たそがれ別荘

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カンボジアの「野生化」女性、奇跡の生還から1か月

2007-02-24 00:49:12 | 人間
 奇跡の生還から1か月過ぎたカンボジアの「野生化」女性=宮坂永史撮影

 【リムチョー(カンボジア北東部)=田原徳容】カンボジア北東部のジャングルで、「野生化」した状態で19年ぶりに見つかったロチョム・プンギェンさん(27)が、両親と6人の弟妹と暮らすリムチョー村の自宅を22日、訪れた。

 奇跡の生還から1か月。目を離すと服を脱ぎ捨てジャングルに帰ろうとするなど、動物的行動は依然として消えず、人間としての生活を取り戻すにための家族の戦いが続いていた。

 8歳のときに行方不明になったロチョムさんは先月13日、首都プノンペンから北東約400キロ・メートルのベトナム国境に近い林中で、全裸に四つんばいの姿で地面の米粒を食べていたところを保護された。駆けつけた警察官のサル・ルーさん(45)が右腕の傷跡を見て「私の娘だ」と主張したことから、「ジャングル・ウーマン現る」とメディアで取り上げられ、人口数百人のリムチョー村は見物客であふれた。

 発見場所から南5キロ・メートルの小さな自宅を訪ねると、ロチョムさんは裏庭で鉄柵につかまってしゃがんでいた。言葉は全く話せず、時折、ケタケタと小さな声で笑った。

 足指のツメが赤く塗られている。「女らしさを自覚させたいと思って」と話すルーさんらの眼前で、ロチョムさんが突然、真っ裸になって走り出した。「毎日同じことの繰り返し」。追いついた妹らが慣れた手つきで布を裸体に巻き付けると、ロチョムさんは悲しそうな顔を見せた。

 ルーさんによると、ロチョムさんは当初、おびえきった目でじっと遠くを見つめるだけだった。最近は、両親と6人の弟妹に囲まれてリラックスし、「ご飯だよ」と声をかけると、表情こそ変えないものの、食卓の前に座り、食事を待つ姿勢を見せるなど、簡単な言葉を理解し始めたようだという。

 カラオケの歌に聞き入り、山や女性の絵をクレヨンで描くようにもなった。一方で、食事では牛や豚の半生肉を好み、ボクシング映画を見ると壁や床をたたいて興奮するなど野性的な側面はいまだ顕著だ。

 ロチョムさんが19年間ジャングルをさまよい続けたかどうかについては、懐疑的な見方も少なくない。「8歳で迷えば普通は餓死」「発見当時、髪が短くカットされていた」「ツメや肌がきれい過ぎる」など、村人の疑問は尽きない。

 村を管轄するマオ・サン警察署長も「一人で生き延びたとは思えない」と語り、「むしろ、ジャングル奥地で人知れず暮らす少数民族に助けられていた可能性がある」と想像する。腕にはシカなどの動物捕獲用のワナに挟まれた跡もあった。「19年の謎に挑む捜査は続ける」と同署長は言う。

 「森の神に守られた天使だと思って大事にしたい」とルーさん。ロチョムさんを娘とする証拠は幼少時に誤ってナイフで切りつけたという腕の浅い傷だけ。このため、近くDNA鑑定を行う予定だ。

 ルーさんは「万が一娘でなくても、面倒を見る」と誓う。27歳での0からの出発。ルーさんは、ロチョムさんを学校に通わせ、そして将来、嫁がせることを夢見ている。

(2007年2月24日0時49分 読売新聞)


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