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公的行為に関する政府見解

2010-02-27 01:38:30 | 特例ご引見問題
鳩山内閣は、天皇の公的行為について政府見解をまとめた。これは、先月21日の衆院予算委員会[http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/001817420100121002.htm]における自民党の谷垣総裁の求めに応じたものだ。

見解を要約すれば、以下の通り。[全文はhttp://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100225/plc1002251611013-n1.htm]

1、公的行為は象徴としての地位として認められる。
2、国事行為でないため、内閣の助言と承認は不要。内閣は、「国政に関する権能を有しない」という「憲法の趣旨に沿って行われるよう」配慮する責任あり。
3、公的行為は様々であり、各行為に応じた「適切な対応」が必要で、「統一的なルールを設けることは、現実的でない」。
4、各行事等の趣旨・内容、陛下のご臨席の意義、国民の期待等の事情を勘案し判断すべき
5、2について「今後も適切に対応」


正直、がっかりした。1か月以上もかけた割には、過去の政府の答弁と殆ど変わりないものであったからだ。

内容についても疑問がある。確かに、普通の政権ならこの内容でいいかもしれない。しかし、鳩山内閣・民主党政権はそうはいかない。この政権は、天皇陛下を巡ってあの様な騒動を引き起こし、首相自ら政治利用を示唆するような発言を行ったり、幹事長や一部閣僚が憲法解釈を恣意的に行いながら、反省の態度を一切見せない極めて厚顔無恥な政権である。そのような政権が「適切に対応」と嘯いても、信じられるわけがない。

ここで、いわゆる特例会見問題(正確には、特例"ご引見"問題)の何が問題なのか振り返りたい。メディアでは「政治利用」という言葉だけが踊ってしまっているきらいがあるので、今回は基本に立ち返り検討する。このブログでは様々な問題点を挙げたが、ここでは憲法上の問題点を指摘したい。

今回の政府見解にもある通り、憲法第4条には「天皇は…国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」と明記されている。これは即ち、国の仕事を「国事」と「国政」に明確に区分し、天皇は「国政」の分野に関われず、同時に政府も「国政」のために天皇を利用してはならないということだ。よって、外国賓客との面会等の公的行為についても、憲法の趣旨に基づいて政治的性格が含まれてはならないというのが従来の政府の方針であり、鳩山内閣もそれを踏襲したわけだ。また公的行為は、象徴たる地位に基づくものとされている(今回の政府見解も踏襲)が、この「象徴」とは、憲法第1条によれば「国民の総意に基く」。この象徴たる性格に反してはならないというのも、従来の政府の立場である(今回の政府見解では明確ではないが、先月21日の国会答弁では平野長官が踏襲を表明)。

なお、天皇の政治利用の禁止は、左右を超えた常識である。保守派的に見れば、日本と歴史的に一体的であり、公平無私に祭祀を行うという天皇の性格に反することがあってはならないということだ。リベラル派から見れば、過去の様に天皇を政治利用して、戦争が遂行されたり、思想が統制されてはならないという意味がある。これはどちらも正しい。

では、特例会見は憲法の趣旨に合致するのか。正確を期すために、首相や閣僚の公式な発言に基づいて論を進めたい。本件は「今日まで、各国に平等に適用されてきた、いわゆる一カ月ルール」について「中国副主席に対しての特例を認めた」(平野長官答弁より)ものである。確かにこのルールは法律ではないし、鳩山首相や小沢幹事長が主張するように、必ずしも杓子定規に適用する必要はなく、金科玉条ではないというのは事実かもしれない。しかし、その「特例」を認めた理由は、鳩山内閣が、「関係をより好転させるため」「世界で一番人口の多い国」(以上鳩山首相)と中国を重視することや、習近平国家副主席を「本当に大事な方」「将来のリーダー」(以上鳩山首相)「次の国家主席」「皇太子」(以上亀井内閣府特命担当大臣)と認識していることである。これらはもはや皇室の「親善」の役割を超えた「外交」に関わるものではないだろうか。そうだとすれば、これは公的行為に政治的性格を持たせた疑いが強い。それは即ち、「国政」に陛下を関わらせたということだ。また、朝日新聞の世論調査によれば今回のご引見を「妥当ではない」とした割合は51%である[http://www.asahi.com/politics/update/1220/TKY200912200296.html]。これは、国民の総意に基づく象徴という地位に反するものである可能性もある。

以上の様に、鳩山内閣による特例会見は、憲法上極めて問題のある判断であったと言わざるを得ない。ご引見は「外交上の諸問題を話し合うため…ではなく、純粋に国際親善のために行われた」(平野長官)から、問題はないという説明だけでは到底納得できない。しかも、今後もこの様なことが繰り返される心配があるにもかかわらず、あのような短い政府見解を出されるだけというのは、全く説明責任が果たされていないと言わざるを得ない。

また、今回の政府見解の憲法解釈は、民主党の小沢幹事長のそれと全く異なる。小沢氏の主張が従来の政府見解と食い違っているのは以前から指摘して来た通りだが、今回鳩山内閣は改めて踏襲を明言したのだ。しかしながら、今のところ小沢氏は自らの発言を一切訂正していないし、鳩山首相もそれを求めていない。いわば、憲法解釈について、政府と与党が食い違っている状態が続いているのだ。

民主党は平成17年のマニフェストにおいて以下の様に書いていた。

日本では今、時々の政府の都合によって憲法が恣意的に解釈され運用されるという、いわば「憲法の空洞化」がすすんでいます。このままでは、憲法に対する国民の信頼感はますます損なわれてしまいます。民主党はこの状況を克服し、国家権力の恣意的解釈を許さず、立憲主義を基本に据えた、より確かな憲法の姿を追求していきます


この言葉はどこへいったのか。また、社民党の「護憲」はどこへ消えたのか。極めて無責任としかいいようがない。

このような憲法や皇室を尊重しない政権は、即刻退陣すべきではないか。それが嫌なら、明確な説明を行うしかない。メディアも野党ももっと厳しく追及すべきだ。