ぶらぶら★アフリック

アフリカ・プロモーター、ンボテ★飯村がお送りする100%アフリカ仏族ぶらぶらトーク!

史上最悪のフライト(3)〜見捨てられた乗客たち

2017-02-26 14:00:28 | アフリカ紀行
ンボテが経験した史上最悪級のフライト経験、第3話。

前回までのストーリーをまだお読みでない方はこちら↓
第1話 悪夢の序章
第2話 灼熱の暗黒フライト

波乱の中、アクラ行きHF504便が動き出したのは深夜1時半を回った頃だった。灼熱の中、機内薄暗い飛行機はアビジャン空港を後にした。そしてレベルフライトに入る。やれやれ。みんなここまでのフラストレーションにハイになっていて、眠りにつく人はほとんどいない。

客室乗務員のアナウンスは一字一句マニュアルどおり。「エール・コートジボワール、スエットレ、トレ、ボン、ヴォル(コートジボワール航空より、お客様に、快適なフライトを。)」

「快適なフライトをだと?この機内で。」
「Quel bon vol, dit donc??(どんな快適なご搭乗を言ってるんだい?!)」

ガーナ行きのフライトということもあり、フランス語、英語、アカン系のローカル言語、入り乱れての大苦情大会で盛り上がる。

わずか300キロ程度の工程、そろそろ降下体制かと思いきや、再び機内アナウンス。「メダム・エ・メシュー、こちらはコクピットから機長です。アクラの管制塔から返事がないと思ったら、空港はもうクローズしちゃってました。このままアクラには着陸できないので、アビジャンに引き返します。」

機内は騒然。
「え?なんだって?!」
「ご冗談を。」
「なんということだ?!」
「もうアクラ上空じゃないか!」
「そんなこと出発前にわからなかったのか?!」

飛行機は方向を変え、再びアビジャン空港へ。そして激しい乱気流の中、着陸。

真っ暗で灼熱の機内。しかしターミナルへの連絡バスは来ない。どうやらこちらの空港も眠りについたようだ。

しばらくすると一台だけバスがやってきた。ここにぎゅうぎゅうに乗り込み、また灼熱。ようやくたどり着いたイミグレーションには、当然検疫も、入国係員もいない。椅子も空調もないホールに放置される乗客たち。

そこへやってきたエール・コートジボワールの係員はたった二人。

「何をやっているんだ?!」
「飛行機は出るのかでないのか?」
「こんな深夜にどうしろというんだ!」
「せめてここから出して!」

係員を取り囲み攻め立てる乗客。



とりあえずトランジットパスとなるカードが配られる。そのカードがなんと、、、


いにしえのAir Afriqueマークではないかっ!これは貴重だ。懐かしい、なんて浸っている心境ではない。というか、あの頃から何も変わっちゃいない。サービスも信頼性も。せっかくのノスタルジーも皮肉に見えてくる。

「次のフライトはどうなるんだ?」
「明日の夜21時の便はあります。」
「なに言ってんだ?!当たり前だ。」
「遅すぎるわ!」
「しかもその時間の飛行機に俺たちは乗れなかったんだぞ!!」
「陸路で行く方がマシだ!」

何人かの乗客は疲れ果てて個別交渉を始める。
「もう帰るから荷物を出してくれ。フライトがわかったら電話をしてくれ。」

怒る乗客。
「おいおい、こんなにたくさん困っている乗客がいるのに、勝手な対応はしないでくれ!情報をみんなに開示しろ!一体どうなっているんだ、俺たちにどうしろというんだ。」

ハイテンションの混乱が続く中、ターンテーブルに荷物が流れているとの情報が。乗客たちは入国手続きカウンターのドアを勝手にこじ開け、バゲージクレームに進む。

荷物をピックアップしていると、航空会社の係員が外に逃れようとしているのが発見される。

執拗についていく乗客。
「どこいくんだ?!」
「逃げないで!」

乗客たちは係員を取り囲みながら空港の外へ。夜も更け、すでに時計の針は3時近くになっている。人気ない空港には、銃をもった警備がチラホラいるだけだ。そこに突如として現れた騒動。



「フライトはどうなるんだ?今晩はどこにいろというんだ?!オレはモンロビアから来てるんだ。」
「私はブルキナファソからよ。帰るところがないわ。」

路上に見捨てられた乗客たち。宿も交通手段もない。

「俺のせいじゃない」と係員。気持ちはわかるが、この状況でそれを言ってはいけない。

「なんだと?!お前じゃ話にならん。上司を呼べ!」
「ボスはどこだ?電話しろ!」
「こんな航空会社は潰れてしまえ。」
「メディアに書き立てるぞ!」

プレッシャーの中電話をかけまくる係員。そしてさらに40分ほどが経過。

「ホテルを用意しました。でもとりあえず20人だけです。」客はざっと80人ほど。そこについたマイクロバスに荷物を持った客が殺到。

フライトがどうなるかもわからないが、どうやら今飛ぶことはないらしい。空港も眠りについている。ンボテは、まともな対応は期待できない事を知りつつ、係員に一応連絡先を告げ、自宅に帰ることにした。どうせ連絡が来ることはない。朝になったら、また来よう。

空港には4台だけ、オレンジタクシーが残っていた。「ダンナ、深夜にまいどあり。こんな状況だ、夜は高いぞ。」

きたきた。こちらも逆手にとる。
「Cocody sudまで、いくらならいく?一番条件のいいのに乗るよ。」
セリの結果、おじいさん運転手が7,000フランで落札。高いけど、深夜だし、他にチョイスがない。

乗車すると運転手が聞いてきた。
「一体なんの騒ぎだったんだい?」
コトの顛末を話すと運転手、
「コートジボワールはいつもこうさ。結局、みんな泣き寝入り。」


家に着くと、タクシーはおきまりの後出しジャンケン、再交渉。
「ダンナ、深夜だし、救ってあげたんだから10,000フランにしてほしい。」

あーあ、いい運転手だったし、黙ってれば少しチップ弾んであげたのに。
「ダーメ、入札完了だよ。」
「ちくしょう!」

時間はもう4時を過ぎていた。史上最悪級のフライト事件、顛末はこうして翌朝に続くのだった。

(つづく)

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2 コメント

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本当ですか!? (ぶち)
2017-02-27 06:44:44
こんにちは。ブルキナファソのぶちさんです。本当ですか?!笑えないけれど、笑えます。でも、自分におこったらシャレにならないです。
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Re:本当ですか!? (ンボテ)
2017-03-07 07:26:06
ぶちねえさん、いままで色々な目にあってますが笑、今回は結構やられた方です笑。また次が楽しみです?!
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