IPSO FACTO

アメリカの首都ワシントンで活動するジャーナリストの独り言を活字化してみました。気軽に読んでください。

ニューオーリンズの公立学校、今週から新学年がスタート

2006-08-09 14:45:01 | ハリケーン「カトリーナ」関連
まだ「マイアミ・バイス」さえ見ていないのに、楽しみな映画が10月に公開されるので、最初にそれを少しだけ紹介しておきます。マーティン・スコセッシ監督の最新作「ザ・デパーテッド」はボストンのアイリッシュ・マフィアと警察のおとり捜査官の活動をテーマにした作品で、少し前に映画のトレイラーを見る機会があったんだけど、アイリッシュ・マフィアのボスは実在の人物(サウス・ボストンに住んでいたら誰でも知ってるホワイティ・バルガー)をベースにしているのかなと思った。どうもスコセッシ監督は全ての撮影をサウス・ボストン周辺で行いたかったらしいんだけど、資金的な問題(映画プロダクションに対する税率が、マサチューセッツ州は高いらしい)で約半分の撮影をニューヨークで行ったんだとか…。主役のレオナルド・ディカプリオだけど、やっぱりハードボイルドな役をこなすのは難しそう。パリス・ヒルトンがどう頑張ってもボンドガールにはなれないように、ディカプリオのハードボイルド役にも違和感を感じてしまう。なんだかんだ言っても、必ず見に行こうと思ってます。なん、元ドルチェスターっ子なので。さて、今日はニューオーリンズで公立学校が新学年を迎えたというニュースを。

AP通信は7日、ハリケーン「カトリーナ」で大きな被害を受けたニューオーリンズ市内で一部の公立学校が再開し、8つの学校で新学年がスタートしたと報じた。7日の学校再開に姿を見せた児童は約4000人で、昨年のハリケーン前に市内の公立学校に通っていた児童の数は約6万人だった。市側は9月中旬までに40校以上の再開を計画しており、最終的に3万人程度の児童が学校に戻ると考えられている。市側の計画とは対照的に、州政府は9月中旬を目処とした学校再開に難色を示しており、複数の州政府職員はAP通信の取材に対し、十分な数の教員を確保できていない事が大きな問題となっていると明かした。また、ある公立学校では9月7日に学校の再開を予定していたが、最近の大雨によって浸水が再び発生し、学校再開時期の延期を余儀なくされている。

問題はほかにもあり、ニューオーリンズ市内の学区で学校運営を行える責任者が激減したため、公立学校を一時的にチャータースクール(税補助は受けるが、公的な教育規制を受けず、市などから独立した団体が運営する)にすべきとの声もあがっている。すでにいくつかのチャータースクール運営団体は市内の公立学校運営を委託されているが、それぞれの団体によって新学期の開始時期や登録方法などが異なるため、保護者からは「ややこしい」と苦情も出ている。ハリケーン後に作られた規定では、ニューオーリンズ市内に住む児童は(住所に関係なく)好きな公立学校を選べ、基本的には新しい学校への入学は先着順となっている。また、生徒数によって州政府から各学校に振り分けられる助成金の額も大きく異なる。5日には市内のアリーナで入学・転入に関するセミナーが開かれ、多くの家族が姿を見せたが、現在のシステムに戸惑いを隠せない保護者も少なくなかったようだ。

保護者から不満の声もあがる中、ルイジアナ州小中学校教育委員会のレスリー・ジェイコブズ氏はAP通信の取材に対し、「問題は山積みだが、今のシステムをモデルケースとして全国に紹介したい」とコメントした。しかし、半ば見切り発車的な形で学校が再開される事を疑問視する教育関係者もいる。ニューオーリンズ市教職員組合のブレンダ・ミッチェル氏は、カトリーナ後に市側が教員の補充や学校再開支援をほとんど行わなかったと批判する。また、一部の学校がチャータースクールとして運営されるため、以前からそこで働いていた職員が解雇されるケースも発生している。カトリーナ後にニューオーリンズ市内で始まった「教育改革」は賛否両論だが、被災前のニューオーリンズ市内の公立教育システムに全米最悪という厳しい評価が下されていたのも事実だ。教育予算は常に赤字で、予算の使い込みなどが頻繁に発生したため、警察による捜査も行われたほどだった。

ドイツの友人から雑誌「シュピーゲル」に書かれた記事(英訳版)のリンクを送ってもらった。さすがに和訳する体力は無いので、興味のある方はぜひ読んでみて下さい(記事)。昨日の夜、ラジオのレポートの中で少しだけアメリカ国内におけるイスラエル・レバノン問題の報道について触れたんだけど、客観的に見てもやはりアメリカ国内の報道はすごくイスラエルよりと言わざるをえない。CNNなんて数ヶ月前までイスラエル系ロビー団体のCMを流していたんだし、アンカーのウォルフ・ブリッツァーはワシントンのイスラエル系ロビー団体やエルサレム・ポスト紙に勤務した経験のある人物だ。国内ニュースを見てても、ユダヤ系アメリカ人のコメントなどは頻繁に報じられているけど、レバノン系やその他のアラブ系アメリカ人の意見を耳にする機会は少ない。そう思っていたら、「外国の」報道機関であるBBCがミシガン州に多く住むレバノン系アメリカ人コミュニティの様子を報じていた。もともとヒズボラに対してあまりいいイメージを持っていなかったレバノン系アメリカ人の間でも、イスラエルによる攻撃が始まってからは、心情的な理由からヒズボラを支持する人が増えているらしい。アメリカ国内でこういったマイノリティの声を拾っているのはエスニック・プレスのみで、外国メディアの報道によって初めてアメリカのニュースを知る場合があるのも事実だ。


写真:ニューオーリンズ市内のフィッシャー小学校で新学期初日を迎えた子供たち (AP通信より)


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