IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

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警察官による誤射はなぜおきるのか?

2006-11-29 16:46:19 | 犯罪
来週から2週間ほど帰国するので、サンクスギビング明けから残った仕事やら部屋の掃除やらをしていると、あっという間に28日になってしまった…。実は11月中旬のボストン滞在中にグローブと野球用のボールを幾つか購入したんだけど、感謝祭当日の昼間に友人と2時間近くキャッチボールをしていたら、数日後に左肩が上がらなくなるハプニングに(僕は左利きなので)。それでも、久しぶりのキャッチボールは楽しかったですよ。前にも書いたかもしれないけど、ワシントンで野球の道具を買える場所は本当に限られていて、これがボストンになると、冗談ではなく本当に地下鉄の各駅周辺にスポーツ用品店があるのだ。ワシントンの野球人気には限界があるなんて記事を去年から何回か目にしていたけれど、ただでさえ少ないスポーツ用品店の半数以上で野球道具が売られていない現状では、野球人気の回復は夢物語なのかもしれない。さてさて、今日はニュースを2つ。まず最初にニューヨークのクイーンズで発生した警察官の発砲に関するニュースを。それから、イラク情勢の「定義」をめぐって国内メディアとブッシュ政権との間に温度差があるという話を。

ニューヨークのクイーンズで25日早朝、3人の男性が複数の警察官から突然発砲を受け死傷する事件が発生し、亡くなった23歳の男性は同じ日に結婚式を挙げる予定だった。警察官達は3人が乗った車に向けて拳銃を50発程度発射しており、23歳のショーン・ベルさんは病院に運ばれた時点ですでに死亡していた。ベルさんの車に同乗していたジョセフ・グズマンさんは11発の弾丸を受け、現在も重体となっている。トレント・ベネフィールドさんは3発の弾丸を受けたものの、容態は安定しているとの事だ。銃撃を受けた3人はクーインズにあるストリップクラブでベルさんのバチェラー・パーティー(男だけで行う独身サヨナラパーティー)を行ったあと、午前4時ごろに店を出て、近くに駐車していたベルさんの車に乗り込んだ。ニューヨーク市警の発表によると、ベルさんらが立ち寄ったストリップクラブは以前から麻薬取引と売春が行われているとの噂があり、事件発生時にも7人の私服警官が張り込みを行っていた。

警察当局は、ベルさんらが乗った車が近くに停車していたニューヨーク市警の覆面車と接触したため、現場の警察官らがベルさんの車を一斉に注視し、その際にベルさんの車から銃らしきものが見えたと説明している。しかし、ベルさんの運転する車からは銃器類は一切発見されなかった。今回銃撃を受けた3人が全て黒人青年であったため、ニューヨーク市の政治家や市民団体からは銃撃の背景に人種差別が存在したのではないかという批判が噴出している。ニューヨーク市のマイケル・ブルームバーグ市長は27日、私服警官らによる銃撃事件を「理解しがたく、容認する事のできない行為」と非難したが、同時に市民団体などから激しく批判されているレイモンド・ケリー署長を支持する姿勢も見せている。専門家の間では1人の警察官による発砲が連鎖反応を引き起こし、周囲の警察官まで発砲を行う傾向があるとの指摘が存在するが、黒人指導者のアル・シャープトン氏はAP通信の取材に対し、「その理論がまかり通るなら、1人の警察官が間違いを起こした瞬間に、周りの警察官が全て銃殺隊に変わってしまうということなのでしょうか?」とコメントしている。

警察官らによる誤射事件は過去にも発生しており、1999年にはニューヨークのブロンクスで4人の白人警察官から路上で職務質問を受けた西アフリカ出身のアマドウ・ディアロさんが、身分証明書の入った財布をポケットから出そうとした瞬間に、周囲の警察官から銃撃を受けて死亡している。4人の警察官は41発を発射し、そのうちの19発がディアロさんに命中していた。事件後の訴訟で、4人は無罪となったものの、ディアロさんの遺族には約300万ドルが支払われている。翌年にも同じニューヨークでハイチ系移民のパトリック・ドリスモンドさんが、ニューヨーク市警のおとり捜査官に胸を撃たれて死亡している。大陪審はドリスモンドさんへの銃撃が「事故だった」と結論付けたが、ニューヨーク市は数年後に遺族に対して約220万ドルを支払っている。先週はジョージア州アトランタで、民家で麻薬取引が行われているという情報を得た地元警察が、88歳の黒人女性が住む家を急襲。家に突然入ってきた私服警官を強盗と勘違いしたこの女性が銃を手にしたため、逆に警察官に射殺される事件が発生したが、後になってこの家で麻薬取引が行われた形跡は無かった事が判明している。

ブッシュ大統領は28日、訪問中のエストニアで記者会見を行い、イラク国内で連続して発生しているテロ事件が「スンニ派とシーア派の分裂を狙ったアルカイダによる攻撃だ」と語り、大統領として米軍のイラク撤退を支持しない姿勢をあらためて示した。ブッシュ大統領は29日と30日にヨルダンでイラクのマリキ首相と会談を行うが、反米主義で知られるシーア派のムクタダ・アル・サドル師は28日、ブッシュ大統領とマリキ首相の会談が行われた場合にはイラク政府への協力を延期すると発表しており、国内のシーア派とアメリカ政府に依存しているマリキ政権にとっては大きな打撃となる。イラク国内の治安状況は悪化の一途をたどっており、22日の国連による発表では、10月の1ヶ月間だけで3709人の民間人が死亡している。ブッシュ政権は現在もイラクの現状を「内戦」と位置付けていないものの、27日にはNBCが主要なテレビメディアとしては初めてイラクの現状を「内戦」と表現する事を決定している。

また、28日付のワシントンポスト紙は8月に海兵隊内で作成された機密メモを入手したと報じている。機密メモでは、海兵隊内の情報部が「イラク西部、とりわけアンバル州に展開する米軍部隊に、もはや武装勢力を打ち負かす力は残されていない」と結論付けており、現地で影響力を増しつつあるアルカイダに対する具体的な対策もほとんど存在しない実態が明らかになっている。機密メモによると、アンバル州の住民はバグダッドの政界でイランの影響力が将来的に強まるだろうと確信しており、その際にアンバル州がイラク社会の主流から取り残される事を極度に恐れているのだという。また、地元住民の間ではイラク国内の治安状況が完全に回復する前に米軍が撤退を開始するだろうという見方が強く、それが危険を冒してまで米軍に協力したいと思う住民の少なさの原因だとメモは分析している。

2003年3月から続く米軍によるイラク駐留はすでに第2次世界大戦に米軍が参戦した日数を超えており、ワシントンの政界でも泥沼化するイラク問題に対して早期の解決を求める声があとを絶たない。また、ブッシュ政権同様に現地の米軍も現時点でイラクの現状を内戦と定義づけてはおらず、イラク駐留多国籍軍のスポークスマンをつとめるウイリアム・コールドウェル少将も27日、「現在、イラク国内で発生する暴力は受け入れ難いレベルにまで来ている」とコメントしたものの、最後までイラクの現状を内戦と呼ぶことはなかった。しかし、同じく27日に国連のアナン事務総長は記者団に対し、「イラクの内戦は、すぐそこにまで来ている状態」と語り、改善の兆しが見えないイラク情勢を懸念した。ワシントンではベーカー元国務長官を座長とした超党派の「イラク研究グループ(ISG)」が今後のイラク政策に関する話し合いを開始しており、ブッシュ政権のイラク政策見直しに関するISG案は、報告書にまとめた形で12月にも発表される予定だ。

サッカーのイタリア代表やレアル・マドリッドでプレーするファビオ・カンナバロ選手が今年度のバロンドールを受賞した。意外なことに1993年に当時ユベントスでプレーしていたロベルト・バッジョ氏が受賞して以来、イタリア人選手がこの賞を授与される機会は無かった。ディフェンダーとしてこの賞をもらうのは、カンナバロで3人目となり、70年代と90年代にドイツのフランツ・ベッケンバウアーとマティアス・ザマーがそれぞれ受賞している(90年に受賞したローター・マテウスは当時ミッドフィルダーとしてプレーしていた)。今日もイタリア人の友人とカンナバロについて話をしていたんだけど、カラブリア出身の友人はカンナバロが純粋なディフェンダーとして評価された事に驚きを隠せない様子だった。ベッケンバウアーとザマーは攻撃的なリベロとして知られており、10年前の欧州選手権ではザマーのフォワード顔負けの活躍が記憶に新しい。「トロフィーを故郷のナポリにも持って帰りたい」と語っていたカンナバロ。今年に入ってナポリや周辺の町ではマフィア絡みの殺人事件が多発し、治安維持のために軍が投入されるなんて話を聞いたけど、久しぶりのトロフィーがナポリ市民やカンパニアの人たちの癒しになってくれればと思う。


写真:27日に行われたバロンドール授賞式で、女優のモニカ・ベルッチさんとトロフィーを抱えるファビオ・カンナバロ選手 (AP通信より)
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