Syrup16g全曲レビューその24「キミのかほり」

春って中々メロウな季節でもありますよね。って事でSyrup16g全曲レビューその24は「キミのかほり」です。






キミのかほり　　　　　　　　　　アルバム「delayed」収録




未だにSyrup16gの曲をほぼ毎日聴くのですが不思議な事に何百回も聴く曲なのに
全然飽きなくて、むしろ聴く度に好きになってたりします。
で、この曲もそういう曲の一つでして
リリース当時は正直そんなに好きな曲ではなくて、でも流れとしては完璧だと思ってて
でも上記の理由があって単体で取り出して聴く事はあまりなくて。
どっちかというとその前の「サイケデリック～」と「愛と理非道」のが完全に落ちてて好きでした。
この曲が本当に響くようになったのはここ数年の事です。

たまに、ふとした時に、あっ、これ辛いなって気分の時に
このフレーズがかなりの確率で浮かんで来るんです。


「踊らせんな」

私の昔の上司が仕事を辞める時に「もうこれ以上踊らされたくない」って言ってたのを思い出します。
生きてると他人の存在によって、なんでこんなことしてんの？とか
これやって意味あったんだろうか、って思うことが山ほどあって
そしてそれはハマってしまった自分の所為でもあって。
信じてたら裏切られ
頼ってたら逃げられ
そんな行為を繰り返す内に、もうこれ以上俺を踊らせないでくれよ、と。
もう俺はこれ以上誰かの手の内で転がされたくないよ、と。
そういう事も思う訳です。

それだけじゃない。
平穏に健全に生きようとしても
自分の中の要らない感情が日常の至る所で襲ってきて
平穏とも健全とも言い難い生活を繰り返してる内に、「なんで俺こんなことしてんだ？？」って。
このイージーに悩み苦しんでしまう自分自身は何なんだ、と。
気にしなければいい。
でも実際「気にしない」なんて事は余程心の強い人でないと出来ません。
そんな自分自身に向けての皮肉でもあるというか・・・
それはもちろん私自身の解釈ではありますが
この曲を聴いてると
この曲を思い出すと、そういう感情にも駆られてしまう。二重に辛さを煽る曲だと思ってますが
何気に自身の気持ちそのもののようでシンパシーも非常に高いです。




裏切られたけど、疎遠になってしまったけど、それでも好きだった誰か。
そこにいじいじ固執してしまう自分もまた自分なんだけど
それでも今確実に想う事は

「踊らせんな」、と。

楽曲自体がミドルテンポで柔らか味のある曲だからこそ、逆にリアリティが増しています。
それでいて五十嵐隆の裏声を使ったサビもまた美しくて。
ただ単純に美しいって形容しちゃいけない気もするけど。
でも聴き応えがある事は確か。