IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

「ブラウン流」転職で成功する方法

2005-09-05 13:05:08 | ハリケーン「カトリーナ」関連
早朝にワシントンを脱出して、ボストンにやって来た。いよいよ大学が新学期をスタートさせるため、市内のあちこちでは学生寮やアパートに荷物を運び入れる大学生の姿が見られた。犯罪的ですらある家賃の高さを考えると、ボストンが学生にやさしい町であった時代は数世紀前の出来事かと感じてしまうけれど、ワシントンには無い独特の活気は今も健在だ。午後から学生時代の仲間たちと合流し、ボストン・コモン周辺を歩き、ノースエンドのイタリアン・カフェできつめのコーヒーを飲みながら昔話を楽しんだ。色んな事があった学生時代だけど、やっぱり楽しかったなぁ。学校の近くにあるマレーシア料理の店に行き、それから再び別のカフェに移動して最後のコーヒーを飲み、30分前にホテルに戻ってきた。テレビをつけると、そこにはハリケーン関連ニュースのアップデートが。今日もニューオーリンズ周辺で幾つかのニュースがあった。

ニューオーリンズ市当局は日曜日、現在までに59人の死亡を確認したと発表した。しかし、最終的に死者数が数千人に達する見込みで、市内の死者数が1万人に達しているのではという懸念も出始めている。また、警察も武装した市民と銃撃戦を展開しており、武装市民側に最大で6人程度の死者が出たとNBCニュースは伝えている。警察の護衛で橋の修復に向かった建設業社スタッフに向けて銃撃が始まると、警察側もこれに応戦し、武装市民を射殺したの事だ。また、市内でヘリコプターも墜落しているが、死者は出なかった模様だ。湾岸警備隊のスポークスマンがNBCニュースに語ったところでは、ヘリコプターは復興事業に携わる民間業者が手配したものだという事だが、一方で湾岸警備隊のヘリコプターだったという情報も存在する。

の機能が完全にストップしたニューオーリンズ市内で、治安維持の任務に就く地元警察官の多くが、これまで経験した事の無いプレッシャーやストレスに悩まされている模様だ。4日付のニューヨーク・タイムズ紙は、複数のニューオーリンズ警察当局者の話として、ハリケーンが発生してからすでに200人近くの警察官が職場放棄を行い、そのうちの2人は自殺を図ったと報じている。関係者の話では、職務放棄を行った警察官の多くが経験の浅い若手で、精神的なプレッシャーに押しつぶされた可能性が高い。上司に現場を離れると報告した警察官も若干存在したようだが、その殆どは突然姿を消してしまっている。また、水不足が原因となって、火災現場に出動するのを放棄した消防署も出てきたようだ。

連邦緊急事態管理局(FEMA)のマイケル・ブラウン長官をめぐり、そのリーダシップを疑問視する声が高まり始めている。数日前、ABCの「ナイトライン」に出演したブラウン長官は、ニューオーリンズ市内のコンベンション・センターに集まった被災者達へ食料と水が十分に供給されていると主張したが、番組でアンカーを務めるテッド・コッペルに間違いを指摘されると、慌てて「スーパードームの間違いでした」と弁明している。災害発生当初からブラウン長官が事態を把握仕切れていないのではという指摘は存在したが、この数日に限っては、ブラウン長官が大規模自然災害に対処できる経験を持ち合わせているのかという疑問に変わりつつある。3日付のカンザス・スター・デイリー紙は、これまで語られる機会がほとんど無かったブラウン長官の経歴を紹介している。

オクラホマ州出身のブラウン長官は、オクラホマ州立大学のロースクールを卒業後、弁護士事務所を開業し、さらに同州エドムンド市の市会議員も務めている。大学時代には政治科学を専攻しており、自然災害や科学とは無縁とのキャリアだった。1988年には下院議員選挙に共和党から立候補するが(オクラホマ州)惨敗しており、90年代に入ってすぐに国際アラビア馬協会(IAHA)の理事に就任し、1991年から2000年までの間、毎年10万ドルの年収を得ていた。ホース・ショーにおける不正行為等のチェックを担当する責任者でもあったブラウン氏は、協会内部で「皇帝」と陰口をたたかれるほどの権力を手にしたが、協会メンバーとの対立や訴訟問題が重なり、2000年になって辞任に追い込まれている。しかし、ブラウン氏は辞任前から、当時大統領選挙の真っ只中にあったブッシュ陣営との関係を築き始めている。

ブッシュ大統領のテキサス州知事時代に首席補佐官を務めたジョー・アルバーは、ブラウン長官とは大学時代のルームメイトという関係だった。カンザス・スター・デイリー紙は複数のIAHA職員の話として、ブラウン氏が「ブッシュ政権が誕生すれば、自分にも高い地位が保証されるだろう」と語っていたと報じている。2001年にアルバーがFEMA長官に就任すると、ブラウン氏は相談役として局内に招き入れられた(その後、1年も経たないうちに副長官に就任)。2003年にアルバー長官が退任すると、ブッシュ大統領は後継者としてブラウン氏を指名している。ブラウン長官の経験不足に批判が集中し、FEMAによる救援活動の遅れが議会によって調査される事が決まったが、ブッシュ大統領は現在もブラウン長官のリーダーシップを評価する発言を続けている。アルバー元長官は2003年にコンサルタント会社を設立し、2005年3月にはハリーバートン子会社のケロッグ・ブラウン&ルート社のロビイストに就任している。

明日はボストン滞在2日目。朝からノースエンドに再び舞い戻って、何人かの蹴球中毒者達と色々と話し合ってきます。おそらく昼ごろまで延々と続くだろう、生産性の全く無いフットボール談義。でも、これが僕の元気の源でもあるわけで…。アメリカ代表もワールドカップ出場を決めたことだし、とりあえず「おめでとうさん」と言ってやらないと。夕方から再び学生時代の友人と合流し、アイリッシュ・パブとチベット・レストラン(スウェーデン人の同級生からのリクエストで、誰一人としてどんな料理か分かってないけれど、個人的にはかなり楽しみ)をハシゴする予定。「明日どこで食事する?」という話題になり、コーヒーを飲みながら喋る事30分。相変わらずまとまりが無い。ニュースルームでの企画会議を思い出し、僕は苦笑せずにはいられなかったけど、至福の一時がそこにはあった。

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2 コメント

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ブラウン氏、経歴詐称疑惑 (映画侍)
2005-09-09 21:53:06
さっそくのTBありがとうございます。

今回の災害は未曾有のもので、数十万人がホームレスになることなど、誰も想像も出来なかったことですね。そうは言っても、誠実な人々の研究や警告で、予測されていた事態だ、ということに衝撃を受けます。本当に政治家や役人が人を生かしも殺しもすることを、絶望的な気持ちで眺めているばかりです。

TBさせてください。
ありがとうございました (ひろふみ)
2005-09-10 05:51:39
映画侍さん、コメントをありがとうございました。ブログに書かれていたブラウン長官の経歴詐称疑惑、こちらでも朝から繰り返し報道されています。こういう大惨事が発生した際、ブラウン長官のような人物が救援活動の最高責任者だった事は凄く悲劇的ですが、彼だけをスケープゴートにして全てを終わらせないためにも、メディアはこれからもFEMAや国土安全保障省の体質的な問題を追求していかなければなりませんね。以前に行ったツイスター災害の取材中、被災地で汗だくで働くFEMAのスタッフと知り合いました。「踊る大走査線」じゃないですが、現場の人間と災害対策のイロハを知らないトップとの温度差が激しい気がします。