Nikkoh の 徒然日記

ゲイ(=男性同性愛者)の Nikkoh が、日々の雑感やまじめなこと、少し性的なことなどを、そこはかとなく書きつくります

遺族補償年金の男女格差に違憲判決

2013-11-26 00:38:18 | 男性差別 V (社会の制度に関わること)
マスキュリスト として、見過ごせないニュース(朗報という意味で!)が目に入ってきました。

マスキュリズム(masculism) = 男性に対する性差別(男性差別)の撤廃を目指す思想・運動。フェミニズムの対置概念
※ マスキュリスト = マスキュリズムの推進者や同調者

遺族補償年金、受給資格の男女差は「違憲」 大阪地裁が初判断(産経新聞) - goo ニュース

遺族補償年金の受給要件で、夫の死亡時に妻は年齢を問わず支給対象となるのに対し、妻の死亡時に夫が年齢によって受給できないケースがあるのは法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとして、公務災害で妻=当時(51)=を亡くした大阪府内の元会社員の男性(66)が地方公務員災害補償基金(東京)に不支給処分取り消しを求めた訴訟の判決が25日、大阪地裁であった。中垣内(なかがいと)健治裁判長は地方公務員災害補償法(地公災法)の規定を違憲、無効とし同基金の処分を取り消した。
原告側代理人によると、年金制度の男女差について違憲と認めた司法判断は初めて。同様の規定は民間労働者が対象の労働者災害補償保険法などにもあり、確定すれば、実務上与える影響は大きい。
中垣内裁判長は、地公災法が立法された昭和40年代に働く夫と専業主婦を想定した制度設定には一定の合理性を認めたが、後の社会状況の変化を重視。
「共働き世帯が一般的な家庭モデルとなった今、配偶者の性別において受給権の有無を分けるような差別的取り扱いには、立法目的との間に合理的関連性を有しない」として、夫にのみ年齢の受給要件を設けた規定について違憲、無効と結論づけた。
訴状などによると、男性の妻は堺市立中学校で教諭として勤めていた平成9年に鬱病を発症し、翌10年に自殺。訴訟を経て22年4月に公務災害と認められた。
ところが地方公務員災害補償法の規定では、公務災害で妻が死亡した場合、夫の当時の年齢が54歳以下なら原則支給対象外となる。男性は妻の死亡時に51歳で年金支給申請が認められず、23年10月に提訴。
訴訟で原告側が憲法違反を主張したのに対し、被告側は「社会保障立法には国会に広い裁量権が認められ、違憲性はない」などと反論していた。


僕としては、とても妥当な判決が出されたことを嬉しく思います。
同じ状況に置かれたとき、男性であるか女性であるかということで取り扱いに大きな差が生じることは、やっぱりおかしいと思うのです。
性差別 = 女性差別 というイメージを持つ人も依然として多い中、「やっとか…」という思いも確かにあるけれど、こうしてまっとうな判決が出てきたことは喜ばしいです。

※ 当然のことながら、性差別 = 女性差別 ではありません。女性差別は性差別の1つの要素です。性差別 ∋ 女性差別 です。
※ 性差別 = 男性差別 + 女性差別 であり、さらに男性差別と女性差別は多くの場合は表裏一体となっていて、切り離せないのではないかと僕は考えています。性差別 = 女性差別 のイメージに囚われている限り、性差別は無くなり得ないとも思います。

同じことを報じた記事ですが、別の新聞社の記事もご紹介しておきます。

遺族年金:男女差は違憲 制度見直し促す 大阪地裁判決 (毎日新聞)

男性より女性に手厚い遺族補償年金の規定が憲法に違反するかが争われた訴訟で、大阪地裁は25日、法の下の平等を定めた憲法14条に違反 すると判断した。中垣内(なかがいと)健治裁判長は、共働き世帯が当たり前の今、専業主婦を想定して約50年前に設けられた男女格差の規定に合理性はない と指摘。地方公務員災害補償法(地公災法)の規定を根拠に堺市の元会社員(66)への遺族補償年金の不支給を決めた処分を取り消した。
遺族補償年金の男女格差を違憲とする司法判断は初めて。同じ規定は、民間労働者の遺族補償や厚生年金にもあり、判決は制度の見直しを促す内容となった。

判決によると、元会社員は1998年に堺市立中学教諭の妻(当時51歳)を亡くした。妻は職務上の心理的ストレスからうつ病を発症して自殺し、地方公務員災害補償基金(東京)に公務災害と認められ、元会社員は遺族補償給付制度に基づく年金を申請した。
しかし、基金は、妻の死亡時に元会社員が51歳だったことを理由に、年金の不支給を決めた。地公災法32条の規定などで、夫を亡くした女性は年齢に関係なく年金をもらえるが、妻を亡くした男性の場合は(1)妻の死亡時に55歳以上(2)受給開始は60歳以上--という条件が付いている からだ。
女性は、夫の過去3カ月の平均給与の153~245日分の年金が毎年、生涯にわたり支給される。一方、妻死亡時に54歳以下の男性は平均給与の1000日分の一時金の支給となる。

判決はまず、この男女格差の規定について、終身雇用や年功序列で正社員の男性を処遇し、妻の多くが専業主婦だった67年に制定されたと言及した。そして、女性が就業するのが相当困難な時代の区別であり、「立法時には一定の合理性があった」とした。
しかし、こうした規定は「憲法に照らし不断に検討、吟味されなければならない」と指摘。共働き世帯が専業主婦世帯を上回り女性より男性の完全失業率が高くなった他、母子家庭の8割以上が就業するなど、社会情勢が大きく変化しており、「性別のみで受給権の有無を分ける合理的な根拠はない」 と認定した。

さらに、母子家庭を対象にした児童扶養手当が2010年8月から父子家庭にも支給 されるなど、男女の差を解消する国の動きも挙げた。

そして、「男性と比べて依然不利な状況だが、女性の社会進出が進み、共働き世帯が一般的な家庭モデルとなった今日、地公災法32条の規定は不合理な差別的扱いとして、違憲・無効と言わざるを得ない」と結論付けた。

国の社会保障制度の男女格差を巡っては、顔に傷を負った場合の障害補償給付(労災保険)が男性より女性に手厚いことが差別に当たるかが争われた訴訟で、京都地裁が10年5月に違憲判決を出した。国は11年2月、労働者災害補償保険法施行規則を改正し、この格差を見直した。【内田幸一】

地方公務員災害補償基金の話 判決をよく検討し、関係者と協議の上、適切に対応したい。


男性の方が完全失業率が高いというのは、マスキュリストを名乗っているにもかかわらず把握していませんでした。恥ずかしい。また調べてみなければ…。
そして、それを言った後で、「男性と比べて依然不利な状況」という記述が出てくるのが、僕としては些か違和感でした。
2010年の10月14日には、日本経済新聞に、若い女性の収入、男性抜く 介護分野などで賃金上向き という記事が出たこともあります。30歳未満の女性の可処分所得が男性を上回ったことを報じた記事でした。
決して女性がバラ色などと思ってはいませんが、女性だけがそこまで無茶苦茶不利という感じでも、すでに無いのではないかという仮説を持ちたくもなります。就労に関して言えば、男女どちらにせよ厳しい昨今ですし…。

少し、話が横道へと行きかけましたが、民間労働者の遺族補償や厚生年金も含めて、制度ができるだけ早く改善へと向かうことを願いたいです。

========== 追記 ==========

原告となった男性の思いなども伝わる記事が出ていたので、併せて紹介しておきます。

遺族年金:「当たり前、認められた」原告の元会社員、笑顔 (毎日新聞)

妻を亡くした男性と夫に先立たれた女性。同じ遺族なのに、なぜ差があるのか。妻の死から15年。素朴な訴えを続けた原告の元会社員(66)=堺市=は、遺族補償年金の男女格差を違憲とした25日の大阪地裁判決に胸をなで下ろした。半世紀前の規定を「今では差別だ」と断じた司法。一般の年金も含めた国の遺族補償制度の在り方が問われている。【服部陽】

「性別による差別はもはや憲法に違反する」

25日午後、大阪地裁8階の809号法廷に判決骨子を読み上げる中垣内(なかがいと)健治裁判長の声が響いた。
緊張した表情だった元会社員は裁判長の言葉にほっとして、隣に座る代理人の弁護士と握手した。判決後、大阪市内で記者会見した元会社員は「一人の市民として『おかしい』と思って起こした裁判。当たり前のことが認められてうれしい」と笑顔を見せた。
1学年違いの妻(当時51歳)は堺市立中学の教諭だった。1997年、担任のクラスが学級崩壊状態になり、ストレスからうつ病を発症、98年10月に自宅で自殺した。しかし、地方公務員災害補償基金は当初、公務上の災害と認めなかった。
元会社員は2008年、公務災害の認定を求めて大阪地裁に提訴して勝ち、10年4月、基金側は妻の死を公務災害と認めた。

しかし、これで終わらなかった。翌月、基金の大阪府支部(大阪市中央区)の職員の言葉にあぜんとした。「遺族補償年金は出ません」
理由は年齢だった。妻が亡くなった時は51歳。男性の場合、55歳以上でないと支給されないと規定されていることを知った。しかし、夫を亡くした女性に年齢制限はない。
法律の条文を読んで首をひねった。「化石みたいな法律だ。どうして男女で格差があるのか」。11年10月、今度は年金の支給を求めて提訴した。

元会社員は妻が死亡した2年後に会社を退職した。基金から年金がもらえず、貯金や退職金を取り崩して生活してきた。
「妻の働きが十分に評価されていないのではないかとさえ思えた。妻がこの格差を知ったら、残念がったと思う」と語った。

判決について、代理人の松丸正弁護士は「共働き世帯が増えた社会の常識と、遺族補償年金とのギャップを埋めた」と評価した。民間労働者の遺族補償年金や通常の年金にも同じ格差がある ことを指摘し、「判決は国や国会に制度見直しを迫っている」と強調した。

元会社員は「判決が確定し、格差の是正への第一歩になれば」 と訴えた。

◇解説 現代にそぐわぬ規定

共働き世帯が増えた現代にそぐわない。大阪地裁判決は、遺族補償年金の矛盾を浮き彫りにしたと言える。
この男女格差を巡る議論は以前からあった。1985年の参議院委員会。「夫を亡くした女性は年金受給に年齢制限がない。男女平等に反するのではないか」。議員の質問に国側は答えた。「妻は就業が難しい。就業しても給与が低く、子どもを養う上で生活の困難も考えられる」
専業主婦を想定した規定は80年代半ばに既に、差別的なものではないかという疑念を生んでいた。しかし、格差は放置されている。
ただ、国も重い腰を上げつつある。母子家庭が対象の児童扶養手当は2010年8月から父子家庭にも支給されるようになった。国民年金の遺族基礎年金も、来年4月から父子家庭も支給対象になる。 社会での男女の役割の変化に、制度が追いついていない証しだ。
判決は、核家族化によって、配偶者を亡くした遺族が男性でも女性でも家庭での負担に差はなくなり、男性の収入が減少する可能性も指摘した。
家族の形や働くことへの考えが多様になった今、半世紀前の規定に合理性は乏しいだろう。厚生年金の同様の規定も含め、判決は国の社会保障制度の在り方に大きな宿題を突きつけた。【内田幸一】


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