IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

警察官による誤射はなぜおきるのか?

2006-11-29 16:46:19 | 犯罪
来週から2週間ほど帰国するので、サンクスギビング明けから残った仕事やら部屋の掃除やらをしていると、あっという間に28日になってしまった…。実は11月中旬のボストン滞在中にグローブと野球用のボールを幾つか購入したんだけど、感謝祭当日の昼間に友人と2時間近くキャッチボールをしていたら、数日後に左肩が上がらなくなるハプニングに(僕は左利きなので)。それでも、久しぶりのキャッチボールは楽しかったですよ。前にも書いたかもしれないけど、ワシントンで野球の道具を買える場所は本当に限られていて、これがボストンになると、冗談ではなく本当に地下鉄の各駅周辺にスポーツ用品店があるのだ。ワシントンの野球人気には限界があるなんて記事を去年から何回か目にしていたけれど、ただでさえ少ないスポーツ用品店の半数以上で野球道具が売られていない現状では、野球人気の回復は夢物語なのかもしれない。さてさて、今日はニュースを2つ。まず最初にニューヨークのクイーンズで発生した警察官の発砲に関するニュースを。それから、イラク情勢の「定義」をめぐって国内メディアとブッシュ政権との間に温度差があるという話を。

ニューヨークのクイーンズで25日早朝、3人の男性が複数の警察官から突然発砲を受け死傷する事件が発生し、亡くなった23歳の男性は同じ日に結婚式を挙げる予定だった。警察官達は3人が乗った車に向けて拳銃を50発程度発射しており、23歳のショーン・ベルさんは病院に運ばれた時点ですでに死亡していた。ベルさんの車に同乗していたジョセフ・グズマンさんは11発の弾丸を受け、現在も重体となっている。トレント・ベネフィールドさんは3発の弾丸を受けたものの、容態は安定しているとの事だ。銃撃を受けた3人はクーインズにあるストリップクラブでベルさんのバチェラー・パーティー(男だけで行う独身サヨナラパーティー)を行ったあと、午前4時ごろに店を出て、近くに駐車していたベルさんの車に乗り込んだ。ニューヨーク市警の発表によると、ベルさんらが立ち寄ったストリップクラブは以前から麻薬取引と売春が行われているとの噂があり、事件発生時にも7人の私服警官が張り込みを行っていた。

警察当局は、ベルさんらが乗った車が近くに停車していたニューヨーク市警の覆面車と接触したため、現場の警察官らがベルさんの車を一斉に注視し、その際にベルさんの車から銃らしきものが見えたと説明している。しかし、ベルさんの運転する車からは銃器類は一切発見されなかった。今回銃撃を受けた3人が全て黒人青年であったため、ニューヨーク市の政治家や市民団体からは銃撃の背景に人種差別が存在したのではないかという批判が噴出している。ニューヨーク市のマイケル・ブルームバーグ市長は27日、私服警官らによる銃撃事件を「理解しがたく、容認する事のできない行為」と非難したが、同時に市民団体などから激しく批判されているレイモンド・ケリー署長を支持する姿勢も見せている。専門家の間では1人の警察官による発砲が連鎖反応を引き起こし、周囲の警察官まで発砲を行う傾向があるとの指摘が存在するが、黒人指導者のアル・シャープトン氏はAP通信の取材に対し、「その理論がまかり通るなら、1人の警察官が間違いを起こした瞬間に、周りの警察官が全て銃殺隊に変わってしまうということなのでしょうか?」とコメントしている。

警察官らによる誤射事件は過去にも発生しており、1999年にはニューヨークのブロンクスで4人の白人警察官から路上で職務質問を受けた西アフリカ出身のアマドウ・ディアロさんが、身分証明書の入った財布をポケットから出そうとした瞬間に、周囲の警察官から銃撃を受けて死亡している。4人の警察官は41発を発射し、そのうちの19発がディアロさんに命中していた。事件後の訴訟で、4人は無罪となったものの、ディアロさんの遺族には約300万ドルが支払われている。翌年にも同じニューヨークでハイチ系移民のパトリック・ドリスモンドさんが、ニューヨーク市警のおとり捜査官に胸を撃たれて死亡している。大陪審はドリスモンドさんへの銃撃が「事故だった」と結論付けたが、ニューヨーク市は数年後に遺族に対して約220万ドルを支払っている。先週はジョージア州アトランタで、民家で麻薬取引が行われているという情報を得た地元警察が、88歳の黒人女性が住む家を急襲。家に突然入ってきた私服警官を強盗と勘違いしたこの女性が銃を手にしたため、逆に警察官に射殺される事件が発生したが、後になってこの家で麻薬取引が行われた形跡は無かった事が判明している。

ブッシュ大統領は28日、訪問中のエストニアで記者会見を行い、イラク国内で連続して発生しているテロ事件が「スンニ派とシーア派の分裂を狙ったアルカイダによる攻撃だ」と語り、大統領として米軍のイラク撤退を支持しない姿勢をあらためて示した。ブッシュ大統領は29日と30日にヨルダンでイラクのマリキ首相と会談を行うが、反米主義で知られるシーア派のムクタダ・アル・サドル師は28日、ブッシュ大統領とマリキ首相の会談が行われた場合にはイラク政府への協力を延期すると発表しており、国内のシーア派とアメリカ政府に依存しているマリキ政権にとっては大きな打撃となる。イラク国内の治安状況は悪化の一途をたどっており、22日の国連による発表では、10月の1ヶ月間だけで3709人の民間人が死亡している。ブッシュ政権は現在もイラクの現状を「内戦」と位置付けていないものの、27日にはNBCが主要なテレビメディアとしては初めてイラクの現状を「内戦」と表現する事を決定している。

また、28日付のワシントンポスト紙は8月に海兵隊内で作成された機密メモを入手したと報じている。機密メモでは、海兵隊内の情報部が「イラク西部、とりわけアンバル州に展開する米軍部隊に、もはや武装勢力を打ち負かす力は残されていない」と結論付けており、現地で影響力を増しつつあるアルカイダに対する具体的な対策もほとんど存在しない実態が明らかになっている。機密メモによると、アンバル州の住民はバグダッドの政界でイランの影響力が将来的に強まるだろうと確信しており、その際にアンバル州がイラク社会の主流から取り残される事を極度に恐れているのだという。また、地元住民の間ではイラク国内の治安状況が完全に回復する前に米軍が撤退を開始するだろうという見方が強く、それが危険を冒してまで米軍に協力したいと思う住民の少なさの原因だとメモは分析している。

2003年3月から続く米軍によるイラク駐留はすでに第2次世界大戦に米軍が参戦した日数を超えており、ワシントンの政界でも泥沼化するイラク問題に対して早期の解決を求める声があとを絶たない。また、ブッシュ政権同様に現地の米軍も現時点でイラクの現状を内戦と定義づけてはおらず、イラク駐留多国籍軍のスポークスマンをつとめるウイリアム・コールドウェル少将も27日、「現在、イラク国内で発生する暴力は受け入れ難いレベルにまで来ている」とコメントしたものの、最後までイラクの現状を内戦と呼ぶことはなかった。しかし、同じく27日に国連のアナン事務総長は記者団に対し、「イラクの内戦は、すぐそこにまで来ている状態」と語り、改善の兆しが見えないイラク情勢を懸念した。ワシントンではベーカー元国務長官を座長とした超党派の「イラク研究グループ(ISG)」が今後のイラク政策に関する話し合いを開始しており、ブッシュ政権のイラク政策見直しに関するISG案は、報告書にまとめた形で12月にも発表される予定だ。

サッカーのイタリア代表やレアル・マドリッドでプレーするファビオ・カンナバロ選手が今年度のバロンドールを受賞した。意外なことに1993年に当時ユベントスでプレーしていたロベルト・バッジョ氏が受賞して以来、イタリア人選手がこの賞を授与される機会は無かった。ディフェンダーとしてこの賞をもらうのは、カンナバロで3人目となり、70年代と90年代にドイツのフランツ・ベッケンバウアーとマティアス・ザマーがそれぞれ受賞している(90年に受賞したローター・マテウスは当時ミッドフィルダーとしてプレーしていた)。今日もイタリア人の友人とカンナバロについて話をしていたんだけど、カラブリア出身の友人はカンナバロが純粋なディフェンダーとして評価された事に驚きを隠せない様子だった。ベッケンバウアーとザマーは攻撃的なリベロとして知られており、10年前の欧州選手権ではザマーのフォワード顔負けの活躍が記憶に新しい。「トロフィーを故郷のナポリにも持って帰りたい」と語っていたカンナバロ。今年に入ってナポリや周辺の町ではマフィア絡みの殺人事件が多発し、治安維持のために軍が投入されるなんて話を聞いたけど、久しぶりのトロフィーがナポリ市民やカンパニアの人たちの癒しになってくれればと思う。


写真:27日に行われたバロンドール授賞式で、女優のモニカ・ベルッチさんとトロフィーを抱えるファビオ・カンナバロ選手 (AP通信より)

RACE

2006-11-22 14:16:55 | エンターテーメント・カルチャー
突然ボストンに行く事になって、先週半ばにワシントンを出発。今週月曜日の夕方にワシントンに戻ってきた。ボストン滞在中にO.J.シンプソンが元妻と友人男性の殺害に関する「告白本」と、それに関する独占インタビューがFOXテレビによって放送されると知ってビックリ。今日はこのニュースを紹介したいと思うんだけど、シンプソン事件といえば、その裁判時に人種問題が大きく取り上げられた。「告白本」の出版をめぐって全米で大きな騒ぎとなる中、テレビにも頻繁に出演していたマイケル・リチャーズという白人コメディアンが、ハリウッドのコメディクラブに出演した際にブーイングを繰り返す観客に対して、俗に言う「Nワード」を連発した。この様子が撮影されたビデオがテレビのニュースなどでも取り上げられ、リチャーズは20日に謝罪している。スタンダップ・コメディの経験がほとんど無かったリチャーズは、その場の雰囲気を好転させようと考え、Nから始まる言葉を連発したらしいんだけど、黒人ではない人物がこの言葉を使うのは地雷原の上を歩くのにも等しい。クリス・ロックやデーブ・チャペルといった黒人コメディアンに許されて、白人コメディアンには許されないのは不公平ではないかという議論もあったそうだけど、とにかく僕らが決して使用してはいけない言葉なのだ。「言論の自由といった問題じゃなくて、白人が使うのは絶対に許されない言葉。コンドリーザ・ライスとJ.T.ワッツにも使ってほしくないね」。友人のヘンリーが電話口でそう言っていた。

メディア王として知られるルパート・マードック氏が会長をつとめるニューズ・コーポレーション社は20日、今月末にアメリカ国内で傘下の出版社によって予定されていたO.J.シンプソン氏の「告白本」の出版と、同時期に同じく傘下のFOXテレビによって予定されていたシンプソン氏への独占インタビューの放映を取りやめると発表した。70年代にNFLのスター選手としてバッファロー・ビルズで活躍したシンプソン氏はプロボウル(アメリカンフットボール版オールスターゲーム)にも6回選出され、現役引退後は映画俳優として第2のキャリアをスタートさせた。1994年に元妻と友人の男性を殺害した容疑で起訴されたシンプソン氏は刑事事件では無罪となったものの、元妻らの遺族が起こした民事訴訟では「2人の死に責任がある」との判決を下され、遺族に3350万ドルの支払いを命じられたが、経済的な理由から支払いは現在まで行われていない。

「もしも私がやったのなら」と題されたシンプソン氏の告白本は今月30日に発売が予定され、27日と29日にはFOXテレビ内でシンプソン氏への独占インタビューが放送される予定だった。出版元のハーパー・コリンズ社はAP通信の取材に対し、すでにいくつもの書店に問題の告白本を送ったと認め、これから回収作業が開始されると発表している。告白本ではシンプソン氏が、「もしも、自分が元妻と友人を殺害したとすれば、どのようにして行っただろうか?」という仮定形で殺害に関する詳細が描かれている模様で、この本を刑事裁判で無罪を勝ち取ったシンプソン氏による「告白」と考えるメディアも少なくない。本の出版や独占インタビューの計画は先週半ばに発表されていたが、遺族や全米のマスコミが一斉に反発し、マードック氏の傘下にあるFOXニュースの番組内でも司会者が告白本やインタビューに対して激しい批判を繰り返していた。

シンプソン事件について説明をしておくと、1994年6月、カリフォルニア州ロサンゼルスにあるコンドミニアムの外でシンプソン氏の元妻ニコル・ブラウンさんと友人のロナルド・ゴールドマンさんが刺殺体で発見された。2人はブラウンさんの自宅に入る直前に何者かに襲われた模様で、事件発生時、コンドミニアム内ではシンプソン氏とブラウンさんとの間に生まれた2人の子供がすでに就寝中だった。ブラウンさんは事件の2年前にシンプソン氏と離婚していた。捜査当局は現場で採集された証拠品をもとにシンプソン氏が犯行を行った可能性が高いと判断。やがてシンプソン氏は逮捕されるのだが、逮捕前にシンプソン氏と地元警察が映画さながらのカーチェイスを繰り広げたり(この様子は全米に中継された)、人種問題がクローズアップされたため(シンプソン氏が黒人で、ブラウンさんが白人だったため、事件の翌年から始まった裁判では、92年に発生したロス暴動の教訓から日系アメリカ人の判事が選ばれた)、アメリカ国内では連日のようにトップニュースとして扱われていた。告白本の出版やインタビューの放送取り止めが20日に発表されたものの、遺族側の怒りは現在も収まっておらず、ブラウンさんの遺族は21日になって「FOXテレビから数百万ドルでインタビューなどの批判を行わないでほしいとオファーがあった」と明かしている。また、遺族がシンプソン氏に対して新たな訴訟を起こす計画もすでに存在しているようだ。

久しぶりのボストン。5日間の滞在中、町の変化を感じずにはいられなかった瞬間が幾つかあり、地下鉄の料金アップ(僕がボストンで学生だった頃は、片道75セントだったはず…)やサウスボストンの再開発といった話を聞くと、懐かしさと寂しさが入り混じった気持ちになる。アパートの家賃からハーバード・スクウェアのカフェで食べる事のできる北アフリカ料理まで、いろんな所で毎年のように値上げが繰り返されているんだけど、ボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイパークのチケット料金も、来年は平均で5パーセント近く値上げされる予定だ。ただでさえストップする気配のない物価高にフラストレーションを抱えているボストン市民にとって、野球観戦料金のさらなる値上げはキツい(2006年の時点で、フェンウェイパークの平均チケット料金は5000円を突破している)。来年度チケット料金の値上げが発表されたのが先週木曜日で、ボストン市内のスポーツニュースは松坂大輔選手の話題が中心となっていた。微妙な時期に発表された来年度チケット料金。僕には、球団がポスティングで使った60億円を免罪符として用いているようにも見えた。


写真:17日にハリウッドのコメディ・クラブに出演したマイケル・リチャーズ。このステージでの言動が数日後に大きな問題へと発展した。(AP通信より)

さようなら、エド・ブラッドリー

2006-11-11 13:35:21 | 政治
久しぶりにドラマにはまっている。1ヶ月ほど前になるんだけど、友人と話をしていた時に、HBOで放送されている「ザ・ワイアー」という刑事ドラマをすごく薦められた。この刑事ドラマ、タイトルからも分かるように盗聴を専門とするボルチモア警察の1部署に勤務する刑事達と、ボルチモア市内のゲットーをテリトリーとするギャング、犯罪の減少を政治利用しようとする地元の政治家達が主な登場人物で、今年ですでに4シーズン目に突入しているんだけど、今までの刑事ドラマにはない新鮮さがある。10年以上前に「NYPDブルー」をはじめて見た時も、それまでの刑事ドラマには無かったオリジナリティに感動した記憶がある(しかも、関西のローカル局で深夜に放送されていたんです)。この2週間ほど、好きな映画をほとんど見られない毎日だったんだけど、そろそろシーズン2のDVDを借りに行こうかなと思っている。日本でも放送されていたら、ぜひチェックしてみてください!さてさて、今日は中間選挙後のワシントンの動きに関するニュースを。

中間選挙は民主党が大躍進を見せ、上院・下院・州知事の3つで過半数を制した。ブッシュ大統領は選挙から2日後の9日にホワイトハウスで民主党のナンシー・ペロシ院内総務(アメリカ史上初の女性下院議長に就任する予定)らと会談を行い、超党派の連携が今後2年間は重要になってくると強調したが、議会で過半数を制した民主党の影響力が早速あらわれはじめたようだ。強硬派で知られるジョン・ボルトン国連大使は就任前に上院の支持を得ることができず、「期限付き」で国連大使を務めていたが、その任期も来年1月で切れる。民主党が過半数を制した上院でボルトン氏の国連大使就任が賛成される確立は極めて低く、また上院全体で行われる承認作業の前に予定されている上院外交委員会での承認でも、委員会のメンバーである共和党のリンカーン・チェイフィー議員(今回の選挙で民主党候補に敗れている)がボルトン氏の国連大使就任に反対すると「反旗を翻した」展開を見せている。国務省高官の1人はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、「ボルトン氏が承認される可能性はゼロでしょうね」とコメントしている。

ブッシュ政権への風当たりも、さらに厳しさを増しそうだ。民主党のヘンリー・ワックスマン下院議員は10日、ブッシュ政権による政権運営が議会内で調査の対象になるだろうと語っている。ロサンゼルス市商工会議所でスピーチを行ったワックスマン議員は、ハリケーン「カトリーナ」発生直後の現政権による対応や、イラクや対テロ戦争で巨額の契約を勝ち取った民間企業とブッシュ政権との関係、さらには環境保護局(EPA)や食品医薬品局(FDA)が打ち出した規制に対する政権側からの政治介入が調査の対象になるだろうと指摘している。「これから非常に興味深い時間を過ごす事になるでしょう。政府改革委員会には全てのトピックを調査できる権限があります。唯一問題があるとすれば、どれから手を付け始めればいいのかという悩みだけです」。ワックスマン議員はそう語っている。中間選挙から3日がたち、上院・下院の両方で民主党に過半数を奪われた共和党陣営の間では、「報復措置」として捜査や召喚が繰り返されるのではという懸念が存在している。

また、2年後に行われる大統領選挙に向けての動きも活発化しつつあるようだ。共和党からの出馬が噂されているジョン・マケイン上院議員だが、AP通信は10日に共和党関係者の話として、マケイン議員が来週にも大統領選挙検討委員会の立ち上げを行うだろうと報じている。この共和党関係者は匿名を条件に、「マケイン議員がすでに委員会用の銀行口座を開いた」と語っており、2000年の大統領選挙では共和党からの最終的な指名を勝ち取る事のできなかった同議員が、2008年の大統領選挙に再挑戦する公算が強くなった。マケイン議員の広報官はAP通信の取材に対し、「大統領選挙に出馬するかどうか、現時点では何の決定もありません」とコメントしているが、複数の情報筋はクリスマス休暇中に同議員が家族らと話し合いを行い、最終的な決断を下すだろうと語っている。

アメリカのテレビ・ジャーナリズムで伝説的な存在でもあったエド・ブラッドリー氏が、9日にニューヨークで他界した。ブラッドリー氏がもう65歳になっていたのにも驚いたんだけど、1年以上前から慢性リンパ球性白血病に侵されていた事も昨日のニュースで初めて知った。僕は98年にアメリカに来てから、CBSの報道番組「60ミニッツ」でレポーターをつとめる彼を初めて見たんだけど、「カッコいい!」といった印象を抱いたのを覚えている。フィラデルフィアの母子家庭で生まれ育ったブラッドリー氏は、苦学して大学に進み、卒業後は小学校の教師としてしばらく働いていた。教師時代にボランティアでラジオ局の手伝いをしていた時に、レポーターの仕事をオファーされ、それからしばらくしてCBSに入社したという変わった経歴の持ち主なんだけど、1972年からはベトナム戦争の特派員としてハノイに派遣されている(74年にはカンボジアで取材中、迫撃砲の攻撃にあい、重傷を負っている)。マイノリティが少なかった当時のテレビ報道の世界で、特派員として活躍したブラッドリー氏の功績は半ば伝説と化しているんだけど、それより以上に若いジャーナリスト達と積極的に交流し続けた彼の姿勢には心底感服する。謹んでご冥福をお祈りいたします。

写真:9日に亡くなったエド・ブラッドリー氏 (ロイター通信より)

2006中間選挙

2006-11-08 10:30:16 | 政治
中間選挙のため、ブログがなかなか更新できなかったんだけど、久しぶりに更新します。昨日もニュースをまとめていたんだけど、明け方まで仕事があったためブログには掲載できず、今日はそれもまとめて掲載する事に。その前に最近見た映画について一言。先週末に友人と「ソウ3」を見に行ってきたんだけど、あのタイプの映画って拷問というか、痛々しい殺害方法というか、とにかく見ていて気分が悪くなりそうなシーンが多い。でも映画の終盤で気付いたんだけど、今回の作品は絡み合う人間関係がテーマにもなっていて、映画の最後の方にももちろん生々しい殺害シーンが登場するものの、僕はその人間関係を頭の中で整理するのに忙しかったため、クライマックスとなる部分であまり怖い思いをする事ができなかった。第3作目はファンの間でも評価が分かれているらしいけど、個人的には「もう少しシンプルなプロットでもよかったのでは?」と思ったりもした。さてさて、今日は中間選挙に関するニュースを。

の専門紙が最新号の社説の中でラムズフェルド国防長官の辞任を求め、中間選挙直前になってブッシュ政権やペンタゴン高官は、その対応に追われている。ペンタゴンはCNNなど国内メディアの取材に対し、「こういった辞任要求は特に目新しいものではない」とコメントするにとどまった。ブッシュ大統領は先週、「チェイニー副大統領とラムズフェルド国防長官には最後まで仕事をしてもらう」と語り、アメリカ国内で以前から叫ばれてきたラムズフェルド長官の辞任を求める世論を牽制したが、それから間もなくして米軍関係者やその家族らに購読されている専門紙の社説が国防長官の辞任を要求する格好となった。社説は6日に4つの専門紙(アーミー・タイムズ、ネイビー・タイムズ、エアフォース・タイムズ、マリーン・タイムズ)に掲載される予定で、これら4つの週刊紙はUSAトゥディを発行するガネット社が所有している。

アーミー・タイムズ紙のロバート・ホディーム編集長はCNNの取材に対し、中間選挙のわずか1日前に問題の社説が掲載されるのは「全くの偶然だ」と語り、政治的な意図が無い事を強調した。「ラムズフェルド長官はペンタゴンの制服組からも、一般の兵士からも、そして議会や国民からも信用を失った。彼の戦略は失敗に終わり、指導力に問題があることも露呈された。イラクでの失敗の責任は国防長官にあるはずだが、実際に非難の矢面にさらされているのは現場の兵士たちなのだ」。6日に掲載予定の社説では、厳しい言葉によるラムズフェルド批判が展開されている。社説の内容が明らかになった4日、民主党からは早くもブッシュ政権のイラク政策をあらためて批判する声が上がっている。ハリー・レイド上院議員(ネバダ州)は声明を発表し、今回の社説の内容が正しいと主張するとともに、ラムズフェルド国防長官の辞任を声高に求めている。「我々はラムズフェルド長官よりもましなリーダーシップが必要なのです。イラクの米軍部隊は彼らに与えられた任務をきちんとこなしていますが、ブッシュ大統領や共和党議員らは自らに課せられた仕事を行っているとは思えません」。レイド議員は声明の中でそう語っている。

6日のニューヨーク・タイムズ紙が発表した選挙結果予想によると、下院議員選挙では当選確実もしくは優勢な数字として、民主党が214、そして共和党が204となっており、最後まで結果が予想できない議席の数が17となっている。また、今回の選挙で33議席が改選される上院では、当選確実もしくは優勢な数字として、民主党が21、共和党が9、そして最後まで結果がわからないものが3という具合だ。ブッシュ大統領の人気も選挙直前になって下落している。同じく6日にCNNが発表した最新の世論調査では、ブッシュ大統領の支持率は35パーセントにまで下がっており、アンケートに答えた有権者の41パーセントが、「ブッシュ大統領の政策に対する不信感が、今回の選挙での投票に大きく影響するだろう」と回答している。そんなブッシュ大統領の不人気を象徴するニュースが6日にフロリダ州であった。知事選挙が行われているフロリダ州で、ブッシュ大統領は共和党候補の応援演説を予定していたのだが、直前になって候補者側から応援イベントへの参加をキャンセルしたいとの申し出があり、この候補者は別の町で開かれた集会に参加してしまった。

7日朝から始まった中間選挙の投票だが、有権者がブッシュ政権による6年間をジャッジする意味合いも強い今回の選挙では、通常よりもはるかに高い投票率が期待されている。中間選挙の投票が11月の第一月曜日の翌日に行われると連邦議会によって決められたのが1845年の事で、当時のアメリカは今よりも農業に従事する人の割合が高かったため、収穫作業などが全て終了する11月が選ばれた。火曜日となった理由だが、これには幾つかの説があり、一般的によく知られているのが11月1日がカトリックの「諸聖人の日」にあたるため、1日ずらしたのではないかというものだ。1845年当時は火曜日の投票でもそれほど問題は無かったが、現在はこういった平日の投票に無理があるとの声も少なくなく、市民団体などは投票日を休日に指定すべきだと主張している。

全米各地の投票所では朝から多くの有権者が訪れた。サウスカロライナ州サリバンズ・アイランドでは、投票に訪れたマーク・スタンフォード州知事が報道陣の前で投票を行おうとした際、有権者登録カードを州都のコロンビアに置き忘れてしまっていたのに気付き、結局投票を行えずに投票所をあとにするといったハプニングも起きている。スタンフォード知事のハプニングは、横にいた妻のジェニーさんに説教されるハプニングもあったため、笑い話として報じられたが、笑えないハプニングも全米各地で報告されている。全米数百ヶ所の投票所で7日朝、電子投票マシーンの故障や、電子投票システムの使い方を覚えきれなかったスタッフが続出したため、最終的に紙と鉛筆による投票が実施された。オハイオ州クリーブランドの投票所では、投票がスタートしてから10分がたっても、選挙スタッフがタッチスクリーン式の電子投票マシーンをうまく起動させる事ができず、投票に来ていた有権者を呆れさせている。

電子投票システムのトラブルは確認されているだけでも、インディアナ、オハイオ、ミシシッピー、そしてフロリダの4州で発生しており、インディアナ州のマリオン郡では175ヶ所の投票所で紙を使った投票に切り替えている。電子投票システムのトラブルは、その大半が投票所のスタッフが機械を使いこなせないのが原因となっており、インディアナ州デラウェア郡では投票時間の延長も一時考慮されたほどだ。電子投票システムをめぐる賛否両論は以前から存在し、今回の選挙で使用された電子投票マシーンの約半分を製造したディーボールド社(ATM機の製造などでも知られている)は、11月2日に「ハッキング・デモクラシー」というドキュメンタリーの中で電子投票マシーンの安全性が欠如しているとも指摘されている。このドキュメンタリーでは、外部のハッカーによって投票の書き換えを行うのが困難ではない実態が証明されている。

夕方からずっと、中間選挙のニュースをチェックしているんだけど、なぜかこんな日にブリトニー・スピアーズが離婚するというニュースが入ってきた。彼女は2004年にダンサーのケビン・フェダーラインと結婚したんだけど、ヒモのお手本となるような生活を実践してきたフェダーラインは、トークショーなんかで頻繁にネタにされていた。いつ頃からかは忘れたけど、こっちのエンターテーメント・ニュースで彼を「K-Fed」と呼ぶようになり、初めてその名前を聞いてからしばらく、僕は野球選手の話をしてるのかなとしばらく本気で思ったほどだった。メジャーリーグには「A-Rod」や「I-Rod」、さらには「K-Rod」というニックネームを持つ選手もいるので、いきなり「K-Fed」なんて言われても、それが誰なのかよく分からないんですね。少し前に日本のスポーツ新聞が松坂大輔選手の代理人となったスコット・ボラス氏にインタビューを行い、その中でボラス氏が松坂選手を「D-Mat」って呼んでいた。その話をアメリカ人の友人にすると、「野球に関心のない人が聞いたら、きっとマット・デーモンのニックネームと勘違いするだろうね」という答えが返ってきた。来年の今頃、「D-Mat」はアメリカ国内で定着しているのだろうか?少し楽しみになってきました。


写真:オハイオ州クリーブランドで7日、ディーボールド社製の電子投票マシーンの起動に悪戦苦闘する選挙スタッフ (AP通信より)

もうひとつのワールドシリーズ?

2006-11-01 16:15:56 | 政治
ワールドシリーズではセントルイス・カージナルスがデトロイト・タイガースを破ってチャンピオンになったけど、セントルイスがデトロイトを打ち負かしたのは野球だけじゃなかったようだ。民間調査会社のモーガン・キント社が最近発表したところによると、全米371都市の中で最も危険な町としてセントルイスが堂々の首位となっており、デトロイトは僅差で2位につけている(ちなみに3位はマイケル・ムーアのドキュメンタリーでも紹介されたミシガン州フリントで、ワシントンDCは19位だった)。これは犯罪を6つのカテゴリーに分け、それぞれの発生率などを計算して出されたものらしいんだけど、ニューオーリンズは今回の調査には含まれなかったそう(この調査は今回で13回目となる)。ちなみに、全米一安全な町にはニュージャージー州ブリック・タウンシップが選ばれていました。ワシントンDCの19位には少し驚いたけど(ワースト3に入ると思ってたので)、たしかに夜のセントルイスって独特の気持ち悪さがあったのも事実。これでも、初めて訪れた20年前よりは絶対にマシになったと思うんだけど…。さて、今日は中間選挙直前になって民主党のケリー議員による発言が問題になったというニュースを。

7日の中間選挙を前にして、アメリカ国内では民主党と共和党の関係者らが、演説やテレビ広告の中で対立候補や政党を罵倒する、いわゆる「ネガティブ・キャンペーン」が活発化している。2004年の大統領選挙で民主党から出馬したジョン・ケリー上院議員は30日、カリフォルニア州パサデナの市立大学で講演を行い、ブッシュ政権のイラク政策を厳しく批判したが、共和党はその際に使われた表現が「イラクの米兵を侮辱するもの」と抗議。ブッシュ政権からのクレームに対して「米兵ではなく、ブッシュ大統領に対しての皮肉だった」と主張するケリー議員と共和党との間で、31日の朝から激しい中傷合戦が展開されている。30日にパサデナ市立大学で生徒達を前に講演を行ったケリー議員は、「教育についても言わせてください。とにかくしっかりと勉強する事で、将来必ずその努力が報われるのです。もし今努力しなければ、あなた方はイラクに送られますからね」と語っている。

政治関係の世論調査で知られるゾルビー社は26日、10月後半にロイター通信と共同で実施した調査の結果を発表し、有権者の44パーセントが7日の中間選挙では民主党に投票すると答えたと発表している。同じ調査で共和党を支持した有権者は33パーセントにとどまり、選挙直前になって国民の間で共和党離れが加速している実態が明らかになった形だ。ゾルビー社の代表はAFP通信の取材に対し、7日の選挙で民主党が上院と下院の両方で過半数を制するのは困難ではないと語っている。民主党の躍進が期待される今回の中間選挙だが、ケリー議員の発言がどのような結果をもたらすかは不明だ。ホワイトハウスのトニー・スノー報道官は31日、「ケリー議員は兵士だけではなく、その家族にもきちんと謝罪すべきです。これは間違いなく侮辱なのですから」と語り、30日の発言を厳しく批判した。ケリー議員は31日にシアトルで記者会見を開き、「ブッシュ大統領や、崩壊した彼の政策に対しての批判について謝罪するつもりはない」とコメントしている。

ケリー議員の共和党関係者への批判はさらに続き、過去に例を見ない激しさでブッシュ政権や共和党を糾弾している。「何人もの卑劣な共和党議員が政策について何も語らず、他人の揚足取りばかり行う今の状態にうんざりしています。軍隊経験のない人たちが、実際に米軍兵士として戦った者についての嘘をつくなど、本当に吐き気がします」。ケリー議員はそうコメントした。ケリー議員の発言に対しては、民主党内部からも反発の声が上がっており、ある民主党議員はCNNの取材に、「選挙が終わるまでは、とにかく黙っていてほしい」と不満をもらしている。AP通信は31日、アメリカ国内の選挙で定番のイベントとなった「ネガティブキャンペーン」について報じており、今回の中間選挙で総額1億6000万ドルが選挙CMに使われ、その約9割が相手候補者を中傷する内容だったと指摘している。

少し前に「ハードボール」という野球映画をDVDで見る機会があった。キアヌー・リーブスがシカゴのプロジェクトでクラス黒人の子供達に野球をコーチするという話なんだけど、作品は「がんばれ、ベアーズ!」と「デンジャラス・マインズ」を足して2で割ったような内容で、映画のクライマックスでは本当に涙が出そうになるほどだった(この映画、日本では「陽だまりのグランド」というタイトルだったらしいけど、なぜそんな邦題にしたのだろうか?)。この映画を見たあとで、数年前にラジオのニュースで紹介した黒人コミュニティ内における深刻な野球離れの話を思い出した。全米の野球用グランドの約9割が郊外の住宅地に作られているため、都市部に住む割合の高い黒人層が野球を実際にプレーすることが難しい環境になっている。野球の代わりにアメフトやバスケットボールが人気スポーツとなったんだけど(これは施設の問題だけではなく、それぞれのスポーツがマーケティング戦略に力を入れたためでもあるけれど)、オジー・スミスやダリル・ストロベリーといった黒人の名選手が続々と輩出された時代はもう来ないのだろうか?今年の日米野球で注目を集めるライアン・ハワードはセントルイス出身。彼のような選手がこれからも出てくる事を期待したい。


写真:30日にカリフォルニア州で演説を行った民主党のジョン・ケリー上院議員 (AP通信より)