Flour of Life

煩悩のおもむくままな日々を、だらだらと綴っております。

映画「悪童日記」(2月11日)

2015-02-16 00:19:47 | 映画


先週の水曜日が祝日だったので、レディースデーサービスを利用して、ホールソレイユへ「悪童日記」を見に行きました。
公式サイトはこちら。(クリックすると動画が流れます)

第二次大戦末期。双子の兄弟は両親と別れ、母方の祖母のもとに預けられた。
町はずれの農家で暮らす祖母は、人々から「魔女」と呼ばれ疎まれ、双子たちに過酷な労働を強いた。
母親から「勉強だけは続けて」と言い聞かせられていた双子は、聖書と辞書だけで学び、父親から与えられたノートに日々起きたことを綴っていく。
生き延びるために、祖母からの仕打ちに耐え、「訓練」と称してお互いの肉体と精神を傷つけあったことを。心を殺すために、生き物の命を奪ったことを。
やがて戦争は終わり、彼らは最後の「訓練」に向かうが…



※ここから先はネタバレあります。






ハンガリー出身の亡命作家、アゴタ・クリストフの小説が原作のこの映画、登場人物に名前はないわ具体的な地名も出てこないわ、ストーリーの流れがぶつ切りで説明が少ないわで「???」となることが多かったのですが、原作の小説もだいたいこんな感じらしいので、原作をリスペクトして忠実に再現した結果、こういう映画になったみたいです。もし、原作を知らずに映画を見た人にわかりやすいように、原作をいじってたりしたら、「悪童日記」じゃなくなってたかもしれません。だからきっと「???」でもいいのでしょう。それに、都会で裕福に暮らしていた双子が、過酷な環境の中で徐々に人間性を失っていく様子は、「大昔の戦争で起きた悲劇」というより、「今まさに起こらんとしている現実」のような気がするので。

公式サイトでは「倫理を超えて魂を揺さぶる感動の物語」とありましたが、見終わった直後の私は、「彼らのこの後の人生が知りたい!どんな大人になるの?」という疑問で頭がいっぱいでした。魔女と呼ばれた祖母と双子の間にできた絆は、確かに感動的ではあるけれど、その絆を抱えて、双子がどんな人生を歩むのか、それが気になって仕方ありませんでした。映画のラストシーンに「終わった」感があまりなかったからかもしれません。双子たちのもとを去ったナチスの将校がどうなったのか知りたいからかもしれません。将校が「美しい少年たち」と愛でていた双子が、その後どんな美青年に成長するのか、気になってるからかもしれません。というか、双子を愛でる将校の姿に嫉妬した、将校の「友人」が気になって気になって…じゃなくて。あと、彼らのこの先の人生に触れることで、人間の歴史の暗い部分を少しでも知ることができるのではと思ったからです。「汝殺すなかれ」と謳いながら、罪なき多くの人を殺していく戦争をどう肯定したのか、これからも肯定するのか、するならどんな理由をつけて。あと何回繰り返すのか。

事前情報で「残酷な描写が多い」と聞いていたので、覚悟をして見に行ったのですが、まあ思ったほど過激だったり残酷だったりする場面はなかったです。双子の母親が空襲で、父親が地雷で亡くなる場面は、唐突過ぎて悲しみや怒りも感じられず、むしろ「母親は空から、父親は地面からだけど、夫婦揃って爆死か~」と、不謹慎ですが妙に感心しました。それと、双子の祖母は最初こそ孫たちに高圧的だったけれど、双子に同じ顔二つ並べて見つめられて(しかも無表情で)以来、ちょっとおとなしくなったので、農場での双子の生活があまり過酷に思えませんでした。食べ物が粗末なのと寒そうなのはきつく見えたけど。でもあんな粗末な食事で、なぜおばあさんはあの体型をキープできるのかが不思議…アルコールのおかげなのかしら?

ちなみにこのおばあさん、あんこ型のりっぱな体格にもかかわらずアクティブで、一晩でものすごく深い墓穴を掘ったり、普段は不味そうなスープしか作らないのに自分用のローストチキンはやたら美味しそうなのを作る器用さを持ってたりと、いろいろ謎な部分がありました。そして自分の娘(=双子の母)を「メス犬」呼ばわりするひといババアだなと思っていたけど、その一方で「(娘には)もう二度と会えないだろう」と涙したりしてたので、いったいこの人はどういう人なんだと興味がわきました。でも、そんな風に母親が涙をこぼしたというのに、当の娘は再登場時に双子とは父親が違う赤ん坊連れてて…いやね、非常事態だからね、仕方なかったんだろうけどね。ていうかその子供の父親はどこの誰だったんだろう…。

第2次大戦といえばナチスドイツのユダヤ人狩りですが、この映画の中ではナチスがユダヤ人にひどいことをするだけではなく、一般市民がナチスに加担してユダヤ人を迫害する、しかも正しいことをしていると信じてやっている、のが衝撃的でした。農場で泥まみれ垢まみれの汚いなりをしていた双子を見かけ、一緒に風呂に入って体を洗ってくれた優しいお姉さんが、同じく双子に優しくしてくれたユダヤ人の靴屋を汚い言葉で罵ったのは、なかなかダメージが大きかったです。ちょっと持ち上げてから叩き落とす、みたいな。子供にはさぞつらかろうに。


2 コメント

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Unknown (あおむし)
2015-02-18 00:43:25
『悪童日記』3部作、ぜひぜひ読んでみてください! もちきちさんの感想が聞きたいです。
決して後味のいい作品じゃないのに、なぜか定期的に読みたくなります。
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絶対読みます~ (もちきち)
2015-02-18 23:49:25
>あおむしさん
こんばんは。コメントありがとうございます。
私も原作&続きが気になるので、近いうちに買って読みます。
いくつになっても読みたい本に出会えるのは嬉しいものですね。
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