記日きつい思れぐま気 from バンクーバー

2012年4月から妻の海外赴任に伴い主夫業と育児に励む30代男性の日常。バンクーバー関係ないことも多々あります。

感想文『社員をサーフィンに行かせよう』

2012-07-30 11:12:49 | 本の感想
サーフィン。僕が大学生の頃は折からのサーフィンブームでして、陸(おか)サーファーと呼ばれるサーフィンをしないけどサーファーっぽいファッションをする人たちまでおりました。そこへきてへそ曲がりな僕としましてはあんなチャラいスポーツはやってなるものかと当時は毛嫌いしておりまして、別に硬派でもないのに何であんなに頑なに否定していたのかと今となっては反省する次第です。
最近になってやりたいなあなんて思うのですが、今度はなんだか難しそうだとか下手くそだと周りに迷惑をかけそうだとか冬場は寒そうだとかまた自分の中で勝手に障壁を作ってしまっておりまして、いかんなと。そんなこと言ってたら一生サーフィンやらないなと。そんなわけでサーフィンを始めるきっかけを探しているところだったりします。きっかけとかなんとかグダグダ言ってないでとりあえずやりゃあいいんですけどね。

で、まあそんな話とは全く関係ないのが本書です。著者はアウトドアメーカーで有名なパタゴニアの創設者でありオーナーであるイヴァン・シュイナード。タイトルにある「社員をサーフィンに行かせよう」は内容の極一部で、主にパタゴニアの歴史とその理念の紹介に紙幅を割かれています。無論、「サーフィンに…」は重要な理念の一つであり、まったく関係ないわけではありません。その狙いは、いい波が来たときは仕事中であろうといつでもサーフィンに行っても良いかわりに、いつでも行けるような仕事をしよう、というもの。また、社員がサーフィンに精通することで製品開発にも深く携われるようになることも狙いとしているそうです。サーフィンをしない社員も、趣味がロッククライミングだったりスノーボードだったりで天候によって突発的に出かけることを是とし、そして趣味以外でも家族の病気やお祝い事で会社を休むことも奨励しているそうです。他にも会社にオーガニック野菜のカフェテリアや託児施設を他社に先駆けて設けたりと社員を大切にしている社風が見て取れます。

製品開発においては、無駄を省き機能性を高め、使いやすいものを作ることに注力しています。個人的になるほどと思ったのは、「最高の製品を作る」という理念において、高級な布地を手縫いで仕上げたシャツは洗濯の手間が大変であり、そんなものは最高の製品ではない、使用するにあたり顧客の手を煩わせるというのはよろしくない、という考え方です。こういう製品へのこだわりはジョブズに通じるものがあり、いままでパタゴニアの製品を使ったことはありませんがちょっと使ってみたいなと思わされました。

また、前述の福利厚生や製品開発に関する面よりも強くその必要性を訴えているのが、企業を100年先にも存続させるために何をするべきか、ということにあり、そのためにアウトドアメーカーとして環境保護を非常に強く推進しています。自然が破壊されればアウトドアメーカーは存続できないという考えは、当たり前ではありますが果たして他の企業がどこまで真剣に考えているのかと考えさせられます。
具体的には、パタゴニアでは環境に優しい素材や染料を使用しています。また、売上げの1%を環境保護団体に寄付する「1%クラブ」を創設し毎年寄付し続けているそうです。「利益」ではなく「売上げ」の1%ってすごいですよね。曰く、「利益は会計処理の仕方次第でいくらでも変わってしまい、赤字にすれば寄付もしなくてよくなってしまう。それは誠実ではない。」ということです。まあ、シーシェパードやグリーンピースのようなちょっと過激な団体にも寄付しているのはどうかなと思うのですが、それでも考え方としては素晴らしいの一言だと思います。是非とも日本企業も1%クラブに加入して欲しいなと願う次第です。とはいえ、上場会社だと株主から色々言われてしまいなかなか難しいでしょうけどね(そのためにパタゴニアは上場せず一貫してオーナー企業を貫いています)。

とまあ、タイトルから想像するような軽いノリというよりは深く考えさせられる内容の本でした。会社の一つの形としてこういう考え方もあるんだなという点で、読んでみると面白いかもしれません。

社員をサーフィンに行かせよう―パタゴニア創業者の経営論
クリエーター情報なし
東洋経済新報社

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