聖徳太子は、10人が同時に話すのを聞き分けられたという。
凡人には無理なので、時分割で話してもらうしかないが・・
時分割多重
会議や、ミーティング、ホームルームなどで、当てられた人が順番に発言するようなもの。
周波数分割多重
女性と男性では、声の高さ、つまり周波数が異なるから聞き分けやすい。
方言分割多重
「ありがとう」と3人の人から同時に言われたら、聞き分けは、難しいが、「おしょうしな」、「ありがとう」、「おーきに」なら聞き分けられそうである。
山形弁、共通語、大阪弁が、符号分割多重の符号のようなものである。
置賜弁と庄内弁でも「〇〇だズ」と「△△でがんす」と、聞き分けはやさしい。
(わからない人は、スウィングガールズ、たそがれ清兵衛、隠し剣 鬼の爪などを見てほしい。)
日本語と、他の外国語の場合も、他の外国語は、雑音、ノイズにしか聞こえないが、日本語だけが、明瞭に聞き取れる。
逆に、外国人には、母国語が明瞭に聞き取れ、日本語はノイズであろう。これなど、まさに符号分割多重(CDMA)、スペクトラム拡散といったところである。
実は、携帯電話は、デジタル信号を聞き分ける現代の聖徳太子なのであった。
携帯電話では、基地局から送られてくる信号は、エリア内(特定の圏内、セル内)の複数人が、まったく同じ信号を受ける。
しかし、各人が異なる拡散コードで逆拡散するため、自分宛のメッセージ、メールや音声をあぶりだすことができるのである。
たとえば、携帯電話で、
+2, 0,-2, 0, 0,+2
を受信した、おつうさんと、亀ハメハ大王の二人は、まったく、異なるメッセージを読み取るのである。
おつうさんは、+1,-1,-1 と、読み取り、亀ハメハ大王は、+1,-1,-1 と読み取るのである。
その原理は、と言うと、
直交鶴亀変換表を思い出してほしい。
x, y
[+1,+1] a
[+1,-1] b
鶴太郎が,おつうさんへ,送るメッセージを
+1,-1,+1
亀次郎が,亀ハメハ大王へ,送るメッセージを
+1,-1,-1
とする。(それぞれ、3回、頭の数信号を送るとする。)
鶴太郎の拡散コードは、[+1,+1] 、亀次郎の拡散コードは、[+1,-1] である。
(上記鶴亀変換表の x 列、と y 列 を縦に読んだもの。)
この拡散コードを掛けるということは、
鶴太郎が +1 を送る際は、+1,+1 を、,-1 を送る際は、-1,-1 に変換することを意味し、
+1,-1,+1 は、+1,+1 -1,-1 +1,+1 に変換(拡散)される。
亀次郎が +1 を送る際は、+1,-1 を、,-1 を送る際は、-1,+1 に変換することを意味し、
+1,-1,-1 は、+1,-1 -1,+1 -1,+1 に変換(拡散)される。
そして、上記拡散後の信号を足すことによって、信号 a,b となる。
+1,+1 -1,-1 +1,+1 と
+1,-1 -1,+1 -1,+1 を足して、
+2, 0,-2, 0, 0,+2 となる。 (これは、頭、足、頭、足、頭、足に相当する。)
この頭足信号が電波となって送信される。
そして、鶴のおつうさんと、亀ハメハ大王は、それぞれ、+2, 0,-2, 0, 0,+2 を受信する。
おつうさん は、鶴太郎の拡散コード、[+1,+1] を受信信号に掛け算する。頭、足の組が3つ送られてきたので、3回かける。
この場合は、+1,+1 を掛けているので、
+2, 0,-2, 0, 0,+2 は、
+2, 0,-2, 0, 0,+2 のままで、そして、頭、足の組ごと、つまり2つずつの信号を足し算して、
+2,-2,+2 を得る。これを2で割って、鶴太郎が送った、頭、頭、頭信号である +1,-1,+1 を受信するのである。
亀ハメハ大王は、
+2, 0,-2, 0, 0,+2 に,亀次郎の逆拡散コード +1,-1 を、頭、足の組み合わせに掛けて、つまり、
+1,-1 +1,-1 +1,-1 をかけ算して,
+2, 0,-2, 0, 0,-2 を得る、そして、頭、足の組、つまり2つの信号ごとに,加算して,
+2,-2,-2 を得る。これを2で割って、
+1,-1,-1 が得られるのある。
鶴亀多重 -CDMAの原理(1)-
直交鶴亀算 -CDMAの原理(2)-
参考文献
「エレクトロニクスライフ」1994年1月号 NHK出版(ディジタル変調,デジタル変調,符号分割多重方式,CDM,アダマール変換、デジタル多重放送の原理)
「物理数学の直観的方法」 長沼伸一郎 著(フーリエ級数・フーリエ変換、直交)
「携帯電話はなぜつながるのか」 中嶋信生、有田武美 著 日経BP社 (CDMA,聖徳太子、方言、東北弁)