昨今 日本の政治、経済の動きが、今までと比べて何か違ってきた感じがします。
本屋で売っていない雑誌「致知」が、創刊35周年を過ぎ日本の良書として読む人が増えています。
人間として 日本人として日本の良き風習を子孫に伝えていくことが私たちの使命であろうと考えます。 そんな想いで 「人間力の向上」 メルマガを掲載します。
「成功さえも“試練”である」 稲盛和夫(京セラ名誉会長)
『致知』2003年4月号
連載「巻頭の言葉」より
私は、「試練」とは、一般的にいわれる
苦難のことだけを指すのではないと考えています。
人間にとって、成功さえも試練なのです。
例えば、仕事で大成功を収め、
地位や名声、財産を獲得したとします。
人はそれを見て、
「なんと素晴らしい人生だろう」とうらやむことでしょう。
ところが実は、それさえも天が与えた厳しい「試練」なのです。
成功した結果、地位に驕り、名声に酔い、
財に溺れ、努力を怠るようになっていくのか、
それとも成功を糧に、さらに気高い目標を掲げ、
謙虚に努力を重ねていくのかによって、
その後の人生は、天と地ほどに変わってしまうのです。
つまり、天は成功という「試練」を人に与えることによって、
その人を試しているのです。
いわば人生は、大小様々な苦難や成功の連続であり、
そのいずれもが「試練」なのです。
そして、私たちの人生は、その人生で織りなす「試練」を、
どのように受け止めるかによって大きく変貌していくのです。
私たちは、苦難あるいは僥倖、そのいずれの「試練」に遭遇しても、
決して自らを見失わないようにしなければなりません。
つまり、苦難に対しては真正面から立ち向かい、
さらに精進を積む。
また成功に対しては謙虚にして驕らず、
さらに真摯に努力を重ねる。
そのように日々たゆまぬ研鑽に励むことによってのみ、
人間は大きく成長していくことができるのです。
私は、現代の混迷した社会を思うとき、
私たち一人ひとりが、どのような環境に置かれようとも、
自らを磨き、人格を高めようとひたむきに努力し続けることが、
一見迂遠に思えても、結局は社会を
よりよいものにしていくと信じています。
後藤 武