勇者様の雑記帳

ゲーム暦40ウン年の勇者様の足跡が書き散らす日記。ゲームや映画、読んだ本などについて、好き勝手に書いています。

『月刊住職』~専門誌の世界~

2024-03-14 05:44:27 | 書籍
以前から、新聞の広告欄に時折掲載される、『月刊住職』という雑誌が気になって仕方がない。

タイトルからすると、お寺の住職の皆さん向けの情報誌といった位置づけなのだろうが、
それにしても住職さんが求める情報というのは何なのだろうか。

普通、専門誌と言えば、その道に関わる、興味を持っている人たちが共通して必要とする情報を提供するものだが、
日本の仏教と言えば、「十三宗五十六派」と言われるように、
教義や信仰対象の違いから、様々な派閥が形成されており、
いずれかに偏った記事を載せてしまうと、その他の派閥の皆さんから総スカンを食らうこと必至である。
その辺りは容易に想像できるだけに、では『月刊住職』では一体どんな情報を提供しているのか、
これが気になっているところだ。

さすがに手に入れるところまではなかなか辿り着けないまま、
ネット上でなんとなく情報を探してみたのだが、
予想通りというか、専門誌と呼ばれる雑誌を取り上げているWeb情報の多くで、
『月刊住職』はかなり上位の取り扱いを受けている、皆考えることは一緒ということか。
雑誌の内容についても色々とコメントされていたが、例えば楽天ニュースの記事、
「狭い!深い!「専門誌」のディープな世界特集」

狭い!深い!「専門誌」のディープな世界特集|Infoseekニュース

雑誌の販売数が激減している昨今ですが、世に専門職とマニアのいる限り、専門誌の種は尽きまじ…とばかりに様々なユニークでマニアックな専門誌があるので紹介します。その内...

Infoseekニュース

 

では、こんな読者コメントが。
「『月刊住職』は仏教界の“ゴシップ誌”ですよ。下世話な面白さがあるんです。
大半の読者の目当ては、やっぱり他の寺の不祥事。名刹のスキャンダルが出たときは、
寺内で回し読みしていますよ。檀家さんの前では、おおっぴらには読めない雑誌です(笑い)」
。。。う~ん、気になるなぁ。。。仏教界のゴシップ誌って一体。。。

他にも、
「『首都圏開教のための大霊園の利権』『寺口座で誘う開運祈祷は詐欺か』『お布施の搾取と行方』など、何やら物騒なタイトルがズラリと並ぶ。」
「詐欺、DVなど寺社に関する事件・事故を綿密に調査し、“スクープ記事”も少なくない。また、僧侶と貧困に関するルポや婚活などの幅広い範囲の取材記事も。さらには「ポケモンGO」の対策もいち早く取り上げるなど、フットワークも軽い。」
等、俺様ホイホイ的な記事が満載で、どこかでひっかかってしまいそうだ。

こうやって『月刊住職』の情報を探していると、
他にも強烈にマニアックな雑誌が色々と散見するわけで、
例えば世の中にはこんな雑誌があるのである。
 『愛鳩の友』『雪合戦マガジン』『月刊錦鯉』『愛石』etc...
雑誌のタイトルで、どんなジャンルの雑誌であるのかはなんとなく想像がつくが、
特に『雪合戦マガジン』は、この恐ろしくニッチなジャンルで専門誌が成り立っていること自体が信じられない。
いや、実はものすごい競技人口を抱えているとか?
『鳩』や『石』も、雑誌タイトルに『愛』という感じが入っている辺り、
とてもコアな趣味に特化している雰囲気に溢れていて興味が尽きない。
本屋で見かけたら、一度中身を拝見してみたい。



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『NEON NEON』(ニホンノネオン研究会 中村治著)

2024-03-13 05:13:09 | 書籍
先日、『NEON NEON』という本を購入した。


出版は、「ニホンノネオン研究会」という団体(?)によるもので、
日本のネオンを取り巻く環境の研究を目的として2019年に結成された、、らしい。
総ページ数が600頁を超える、かなり分厚い本で、全体の8~9割が東京エリアのネオンの写真であり、
文字の説明がないのでどこにあるのかはサッパリ分からないが、
東京のどこかにあるであろう、ネオン管による電飾写真をこれでもかとばかり大量に掲載している。

残りはネオン管の職人さんや、ネオンの製造メーカーへのインタビューという、
一つの方向に強烈に特化した内容だ。

夜の薄暗い街角に、薄ぼんやりと灯る、色とりどりのネオンライトの写真が延々と続く構成は、
ネオン好きには気が済むまでネオン管を見続けることが出来る、それはそれはたまらない本で、
世の中にネオンが好きな人がどれくらいいるかは分からないが、
研究会が立ち上がるぐらいなので、それなりにいらっしゃるのだろうと推察される。

俺様はというと、ネオン管の灯りが大好きだ。
好きになったのは中高生の頃で、
よく雑誌や写真の片隅に載っていたネオン管のちょっと怪しいキラメキが、
子ども心にはなにやら大人の世界に繋がる魔法のようであり、
感覚的に「カッコイイ!」と思わせるものがあった。
何しろ当時の俺様の実家は、3方を田んぼに囲まれ、
唯一面している道路は、夜になると街灯もほとんどないような田舎であり、
夜に光るものと言えば月か星ぐらいのもので、
これでは駄目だ、都会に出てネオンライトを手に入れないと、という、
向上心だが願望だがよく分からない情熱を抱いて、
大学に進学する時期を待っていた。

残念なことには、折角ネオンが身近な都会に出てきたものの、
その後のLEDの発達によって、ネオン管の需要は急激に減少してしまい、
気が付けば、昔憧れていたネオン管の輝きは、近頃はあまり見かけなくなってしまった。

本で取り上げられている、ネオン管職人の横山氏は、この道33年のベテランで、
新入社員としてアオイネオン社に入社してからの人生は、まさに職人の世界であり、
作り出されるネオン管は、単なる照明器具というより美しい工芸品の観がある。
ネオン管に封入するガスの製造メーカーの確保も、今は大きな課題となっているそうだが、
LEDには出せない、あのネオン独特の輝き方が、いつまでも残ってほしいと思う。








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『安田均のゲーム紀行1950-2020』を読んで②~エルフとかドワーフとか~

2024-03-01 05:06:05 | 書籍
前回の続きである。

俺様にとって、安田氏とグループSNEへの思い入れが強いのは、
1986年から1990年あたりまでの、
テーブルトークRPGやコンピュータゲームにおけるグループSNEの活動の広がりが大きく影響している。
特に、パソコン雑誌『コンプティーク』における『ロードス島戦記』のリプレイと、その後の小説化やアニメ化等のメディア展開、

それと、1987年にハミングバード社から発売されたPC88用ゲーム『ラプラスの魔』が印象に残っている。

『ロードス島戦記』については、パソコン雑誌上でテーブルトークゲームのリプレイを掲載してしまおうという斬新な試みで、
架空の島であるロードス島を舞台とした冒険譚を、グループSNEのメンバーが気ままにプレイしているのがとても楽しそうであり、
当時俺様が在籍していた高校の化学部で大ハヤリして、実験そっちのけで放課後にテーブルトークRPGを遊ぶようになってしまい、
担当の先生に怒られたというのは、今では思い出話である。

ちなみにこのリプレイにはエルフのディードリットというキャラクターがいて、
出渕裕氏の描くイラストがとても可愛らしかったこともあって人気を博した。
最近になっても、彼女を主役にしたアクションゲームが発売されていたりして、根強い人気があるなぁというところだが、
そう考えると、そもそも俺様が持っているエルフやらドワーフやらのイメージは、
一体どのあたりから生まれてきてるんだろうという素朴な疑問が湧いてくる。
エルフといえば、「華奢、美形、耳がとんがってる」
ドワーフといえば、「がっしり、背は低め、髭」
といったあたりが主なイメージで、
「ロードス島戦記」に登場するエルフのディードリットや、ドワーフのギムは、確かにそんなかんじのキャラクターである。
じゃぁ、この作品に触れたことで俺様のイメージが出来上がったんだろうか?
もうちょっと前から知ってたんじゃないだろうか。
まったく個人的なことだが、もうちょっと遡ってみよう。

もともとこういった人間型の種族は、西欧の民間伝承の中に頻繁に登場するが、
昔話に出てくるエルフやドワーフは、どちらかというと妖精の類で、
見た目もディードリットたちとはだいぶ異なっている。
トールキンの『指輪物語』にも登場するが、そもそも俺様はこの時代に『指輪物語』を読んでいないので、
そのあたりでも知り様がないところだ。

可能性があるのはゲームかファンタジー小説で、
ゲームというとまず思い当たるのが、1985年にPC88用が発売された「ウィザードリィ」である。

迷宮探索型RPGの超古典である「ウィザードリィ」については、俺様も当時延々とプレイさせられたゲームだが、
この中にもプレイヤーが作成するキャラクターとして、人間、エルフ、ドワーフ、ホビット、ノームの5種族が登場する。
ゲーム中にはキャラクターのグラフィックは一切表示されないが、
恐らくゲームのマニュアルには、各種族の説明が載っていたはずで、
Wikiの「ウィザードリィ」の項にはこんな解説が載っている。
「エルフ・・・
 美しい外見を持つ種族。知恵があり信仰に篤(あつ)い上に身軽だが、脆弱(ぜいじゃく)で運に欠ける。
 魔術師や僧侶に高い適性があるが、戦士についての適性は低い。」
「ドワーフ・・・
 背丈は低いが、筋肉質の種族。
 力や生命力に優れ、信仰心にも素晴らしい素質を持つが、鈍重で運が低い。
 戦士・僧侶などに向いているが、盗賊の適性はない。」
うーん、近いなぁ、近いけどエルフの耳の説明はないなぁ、、、

じゃぁ小説なんだろうか、令和の時代はファンタジー小説が氾濫しているけれども、
「ロードス島戦記」自体、ファンタジー小説が日本に広まったきっかけとも言われていて、
1つ思い当たるのは、同級生の静井君に貸してもらったアメリカ産のファンタジー小説「ドラゴンランス戦記」か。

こちらもテーブルトークRPG「アドバンスト ダンジョンズ&ドラゴンズ」の設定を使った長編小説で、
ドラゴン軍の侵略と戦う、ハーフエルフのタニスたちの冒険譚を描いた作品である。超面白い、個人的には今からでも映画化してほしい。
・・・それはそれとして、この作品にエルフのローラナや、ドワーフのフリントといった魅力的なキャラクターが登場する。
日本版の第1巻「廃都の黒竜」が発売されたのが1987年、丁度「ロードス島戦記」が人気を博したのと同じ頃で、
ひょっとしたらこっちのイメージかもしれないなぁ。。

結局よく分からなかったが、
俺様がディードリット派なのかローラナ派なのかと問われると、
それはまぁ、ディードリット派ということで。



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『安田均のゲーム紀行1950-2020』を読んで

2024-02-26 23:44:56 | 書籍
久しぶりに図書館へ行って何冊か本を借りたのだけれども、
その中に『安田均のゲーム紀行文1950-2020』(新紀元社発行)というのがあった。


著者の安田均氏は、ゲームクリエーター集団である『グループSNE』の創設者で、
俺様世代にとっては、名前を見ただけで郷愁溢れまくりの人だ。
この本は、大まかに2部構成になっていて、
全体の4割程が安田氏とグループSNEのこれまでたどった経緯を描き、
残りの6割は氏がお勧めするアナログゲーム100選(正確には101選)が紹介されている。
この100選も、1969年の『アクワイア』から始まり、
世界で初めてのボードゲーム版RPGである『D&D』や、
一世を風靡して、気が付けば跡形もなく消えてしまったゲームブックの嚆矢である『火吹山の魔法使い』、
俺様も一時ハマりまくった『マジック・ザ・ギャザリング』等々、
いわゆるボードゲームに限定せず、
これまでに安田氏が触れてきた様々なアナログゲームが紹介されいて、とても面白い。
面白いんだが、それはそれとして、俺様としては前半がいちいち記憶に触れる内容で、
「そうだったなぁ、そうか~、そうだったのか~」と、なんだか感慨にふけりながら読んでしまった。

本の内容が俺様の記憶とクロスしてくるのは、1984年のゲームブックの流行あたりからで、
紹介されている『火吹山の魔法使い』は、イギリス発の『ファイティング・ファンタジー』シリーズの第1作にあたる。

昨年あたりに一度復刊されて、俺様も思わす衝動買いしてしまったのだが、
このゲームブックというスタイルは、パラグラフと呼ばれる文章のパーツが本の中にバラバラに配置されていて、
読み手は各パラグラフの最後に書かれている選択肢を見て、次に読むパラグラフを選択し、ストーリーを読み進めていくことになる。
例えば巨大なサンド・ワームがいる部屋に入り込んで、一刻も早く脱出したい。
でも、部屋の奥には何かが入っていそうな真鍮の箱が転がっている。
箱を回収するなら〇〇番へ、部屋から出て先へ進みたいなら〇〇番へ、、、といった具合だ。
まだコンピューターゲームが本格化する前の時代で、
俺様もこの第1作から、14作目の『恐怖の神殿』あたりまでは、
新作が出る度に買って帰っては、夢中になって遊んでいた。
頻繁にサイコロを振らされる本なので、家族は何をやってんだと思っただろうが。

そんなゲームブックの流行も2,3年もすると、
コンピューターゲームの興隆に伴ってあっという間に下火になってしまい、
俺様も高校に入って貯金をはたいてパソコンを買ってからは、
全く見向きもしなくなってしまった。
安田氏は既に社会人で、仕事をする人間の立場からこのあたりの移り変わりを見ていて、
1987年にグループSNEを立ち上げ、少人数のクリエーター集団として、
以後長期間に渡り、日本におけるアナログ&デジタルゲームの発展に影響を与えていくことになる。
そのあたりも本の中で時系列に沿って色々と興味深い話がされているんだけれども、
それはまたそのうちということで。









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水口画伯を偲んで

2024-02-04 13:50:48 | 書籍
『EYE-COM』や『週刊アスキー』等のパソコン雑誌に、
『カオスだもんね』というレポート漫画を連載されていた水口幸広画伯が、
昨年5月に亡くなられていたということを、最近になって知った。

担当の編集者と一緒に、毎回様々な施設へ取材に行っては
独特の切り口で感想を述べたり、自分自身で体験したりと、4頁構成ながら毎回飽きさせない内容で、
大学時代や、社会人になってもしばらくは、雑誌や単行本を買っては読みふけっていた。


訃報を知り、久しぶりに『カオスだもんね』第1巻を読み返してみたが、
いや、、ホントに懐かしい。
20代の頃の記憶まで一緒に振り返ってしまった。

1994年に第1版が発行されているので、ちょうど30年前のレポートになる。
10年ひと昔というが、30年も経つとどうなっているのか、
興味本位で少し調べてみた

・『AURA(あうら)Mind Galleay」(第9回:テクノストレス解消法)
 「ハイテク」を使ったストレス解消法。色々調べてみたが、情報らしい情報は見当たらず
・『ナムコ・ワンダーエッグ』(第15回:淡々と遊びました)
 東京・二子玉川にあった、ナムコ運営のテーマパーク。2000年の年末に閉園。
・『横浜こども科学館』(第22回:こども科学館で大暴れ!?)
 現在も「はまぎん こども宇宙科学館」として運営中
・『女装クラブ・エリザベス』(第24回:憧れのボディコンに挑戦!!)
 2020年に運営会社であったアント商事が廃業し、閉店
・『牛丼 乳の屋』(第27回:これも仕事なんだけど・・・けど?)
 大阪にあった、トップレスの女性が1万円の牛丼を提供するお店。2000年代前半には既に消えていたようだ。
・『カジノGIGO』(第28回:狙え!一攫千金)
 現在も複数店舗が運営中らしい
・『エルフ』(第30回:美少女ソフトの裏側)
 当時売れまくっていた美少女ソフトメーカー『エルフ』の取材。『エルフ』は2017年に完全解散。
・『多摩テック』(第31回:多摩テックで猛レース)
 日野市にあったモータースポーツをテーマにした遊園地。2009年に施設閉鎖。
・『ガスの科学館』(第33回:ガスを科学する!!)
 江東区豊洲に現存
・『サッポロビール千葉工場』(第37回:ビール工場でビールを飲もう!)
 千葉県船橋市にあるビール工場。レポートにあった工場見学は2023年に終了
・『江戸東京博物館』(第41回:お江戸にタイムスリップ?)
 東京墨田区にある都立博物館。現在も運営中だが、2025年まで改装のため休館。
・『新宿TSミュージック』(第43回:新担当、風俗でデビュー)
 歌舞伎町にあったストリップ劇場。2017年に閉館。
・『地震の科学館』(第44回:恐怖の大地震!!)
 東京北区の防災センター。現在も現存。

・・・という状況である。
公の施設が今も存続しているケースが多い一方で、民間事業は軒並み事業終了で、
エンターテインメントを30年も続けるというのは、並大抵のことではないなぁというのがよく分かる。
当時これらの施設を、画伯が時に楽しそうに、時にイヤイヤ紹介してくれたお陰で、
90年代にこんなエンタメが人気を集めていたんだなぁ、というのを、今になっても知ることができるのだ。


 
 
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「砂と人類」を読んだ

2023-12-08 05:02:41 | 書籍
砂と人類~いかにして砂が文明を変容させたか~(ヴィンス・バイザー著。草思社文庫)


というわけで、「砂と人類」である。
この本は、皆がどこにでもあると思っている「砂」が、
現代社会にどれほどの影響を及ぼしているのか、
これからどうなっていくのか、をテーマとした本だ。

こういう内容の本は、これまでほとんど目にしたことがなかったので、
かなり興味深く読ませていただいた。

今、周りを見渡すと、
私たちの世界を作り上げている様々な構築物、
住宅、商店、学校、道路、諸々は、
「コンクリート」や「アスファルト」、あるいは「ガラス」によって、その大部分が出来上がっている。
街中だと、それこそ見渡す限りコンクリートに囲まれているといってもいい。

このコンクリートというのは、素晴らしい素材だ。
中に鉄骨を入れて成型することで、
どんな形にも仕上げることが出来るし、安価で、それなりの強度もある。
アスファルトもそうだ。日本中に道路が張り巡らされて、
日夜車や人が往来しているが、
これが成り立つのは、コンクリートやアスファルトの元となる「砂」が、
他の素材と比べて非常に安価に入手できるためだ。

「砂」というのは、それこそどこにでもある。
陸地や海の底、アスファルトを剥がすと、その下には土がある。
いくらでも手に入るし、どんどん使って、どんどん街を作ろう。
・・・というのは、これからも本当に可能なのだろうか?
というのがこの本の投げかけだ。

実は、建築物用のコンクリートに使える砂というのは、
一定の強度を保つため、ある種の形状の砂である必要がある。
サハラ砂漠には大量の砂があるが、アレはコンクリート素材としては不向きで、
実際に使えるのは、川や海の底に溜まっているような、角の取れていない砂に限られる。

世界の文明化が進み、これまで発展途上国とされていた国でも、
どんどん建設が進むようになってきた現在、
素材として使える砂の消費は、すさまじいペースで増えてきており、
もはや地球が雨や風によって作り出す、砂の供給スピードを遥かに上回ってしまっている。
こういうのは、他の資源についても同じことが言えるが、
例えば入手先を太陽光や風にシフトしようとしているエネルギーと違い、
砂は今のところ他に替えが効かない。
というのも、砂以上に安価に、大量に手に入れることのできる素材が、地球上には無いからだ。

ちなみに、砂を含め、人が消費し続けている地球の資源を、
今のレベルで確保し続けるためには、地球がだいたい1個半必要になるらしい。
世界で最ものびのびと暮していそうなアメリカ人と同じレベルで世界中の人が暮らしていこうとすると、
地球4個半ぐらいが相場になる、というのが著者のヴィンス・バイザー氏の意見である。
こういう状況は100年前には意識されなかったし、そうする必要もなかった。
100年後、世界はどう変わっているのだろうか。
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世にも危険な医療の世界史

2023-12-05 21:46:44 | 書籍
世にも危険な医療の世界史(文春文庫)


主に中世以降の医療の歴史を、
治療法別にまとめた本である。

内科医のリディア・ケインと、フリージャーナリストのネイト・ビーダーセンの共著で、
医者の目線とジャーナリストの目線で、
間違いだらけだった昔の医者の治療法を、
どちらかというとユーモラスに紹介している。

全体で400頁を超えるボリュームで、
元素、植物と土、器具、動物、神秘の5項目に分かれているが、
読めば読むほど、我々は20世紀の後半以降に生まれてよかったなぁという事例がてんこ盛りである。

中世~近世の治療法として有名な治療法に、
いわゆる「瀉血(しゃけつ)」というのがある。
当時は、病魔に侵されると、体内の悪い成分が体液に蓄積すると考えられており、
これを体外に放出することで体調が回復すると考えられていた。
このため、安静にしても、薬草を飲んでも治らないと、
血管を切り拓いて血を抜くのである。
現代の医学では、大人は大体体内に4~5リットルの血が流れていて、
このうち1リットル程が失われると命の危険が生じると言われているが、
昔の人たちは病気を治すために一生懸命血を抜いたのである、こわっ

血を抜いて、それでも治らないとさらに血を抜く、
そりゃもう治るはずの患者も死んでしまう訳で、
ちなみにアメリカの初代大統領であるジョージ・ワシントンも、
風邪をこじらせたあげくに血を2.5~4リットルも抜かれて敢え無く昇天したらしい。
1リットル失うと命の危険があるというのに、これはもうたまらんのである。

18世紀~19世紀にかけて活躍したイギリスの詩人バイロン卿も熱病にかかり、
瀉血なんぞやったら余計に体調が悪くなるわ、と散々嫌がったらしいが、
結局は医者に説得されて血を抜かれ、この人もそれが原因で亡くなっている。

まぁ実際のところ、当時の人々にとってはこれが普通の治療法であって、
俺様たちが今、普通だと思っている治療法も、
将来は実はトンデモないことをしていたと笑われるかもしれないが、
医療はそうやって少しずつ進歩しているのだ。
この本はそれを教えてくれる。





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