Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

クリスマスに読む本

2019-12-25 20:25:18 | 読書感想文(海外ミステリー)

みなさんお久しぶりです。
気がつくと前回の更新から1ヶ月以上経ってました…。もう今年も残すところあと1週間を切ってます。
フィギュアスケートはグランプリシリーズどころか全日本選手権も終わってるし。昌磨優勝おめでとう。まずは四大陸頑張って。明日からロシア選手権楽しみですね。それではみなさん、よいお年を…ってもう終わるんかい!本題に入ってないやないかい!ぜーぜーはーはー。

はい、ノリツッコミはこのへんにして、本題「クリスマスに読む本」です。私はミーハーでイベントに弱いので、毎年この時期になるとアガサ・クリスティーの作品とか、カポーティの「クリスマスの思い出」とか、クリスマスを題材にした小説を読みがちです。
ですが、今年は読みませんでした。というか、読めませんでした。12月、師走のはじめに読んだアーナルデュル・インドリダソンの「声」が衝撃的過ぎて。「湿地」「緑衣の女」に続く、アイスランドを舞台にした、エーレンデュル捜査官シリーズの3作目です。

クリスマスシーズンでにぎわうホテルの地下室で、そのホテルのドアマンだった男が何者かにめった刺しにされて殺されるという事件が起きた。エーレンデュルが捜査を進めるうちに、殺された男の意外な過去が明らかになり…

シリーズも3作目になると登場人物たちに愛着がわいてきて、話の本筋よりも些細なエピソードが気になってしまうという現象が私にはよくあります。今回は、「アイスランドの人はクリスマスをどう過ごすか」でした。なんかもう、クリスマス当日よりずっと前から、お菓子を焼いたり料理を準備したり、すごく大変そうです。クリスマスを1人で過ごすのもよく思われないみたいで。そこいくと私の今年のクリスマスなんて…昨日のイブは晩ご飯が焼き鳥(タレ)で、ケーキ食べながら前日に録画したメダリストオンアイス見て終了、でしたよ。ちなみに今日はエビフライでした。でもエビフライを揚げるために仕事を早引けしたので、私も地味に気合い入ってますね。地味だけど。ちなみに自分へのクリスマスプレゼントは「ロケットマン」のBlu-ray&DVDです。見たらまた感想書きます。特典映像楽しみです。

話が少しそれました。でも「クリスマスをどう過ごすか」はこの小説のラストシーンにも関わってくるので、重要ではあります。もちろん、ミステリーだから、殺人事件の犯人は誰かとか動機は何かとかも重要なんですが。これまでのエーレンデュル捜査官シリーズ同様、ミステリー要素よりも、主人公含めこの世界に生きる人たちの抱える悲しみと苦しみが冬の曇り空みたいに重くたれこめていて、そんな彼らにとってクリスマスをどう過ごすかはとても重要なんだなと思うので。何かに追われているようで、とても楽しんでるように見えなくても。

そこへきて、ラストはクリスマスの夜に、小説のタイトルである「声」がその存在感を発揮します。映像も音もない、文章だけの小説の世界で。栄光と転落と孤独の末に死んでいった男の「声」が、小説の最後で美しく響き渡ります。その場面は文庫本で1ページにも満たない文章なのですが、それまで積みかねてきたものすべてが昇華される、とてもカタルシスのある、そして悲しくもある素晴らしい結末でした。クリスマスが舞台の小説で、これを超えるものにはしばらく出会えないんじゃないかと思うくらいに。

小説の中では、メインの殺人事件以外にこれまで明らかにされていなかったエーレンデュルの悲しい過去についてや、エーレンデュルと娘のエヴァ=リンドの距離が少し縮まったりとシリーズものとして進展があったのが面白かったです。とはいえこれからどうなるかわからないし、この次の作品ではまたエヴァ=リンドが死にかけてるかもしれないですが。あとエーレンデュルには息子もいるので、そろそろ登場するかもしれませんね。

これまでの作品、「湿地」では性暴力の被害にあった女性が、「緑衣の女」では夫のDVに苦しむ女性が登場しましたが、この「声」にも、それまでとは違うマイノリティが現れました。虐げられる弱者の悲劇が淡々と綴られているのを読むと、「アイスランドってどんなところなの?」とちょっとおっかなく感じてしまうのですが、振り返って自分の住む国を考えてみれば、そうたいして変わらないんじゃないかと思えてくるのが不思議です。作者のインドリダソンは日本をイメージしてこの小説を書いてるのかしら、なんて。そんなわけないですけど。きっと、書かれているのが国境とか文化とかを越えた普遍的なテーマだからでしょう。この小説のように、日本で同様のテーマの小説が書かれて、広く読まれているかどうかは別として。

「声」を読んだ後、「82年生まれ、キム・ジヨン」を読んで(まだ感想がまとまらない…)、今はスウェーデンの犯罪小説「熊と踊れ」の続編「兄弟の血-熊と踊れII」を読んでます。こちらは他の北欧犯罪小説シリーズと違ってこれで完結するらしいので、じっくり味わって読みたいと思います。犯罪小説を読んで過ごす年末年始…。

それではみなさん、良いお年を。今度こそ終わります。

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