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首相交代

2010-06-05 23:46:12 | 鳩山内閣
今月2日、鳩山由紀夫内閣総理大臣は遂に辞意を表明した。昨日鳩山内閣は総辞職し、民主党代表に当選した菅直人副総理兼財務相が衆参両院で第94代首相に指名された。

なお当然のことであるが、天皇陛下に任命されるまでは菅氏はまだ首相ではない。憲法71条によれば、その間は鳩山内閣が職務を処理するし、鳩山氏は首相として在任している。一部メディアの「菅首相誕生」や「鳩山前首相」という表記は不適切である。



さて、今回は鳩山内閣の約8ヵ月半振り返りたい。

思えば、早すぎる瓦解であった

昨年8月の総選挙では、「政権交代」を掲げた鳩山代表率いる民主党が圧勝。翌月、鳩山内閣が発足した。鳩山内閣は、「脱官僚」「政治主導」を強調し、事務次官会議廃止や官僚の記者会見禁止を早くから打ち出した。自民党政権では必ずしも進まなかった、事業仕分けや地域主権改革にも、熱心に取り組む姿勢を見せた。

他方で、問題も多かった。小沢幹事長の傀儡政権ではないかと度々報じられた。さらに、鳩山・小沢両氏とも政治とカネの問題を追及された。

中でも今回特筆したいのは、普天間基地移設問題と皇室についての2点だ。

普天間問題については、鳩山氏は総選挙中に「最低でも県外、できれば国外」と強調した。これは、普天間基地返還に伴う代替施設を名護市キャンプシュワブ沖(辺野古沖)に建造するという、06年の日米2+2での合意(沖縄県と名護市もほぼ了承)を覆すことを意味していた。政権発足後は、各閣僚がバラバラな発言を続け、閣内不一致状態に陥った挙句、「5月末に先送りを決定」した。しかし、その後も「腹案」とした徳之島案等も地元の強い反対にあい、結局政府は、辺野古への移設で米側と合意するにいたった。だが、当然沖縄県民が納得するわけがなく、展望は見えない。

勿論、鳩山首相を嘲笑するだけの現在の多くの報道には違和感がある。いかにしてこの問題を決着させるかと言う事は、国民全体で真剣に検討せねばならない。とはいえ、やはり本問題の解決を困難にしてしまった最大の原因は鳩山氏にある。

しかも鳩山氏からは、沖縄の海兵隊が抑止力になっているという認識がなかったというあきれた発言がなされた。国の根幹である安全保障について、あまりにも無理解・不定見な政権であったと評するしかない。

皇室についても信じがたい姿勢が続いた。岡田外相が天皇陛下の国会開会式でのおことばにクレームをつけた問題や、鳩山首相・小沢幹事長が陛下のご訪韓に関して、「天皇陛下ご自身もその思いを強く持っておられる」(鳩山氏)、「韓国の皆さんが受け入れ、歓迎してくださるなら結構」(小沢氏)とあまりにも軽率な発言を行った問題等があった。。さらに小沢幹事長は韓国の大学での講演で、「桓武天皇の生母は百済の王女様と天皇陛下も認められた」と発言したという。これが事実とすれば、小沢氏は二重のウソをついたことになる。まず、桓武天皇の母の高野新笠の先祖が百済の王家につながるという記録があるのは事実だが、それを「百済の王女」というのは誇張しすぎだ。しかも天皇陛下が「桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫」と述べられたことがあるのは事実[http://www.kunaicho.go.jp/okotoba/01/kaiken/kaiken-h13e.html]だが、「王女」などと発言されたことはない。

その中でも、最も重大なものはいわゆる特例会見問題であろう。これは、昨年12月15日に天皇陛下の習近平中国国家副主席ご引見が、宮内庁と外務省の間にある「1か月ルール」に反して強行された問題である。本件はルールの是非等が問題なのではなく、そのルールを破った理由が政治的なものである可能性が高いことが最大の問題である。「天皇は国政に関する権能を有しない」という憲法に従い、公的行為が政治的なものであってはならないというのが従来の政府の見解であった。政権側の説明には驚くしかなかった。鳩山首相は「本当に大事な方であれば」「日中関係をさらに未来的に発展させるため」と、自ら政治的理由であったと認めるに等しい説明を行った。小沢幹事長にいたっては、ご引見を「国事行為」と従来と異なる解釈を示した上で、「天皇陛下の国事行為、行動は全部、政治利用になっちゃう」と憲法を無視する様な説明をし、鳩山氏もそれを「よしとしたい」と是認した。さらに小沢氏は、「優位性の低い行事」を欠席されることを提案したが、ご引見の日に行われた「行事」といえば、賢所御神楽である。この祭祀は小祭とはいえ、かつて賢所の鏡が傷ついてしまったことを天照大神にお詫びする重要な意味があるという。これを「優位性の低い行事」と断じた政権は、おそらく初めてだろう。

年明けの通常国会では、首相や平野官房長官はご引見を「公的行為」とし、政治利用はあってはならないと火消しに追われた。しかし、「公的行為に天皇の拒否権はあるのか」という自民党の谷垣総裁の質問に平野長官は答弁できず、鳩山内閣が公的行為の本質を全く理解していないことが露になってしまった。谷垣総裁の求めに応じて、2月に出された公的行為に関する政府見解も、従来の見解を踏襲しただけのもので、政治利用を防止する具体的な策は不明確なままであり、また鳩山・小沢両氏が当初の発言を撤回することもなかった。さらに、平野氏からは「憲法の概念から言って、政治利用はありえない」という荒唐無稽な論理が展開された。「自衛隊の活動している所は非戦闘地域」と述べた小泉元首相も、これにはビックリしたのではないか。

この両問題に共通するのは、問題を引き起こしておきながらそれをほったらかしにしたまま投げ出したということだ。野党や一部メディアの様に、在任中は「辞任せよ」といい、いざ退陣したら「無責任だ」と矛盾した論調はしない。辞任は当然であったと思う。ただ辞任するのなら、もう少し誠意のある理由を示して欲しかったと思う。「国民が聞く耳を持たなくなった」云々というのは、納得しがたい。

菅次期首相には、重い課題がのしかかっているが、全力で取り組んでいただきたい。

乗数効果

2010-01-28 02:45:26 | 鳩山内閣
この間の国会で、菅財務大臣が乗数効果と消費性向の違い等を質問され、しどろもどろになった上に不可解な答弁をしたと報道を聞きました。

そこで、法学部の私が生半可な経済知識でこのことを解説したいと思います。不正確な部分もあるでしょうが、その辺りはきちんとした経済学の教科書で補っていただければと思います


「国内総生産(GDP)」の言葉は、どなたでもご存じでしょう。これを広辞苑で引くと、「1年間に国内で新たに生産された財・サービスの価値の合計」とあります。このGDPは、生産面、分配面(国内総所得)、支出面(国内総需要)という3つの角度から見ることができ、これらは等しくなります(GDPの三面等価)。

生産面から見たGDPとは、「付加価値」の合計です。付加価値について説明するために、リンゴジュースを例としましょう。リンゴ農家が100円でリンゴをメーカーに売り、メーカーはそのリンゴからジュースを作 ってスーパーに200円で売り、スーパーは消費者にジュースを300円で売ったとしましょう。この場合、農家(分かりやすくするため、コストは0円)、メーカー、スーパーの三者とも、100円ずつ儲けていますが、これは要するに、三者とも100円ずつ新たな価値を加えていると見なせます。仮に日本の1年間の生産がこれだけだとすれば(あり得ませんが)、日本の1年間の生産面から見たGDPは、付加価値を合計した300円となります。

そして、先ほど述べた付加価値を考えれば、当然誰かの所得として分配されるはずです。これを分配面から見たGDPと呼び、勿論生産面から見たGDPと等しくなります。また、先ほどのジュースを最終的に購入した消費者の立場から見れば、この付加価値の合計はジュースの値段と同じです。これを支出面から見たGDPといいます。

では本題ですが、先述した様に、GDPの三面等価によって「生産面から見たGDP=分配面から見たGDP=支出面から見たGDP」となります。このうち支出面から見たGDPを構成するのは、家計の消費、企業の投資、政府の公共支出、そして海外への輸出(外需)の4つに限られますが、ここでは鎖国していると仮定して、消費(C)、投資(I)、公共支出(G)のみを考えます。

ここで分配面から見たGDPを、Yとおきます。Yは支出面から見たGDPと等しいのですから

Y=C+I+G[1]

とおけます。

ここで、消費について考えます。消費は所得に依存するものと、そうではない基礎消費(A)に分けられます。
前者は、所得のうちどれだけ消費にまわすかを考えるので、国内総所得を意味するYに、限界消費性向(c)をかけたものとして表します。ただし、民のかまどの煙をご覧になった仁徳天皇の御世ならいざ知らず(笑)、世に税金が存在するならば、所得からそれを引き、本当に使えるおカネ(可処分所得)を考えねばなりません。よって正確には、所得から税金(T)を引いたものとなります。
後者はそのままなので、以上の議論を式にすると、以下の様になります。

C=c(Y-T)+A[2]


そして[2]を[1]に代入して計算すれば、最終的に

Y=1/1-c(-cT+I+G+A)[3]

となるはずです。ではこの式を用いて、消費、投資、基礎消費、税金が変化すれば、GDPにどの程度影響を与えるかを検討しましょう。

[3]より
ΔY=-c/1-c×ΔT+1/1-c(ΔI+ΔG+ΔA)[4]

(なお経済学では変化分を、しばしばΔをつけて表現する。例えば、公共支出が80兆円から100兆円に増えれば、ΔG=20兆円)

[4]の式より、C、I、G、Aを増加させると、GDPはその増加分に1/1-cをかけた分だけ増加する事が分かります。これを乗数と呼びます。c=0.8とすれば、乗数は5。即ち、C、I、G、Aのいずれかを増やせば、GDPはその額の5倍分増える事になります。

また税金(ここでは定額税のみ考慮)の場合、乗数は上記仮定の下では-4となります。増税が景気にマイナスという常識は、乗数がマイナスになっていることに表されています。増税すれば、その額の4倍だけGDPは減少。逆に減税すれば、その額の4倍分経済効果があるといえます。

では、景気対策の財源として2兆円あるとすれば、政府は公共事業と減税のどちらをやるべきでしょうか。正解は前者となります。

前者をΔG=2兆とすれば、ΔY=10兆。後者をΔT=-2兆とすれば、ΔY=8兆。即ち、同じ財源にも関わらず、2兆円も経済効果が違う事になります。

一昨年の麻生内閣の定額給付金は様々な批判がありましたが、ニュースZEROの村尾キャスターが、2兆円を学校の耐震化に使えと主張していたのは、恐らくこのことであったと思われます。


以上述べてきた乗数理論はケインズ経済学の基本中の基本ですが、現実の世界ではそこまでの効果を生むことは極めて困難だと指摘されています。ここでは、鎖国市場、定額税、さらに金融市場の不存在が前提です。これらを考慮すれば、実際の乗数ははるかに小さくなると言われています。

この様なマクロ経済学の基本中の基本を理解していない財務大臣兼経済財政担当大臣には、大きな不安を抱かざるを得ません。


通常国会

2010-01-21 01:52:27 | 鳩山内閣
18日から通常国会が召集された。言うまでもなく、国会召集は憲法7条による天皇の国事行為である。また、国会開会式で陛下がお言葉を述べられるのは、公的行為とされている。

政府与党は二次補正の早期成立を目指しているが、野党側は鳩山首相や小沢幹事長が渦中にある「政治とカネ」問題の追及に躍起になっている。

とりわけ小沢氏の陸山会の4億円不記載問題は、先週東京地検特捜部による強制捜査や元秘書の石川議員ら3名の逮捕によって、急展開した。この件について、メディアでは様々な報道がなされている。それに対して政府与党からは、「検察のリーク」として問題視する動きもある。確かに、我々はメディアを飛び交う様々な情報を、鵜呑みにすべきではない。捜査と裁判は推定無罪の原則で、法と証拠に基づかねばならぬということを、再認識する必要がある。

とはいえ、政府与党が政府機構の一部である検察庁を大っぴらに批判するというのは納得し難い。検察の独立性を保つ様努めるのが、本来のあり方ではないか。
いずれにせよ、小沢氏の疑惑は本件にせよ、西松事件にせよ、必ずしも明らかではないことが多い。法廷で争うことが多くなるだろう。ただし、小沢氏の説明責任が果たされていないのは誰の目にも明らかだ。今回は少なくとも秘書が故意に不記載を行ったのは事実の様であり、これだけでも鳩山首相がかつて嘯いていた「秘書の罪は議員の罪」との言葉が当てはまる。民主党の政治責任は重い。

今国会で残念なことは、「政治とカネ」の話題が中心になりそうなことだ。現在の我が国における喫緊の課題は、何といっても経済だ。一昨年の秋以降、百年に一度の大不況下であるにも関わらず、多額の国債残高と超低金利によって、財政・金融とも新たに思いきった政策を行うのは困難という苦しい状況にあることを、我々は認識すべきだ。いずれにせよ、短期的には財金が協調して需給ギャップを埋めねばならない。あわせて、中長期的な成長戦略と財政健全化の道筋を編み出す必要がある。鳩山内閣は予算編成で迷走気味であったし、年末に発表した成長戦略も抽象的すぎる。マニフェストを修正したとはいえ、それでも史上最多の予算案であり、財政健全化も難しそうに思える。

外交安保も重要だ。閣内不一致や朝令暮改を続けた普天間基地移設問題は、結局5月に決定するとされた。現行の日米安保は50年を迎えたが、今後の日米関係に不安を覚える。

また、特例ご引見問題もうやむやにしてはならない。本件は憲法や皇室という我が国の根本に関わる問題であるにもかかわらず、政府与党からは、未だに納得できる説明がなされていない。

疑惑の追及も大事だが、それによってこれらの重大問題がうやむやにされてはならない。各党には、建設的な審議を期待する。


財務相人事

2010-01-11 00:53:50 | 鳩山内閣
先週、藤井財務相が辞任した。鳩山首相は予算について明確な基本方針を示さず、予算編成が迷走したが、その疲れが響いたのであろう。小沢幹事長との確執も有ったかもしれない。とにかく、お疲れ様と申し上げたい。

後任は、菅副総理兼経済財政政策担当相の兼任となった。また、菅氏が務めていた国家戦略担当相と科学技術政策担当相は、仙谷行政刷新担当相と川端文部科学相がそれぞれ兼任するとされた。

しかし、これらの人事には若干首をかしげたくなる部分がある。もちろん、沢山のポストを兼任すれば多忙になる心配もあるが、もっと大きな問題が2つあると思われる。

1つは、内閣府の存在意義を忘れていないかということだ。内閣府設置法では「内閣の重要政策に関する内閣の事務を助けること」(3条)が任務とされ、その所掌事務の目的は「行政各部の施策の統一を図るため」(4条)とある。即ち、省庁横断的に、政治主導・国家戦略的に政策を推進しようというのが内閣府の役目なのだ。同法18条はその考え方に基づいて、首相が議長を務める経済財政諮問会議と総合科学技術会議の設置を規定している。特に前者は、過去の「大蔵支配」の解消の為に設けられたとされる。にも関わらず、今回の人事では、財務相と経済財政相、そして文科相と科学技術相が兼任するという組み合わせになっているが、これでは「政治主導」ではなくて、各省庁が官邸に口出ししやすくなる危険性があるわけだ。

もう1つは、仙谷氏が国家戦略相と行政刷新相を兼任することだ。これまでの民主党の主張では、予算の基本方針等を決定するのが国家戦略局(現在は室)であり、予算の無駄をチェックするのが行政刷新会議であったはずだ。この2つのポストを同一人物が兼任するというのは理解し難い。鳩山首相はこの兼任を見なおす可能性を示したとの報道もあったが、可及的速やかに兼任を解くのが筋であろう。

3人の大臣には、以上の懸念に対して十分に気を張って職務に臨んでいただきたい。

ところで菅財務相は、初っ端から批判を受けた。それは、「円安誘導発言」だhttp://www.asahi.com/business/update/0107/TKY201001070402.html。ご承知の通り、円安は輸出企業にとって不利であり、輸出の減少はGDPの減少にもつながる。政府や日銀はこれを防ぐために、為替介入を行うことが出来る。

その意味から言えば、財務相が円高傾向に懸念を示し、介入の可能性に言及すること自身は十分理解できる。また、藤井前財務相が当初「円高容認」とされた発言を行い、批判を受けたことへの反省もあったかもしれない。

しかし、「90円台の半ばあたり」と具体的に望ましい水準にまで口出しするのは、行きすぎではないだろうか。財務省のトップがあまり円高不安を強調しすぎると、消費者や企業が不安を感じ、逆効果になる危険性もあるからだ。一昨年の金融危機以降、円高傾向なのは事実であるが、物価を考慮した実質レートで見れば、極端な円高とはいえないという伊藤元重氏らの指摘も有るhttp://sankei.jp.msn.com/economy/finance/091006/fnc0910060310003-n1.htm。伊藤氏が「『貨幣錯覚』に陥るなかれ」と述べるように、物価変動を考慮するのが経済学の一般的な常識だ。だが同氏が例に挙げるように、物価が下落していても名目賃金を下げようとすると労働者が反発して困難になる(ケインズ的には「賃金の下方硬直性」)など、現実社会ではしばしばこの錯覚が起こる。

財務相は消費者や企業を貨幣錯覚に陥らせたり、自身が錯覚することのないように、十分気をつけて発言して欲しい。もちろん、円高が急激に加速された場合は、手をこまねいて見てはならず、積極的に介入すべきなのは言うまでもない。

鳩山内閣100日

2009-12-26 00:55:32 | 鳩山内閣
鳩山内閣発足から100日が過ぎた。民主党を中心とする本格的な政権交代の実現によって、政治が大きく変わると期待した国民は決して少なくない。「脱官僚」の政治、「生活が第一」の政治。確かに、それらの総論に異論を唱える人はほとんど居ないであろう。
 しかしながら、鳩山内閣は数多くの問題を抱え、支持率も低下気味である。その要因としては、”基地”問題、”経済”政策への不安、”献金”問題といういわゆる「3K」が挙げられる。それに”皇室の政治利用”問題も加えて、「4K」とした方がいいのかもしれない。

そこでこの4つの問題を中心に、鳩山内閣の動きを簡略に振り返りたい。



・基地 ~これ以上の先送りは許されない~
現在日米間で最も大きな問題となっているのは、普天間基地移設問題である。これを簡略にまとめれば、以下の通りになる。日米両国は、沖縄県宜野湾市にある米海兵隊の普天間飛行場の返還に伴い、その代替地を名護市のキャンプ・シュワブ沖(辺野古)に建設することを、06年当時の小泉・ブッシュ両政権下で合意していた。沖縄県及び名護市も、基本的にこれに同意している。しかし、民主党はマニフェストで「米軍再編や在日米軍基地のあり方についても見直しの方向で臨む」としており、実際鳩山内閣はその姿勢を明らかにした。同内閣においては、各閣僚が様々な発言を続けた挙句、結局「先送り」することで決着するという不明確かつ不可解な動きが目立った。これに対して、米側は不満を募らせている様である。

本問題のみならず、基地問題全体において最も重視すべきなのは、(1)抑止力の維持、(2)沖縄の負担軽減、(3)米側の理解という3点である。

(1)に関しては、海兵隊の飛行場を日本に維持することは、我が国及び極東地域の安全保障において欠かせぬことである。国外移転の主張は、あまりにも非現実的であり、なおかつ韓国や台湾の平和にとっても良からぬ影響が出かねない。
(2)についていえば、そもそも普天間飛行場を返還することで合意したのは、96年の橋本内閣のときであるが、これは、普天間基地が住宅の中心地にあり、騒音や事故等の住民不安の除去が問題視されてきたことによる。そのことを踏まえれば、普天間よりも辺野古沖の方が格段に優れているのは明らかではないか。04年の大学への墜落事故も、記憶に新しい。その意味からすれば、いたずらに議論を引き伸ばそうとする鳩山内閣の姿勢は、地元住民のことを考えれば、到底理解できない。
(3)はいうまでもない。2国間関係である以上、米国の了解なくして新たな案は作れない。先述した06年の日米合意は、日本側としては基地負担の軽減、米側としては国際的な米軍再編という両国の思惑が一致したことによるものである。確かにグアム移転経費の負担等、日本国民には納得しがたい面もあろうが、こんな好機が今後あるとも考えにくい。

日米両国が合意し、地元も一応了承した案を覆すにしては、あまりにも説明と準備が不足してきたのではないか。先述した(1)~(3)を満たす新たな案を編み出すことは、極めて困難なのだ。[本問題について、詳細はhttp://www.mod.go.jp/j/saihen/index.htmlを]



・経済 ~司令塔は?~
昨年の米国での金融危機以降、景気は世界的に悪化している。最近日本では、円高・デフレ不況が懸念されている。

民主党のマニフェストに(僅かながら)ある「日本経済の成長戦略」は、消費拡大による内需主導型経済への転換、先端技術の開発・普及(特に環境関連)、農業・医療・介護の成長力を高めるといった風にまとめられているが、これだけでは心もとない。しかも、本気で内需主導にしようとするならば、「痛みをともなう構造改革」が必要のはずだが、そのことは明確にされていない。また不可解なことに、派遣労働の規制や最低賃金の引き上げ等、どう解釈しても失業率や経済の悪化にしか寄与しない様な政策もある。

それに加え、しばしば指摘される様に、経済・財政政策の司令塔が明確でない。小泉内閣で活躍した経済財政諮問会議は、どういうわけか鳩山内閣は一切開催していない。国家戦略室をそれに代えるつもりの様だが、あまり機能していないと報じられている。本来、経済財政諮問会議は総合科学技術会議と共に内閣府設置法に明記されているものだ。これは、民主党の「脱官僚」の方針通り、官邸主導で経済財政政策を決定するものであり、日銀総裁が参加することで、財政政策と金融政策の調整もできるわけだ。小泉元首相のイメージが強いという様なさもしい考え方をせず、とりあえず諮問会議のメンバーを任命し、来年にでも内閣府設置法を改正して、「国家戦略局」に改称するというのが、真っ当な手順ではなかったのか。(なお、鳩山政権下での経済成長戦略関連の組織としては、経産省の「成長戦略検討会議」や国交省の「成長戦略会議」があるが、今月15日にようやく官邸に「成長戦略策定会議」が設置された)

民主党の経済への認識にも不安がある。同党には、「利上げすれば景気が良くなる」との不可解な主張をしていた議員も居る。さすがに閣内はそこまでひどくはないが、菅国家戦略・経済財政担当相は、先日の竹中元総務相との議論内容http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091216/plc0912161146006-n1.htmを伺う限り、供給曲線上の動きと供給曲線をシフトさせることの違いが理解できていないようだった。「外需」依存経済(正確にいえば、近年の経済成長における外需の寄与度が高かった)から脱却して、「内需」拡大すべきというのが民主党の主張というのは理解できるが、だからといって需要がなければ供給を拡大しても無意味という菅大臣の主張は、そういう風に解釈するのが自然だろう。

本日公表された予算は史上最大の92兆円。新規国債発行額は44兆円を超えた。今までの予算の上に多額の予算が必要な新規事業を始めるとあっては、必然であるとはいえ、多すぎはしまいか。事業仕分けで一定の無駄を削ったことや、いわゆる埋蔵金に手を付けたことは一定の評価ができるが、これでは財政再建への道が遠のいたと国民に思われても仕方ない。このような状況では、国民は将来の増税を予想してしまう。一方で、首相は消費税は増税せぬとしている。これでは国民は消費を減らし、貯蓄に回しかねない。また長期金利の上昇による、いわゆるクラウディングアウトの恐れもある。これらによって、さらなる景気悪化の恐れがあるわけだ。今後の対応に注視したい。



・献金 ~秘書の罪は…~

この問題については、あまり詳細に論じるつもりはない。

昨日鳩山首相の元秘書2名の内、1名が在宅起訴、もう1名は略式起訴された。鳩山首相は、議員としての謝罪会見を行ったものの、辞任はしない方針を示した。

しかし、鳩山氏はかつて議員の秘書が逮捕された事件において、議員本人も辞任するよう強く求めてきた人物である。民主党マニフェストでも、「政治不信を解消する」ことが明記されてある。首相の説明は、かつての発言は否定しないが、今回の件はさほど悪質でないから許されるということだが、これで国民は納得するだろうか。




・皇室の政治利用 ~説明責任果たさぬ政府与党~

いわゆる特例ご引見問題は、当ブログにおいて何度も取り上げたが、未だに鳩山首相や小沢幹事長から納得のいく説明はなされていない。

説明責任や意思決定の透明性というのは、民主党が唱えてきたことだ。にもかかわらず、自らは説明責任を果たさぬ一方で、経過を説明した羽毛田宮内庁長官を批判するという極めて不可解で自家撞着とも思える姿勢を示したわけだ。しかも小沢氏からは、、憲法解釈について恣意的かつ誤った(少なくとも政府見解とは異なる)説明がなされているわけだ。この様な姿勢で、いかにして納得すれば良いのか。各社の世論調査を見ても、問題があったとする人は過半数を超えている。鳩山・小沢両氏は、これで本当に「国民の総意」を得ていると思っているのか。

本件は、民主党マニフェストにも反している。

民主党のマニフェストの鳩山氏の巻頭の言葉には、「ひとつひとつの生命を大切にする」とある。いわゆる「1ヶ月ルール」を反故にすれば、ご不例の陛下にさらなる負担をかける可能性があるにも関わらず、鳩山内閣はこれを強行したわけだ。これは絶対に看過できない。

マニフェストの最後のページの「国民の自由闊達な憲法議論を」には、「『憲法とは公権力の行使を制限するために主権者が定める根本規範である』というのが近代立憲主義における憲法の定義です。決して一時の内閣が、その目指すべき社会像やみずからの重視する伝統・価値をうたったり、国民に道徳や義務を課すための規範ではありません」とある。本件は、憲法上国政の権能を有しない天皇を、「日中関係は重要」、「本当に大事な方」、「習氏は次期リーダー」等といった「みずからの重視する価値」に基づいて、鳩山内閣及び民主党が利用したといっても過言ではない。

鳩山内閣及び民主党は、「政治主導」を勘違いしていると思われる。政治主導や脱官僚が唱えられている理由の1つは、本来プリンシパル(依頼者)たる国民・政治家のエージェント(代理人)であるはずの官僚が、自らの利益のため(天下り先の確保等)等、良からぬ政策を行うことによる弊害を防ぐためではないのか。今回の羽毛田宮内庁長官の対応は、別に宮内庁自身の利益の為に行ったものではなく、陛下のご不例を憂慮してのものに他ならない。にもかかわらず、「政治主導」を金科玉条に、恣意的に「特例」を認めるというのは、あまりにも横暴ではないか。

改めて、鳩山首相及び小沢幹事長には明確な説明責任を、また野党側には通常国会での徹底的な追及を求める。

なお本件との関わりは不明だが、小沢事務所に銃弾が届いたという。http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091225/crm0912251900023-n1.htm 民主主義国家において、この様な犯罪行為は断じて許されない。