1週間部屋に閉じこもるだろう。

いずれにしても、自ら主体的に書き下ろすことが必須だ。それが務まらなければ、チーフエグゼクティブオフィサーとは呼べないと思う。

私が提案している「高台の街づくり」という復興案について、「山間部を養生することで海を豊かにする漁業のシステムを維持しつつ、高台を開発することは可能なのか?」という質問が寄せられた。

この心配はほとんどないと思う。東北地方の漁業が豊かなのは、必ずしも山間部のおかげではないからだ。東北地方太平洋側では暖流の黒潮と寒流の親潮が混合して海域が形成されていて、ここで植物・動物プランクトンが豊富に発生し、世界三大漁場の1つに数えられるほど豊かな漁場になっている。

また東北地方の山林は豊富なので、山林を開発して街づくりに活用しても、高台の街づくりによって山が無くなってしまうということにはないので、その点も安心して良いと思う。


【今週の問題解決視点のポイント】
単なる復元ではなく、いかに知恵を絞って「新生日本」をつくるかを考える。

11 コメント

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「熱さ忘れる」のが早すぎる (上石)
2011-05-31 16:56:59
 復興というと、誰もが「私ならば」と考えるが、それが「自ら主体的に書き下ろすことができるチーフエグゼクティブオフィサー」であれ、どうであれ、現実は地震予知ができなかった地震学や、原発の耐震性や耐久性という科学が当てにならない、ということが証明された前提であることを忘れている。
 これで誰が自信を持って『復興』を語れるのか? 想定外が被害を拡大する原因であることをも、すっかり忘れている。
 この文章では「街」が8つも書かれているが、「街づくり」と言っても、街とは区画の単位に過ぎない。文章を読んでも、人が住まう、ことが欠落している文章なのが残念であり、欠点だ。
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Unknown (新興国投資)
2011-06-01 03:16:29
「復元」は良くないですね。この災害の結果、逆に良くなったと言わせしめなければ、お亡くなりになられた被災者の方たちの供養にもならないというものだと思います。バラバラな意見を集約して妥協したものではなく、一つの哲学にのっとた論理的な街づくりを私も切に願います。
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新生日本 (ちゃっぷんこ)
2011-06-01 07:39:24
災害はまだまだ収まりません。
国債の格付け、また下がりましたね。
新生日本は財政破綻が終わってからです。
てか、平均寿命が50歳を越えたこの国は救いようがないですよ。
財務省内部の人間によると、先日、国債の入札において不落札という事態が発生したらしいです。

サヨナラ日本。
皆さんいよいよですよ…。
本当の悲劇は…。
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兵庫に期待すること (野々村竜太郎)
2011-06-01 14:07:20
兵庫県政に期待することをご教示くださいますようにお願い申し上げます。
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久しぶりに♪ (よっち)
2011-06-01 21:17:16
原発がらみでは、理解しがたい記事ばかりでしたが
久しぶりに、大前さんらしい、独創性のある記事が読めました♪

羽田空港までの移動は、乗船時間以外にも、町から船着き場までの移動、船着き場から羽田空港内部までの移動もかかります

これらをトータルで見て、モノレール等の利用よりメリットが無ければ、空港に近いというメリットは活かせないと考えます

個人的には、水陸両用車等の面白い手段で空港までの交通インフラを整備してもらえるならば使ってみたいと考えます
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[] (Unknown)
2011-06-02 02:33:13
「みなとみらい」と「羽田空港」の話だけなら神奈川というより横浜に期待することではないでしょうか。
それとわざわざ道州制の話を持ち出して「神奈川都」と表記している意図がわかりません。
そもそも神奈川県を都にする意味があるのでしょうか。現行の3政令市(横浜市、川崎市、相模原市)をどうしろと言いたいのでしょうか。
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heidi (wakamoto)
2011-06-02 13:52:54
大前さんの、McKinsey時代に、数百億の損を出した企業のM&Aにかかわったことがあります。小生は、反対、大前さんは、経験もないのに推進。
大前さんの話は、半分に聞いておくのが良い。
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鵜呑みにしないこと (b)
2011-06-02 20:29:39
「東北地方の漁業が豊かなのは、必ずしも山間部のおかげではないからだ。」

これは本当?
アセスメントした結果であれば納得するが、富山湾の豊潤さの理由を聞いたりする限り、暖流と寒流の衝突だけあれば大丈夫とするには無理があると思う。
街づくりには100年の計がいる。拙速は良くないでしょう。
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Unknown (不動産ブローカー)
2011-06-02 22:43:31
 漁村は津波対策で高台へ…それは一つの意見として検討の余地があるとして、都市作りは水辺で…となぜこの二つが並立してしまうのですか?
 1人の人間がこんな短文の中で矛盾したことを言ってしまうのか、ご自分で読み返されましたか?漁村を津波が襲うのと大都市を津波が襲うのではどちらが深刻な被害がでるのかはご存知ですよね。
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Unknown (ゆうじ)
2011-06-03 09:47:11
>不動産ブローカーさん
東京湾内にある横浜では
三陸よりも津波の規模は小さいからだと思います。

横浜で数十メートル級の津波というのは
歴史上無いかと。

今回の大津波は、全て歴史上大津波のあった地域で
起きています。(福島県浜通りを含む)
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