「ブラック・カルチャー観察日記 黒人と家族になってわかったこと」。
アフリカ系アメリカ人と結婚した日本女性による異文化エッセイだ。
逆差別になりかねないが、「黒人」という言葉に身構えてしまう。
むかし給食に黒いチョコクリームの入った透明な小袋が出たが、
小袋に耳輪をした人の横顔が描かれ「黒人」と書いてあったのだ。
おいおい、アイデアは確かに面白いが、これってどうなの?
子供心にもヤバそうだと感じて以来「黒人」には複雑な思いがある。
ではブラザーならいいのかアフロはどうなんだステレオタイプは
差別の始まりではないか?・・かように人種問題は根が深い。
そんなわけで、ちょっとひき気味で手にとった本書だが
読み始めたらとまらない!平易な文体でサクサク読めるし、
異文化に優劣をつけないフラットな目線に好感が持てる。
独特の濃ゆい親戚関係や、白人社会への複雑な態度。
油っこく砂糖たっぷりの食べ物と社会問題の数々。
音楽とは切っても切れない関係であることから
ブラックミュージックへの言及も多くなされている。
例えば「エボニーアンドアイボリー」は黒人にウケが悪く
「ブラックオアホワイト」は人気だというから興味深い。
前者はコミカル(=バカバカしい)すぎてシラけるらしいが
当事者以外には「いい曲だ」と世界で人気を博したそうだ。
いっぽう「ブラックオアホワイト」は黒か白か問わない、
と歌い、”センスの差”で黒人社会にも人気だそう。
また、著者の夫は白人学校育ち。音楽であれ
人間関係であれ黒でも白でもよいものはよい、
という感覚なので、黒人社会では変人扱いだという。
頭は悪いほうがカッコイイ(クール)から勉強せず、
うっかり成績がよいと「白人みたい」とバカにされる。
だから成績優秀でも周りと同調するためバカになる。
自分のコミュニティから一歩出る勇気を持たず、
中の価値観でしか物を見ないため文句が多い。
それは彼らの歴史からくる歪んだ価値観ゆえでもある、
と著者はいい、問題の複雑さを浮き彫りにしている。
しかし同時に黒人特有の、というよりどの社会にも
通ずるローカルコミュニティの問題でもあると思う。
皆と同じでないといけないとする同調圧力。
そして自分のコミュニティにしがみつく人々。
日本にも全く同じ構造があり、なじめない人は
地域社会を飛び出たり日本を離れたりする。
本著のブラックコミュニティと何の違いがあるだろう?
でも、これこそが人間社会なのかもしれない。
黒人社会を垣間見るつもりで読んだ本は図らずも
自身の所属する社会を振り返るきっかけとなった。
ブラックミュージック好きにもオススメの良著です!