消防士 兼 旅人の日記

消防署での出来事、ダラダラした日常生活を綴ります。

たられば

2008-03-07 14:46:43 | 消防・救急
前回の出場は5件。件数は平均ちょっと下ぐらいでしたが、夜中に1件ありました。

前回の当番でまたしても1件CPA事案があり、タイトルのように『~たら』『~れば』と思うことがありました。


まだ若い男性の、気分が悪いとの通報。

直近&2番目に近い救急隊が不在のため呼ばれた我が救急隊は、出場から10分かけて到着。

現場到着してみると、顔面チアノーゼ。冷汗、あえぎ呼吸。

観察して総頚動脈が触れないためCPAと判断。消防隊を支援要請。


CPRを行いつつ、除細動(AED、電気ショック)パッドを貼り、VF(※)波形が出たため除細動を実施。

しかし呼吸、波形共に戻らず。CPR継続。

現場で救命センターの医師に特定行為の指示要請と収容依頼をし、器具を用いた気道確保を行う。

支援隊の消防隊員とともに車内収容し、救命センターへ搬送しました。


この間も確かこんなような事があったような…


通報時点では確かに意識はあったが、現場到着してみると意識が無い。

顔面チアノーゼ、冷汗、あえぎ呼吸。年代も同じ。

ただこの間と違ったのは、現場に奥さんがいて、両親がいて、まだ小さな子どももいたこと。


病院を引き揚げる前には、医師が家族を呼んでの死亡確認がなされていました。


もし直近の救急車が出場していたならば、5分かからずに着いた距離。

5分で着いていて、もっと早く除細動ができてたら助かった?

家族がCPRをやっていれば助かった?

直近&2番目に近い救急車は、本当に救急車が必要な事案に出場していた?


本当のことは分かりませんが…。


わずか1週間で、同じ様な事案が2件。

考えさせられますね。


こう言う言い方は変かもしれませんが、仮配属で乗っていた新人職員には良い経験だったのかな?とも思うのです。

CPA事案だって立て続けにあるわけではないですし、除細動をする現場もそんなにありません。私だってこの間が2回目ですし。

これが救急の現場なんだなって、彼は身を持って勉強したと思います。


帰署後もう1件出場があり、その事案は本当にため息の出るタクシー救急でしたけど…。


これでまた近くでCPAや重症事案があったらどうなったのだろうと思ったのでした。



※VF

心室細動(しんしつさいどう)。致死的不整脈であり、心臓が無秩序にブルブル震えている状態。(細動)

電気ショックを与え、細動を取り除くので除細動と言う。

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4 コメント

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なんとも… (けい)
2008-03-07 16:23:39
重い結果になりましたね…

前回のコメントを拝見して、「助からなかったのかな…」とは薄々思っていましたが、こんなに大勢ご家族が居合わせていたという事実に、胸を衝かれました。「持病があったようで」とも書かれていましたが、まるっきりの青天の霹靂じゃなかったのでしょうか?

身近な家族の危急時は、プロでも動転しがちといわれていますが、ご家族がCPRのことを知ってたとしても、頭が真っ白になっちゃったんでしょうか。もしかしたら今ごろ、奥さんや親御さんたちも、ご自身に対して果てることのない「たられば」を突きつけて、苦しみ悲しんでおられるかもしれない、などと考えたりします。

私も何かあると浮き足立っちゃうほうなので、もしいま目の前でオットが倒れて意識不明になっても落ち着いて119したりCPRしたりできるか、ちょっと心もとないです(だからこその、再受講…)


きょうは偶然、お散歩コースにある消防署の前で、初めて救急指令が聞こえて、出場のナマ現場に出くわしました。

いままでは、「誰かわからないけど、無事だといいな」と漠然と思うだけでしたが、最近は、「タクシー代わりじゃないといいけど」とも思ってしまいます。

(知り合いに昔聞いた話ですが、雪の日に友人を呼んで料理をしていたら包丁で指をケガしてしまい、遊びに来ていた友人が「こんな天気だから救急車の方がはやいよ」と勝手に119番してしまったのだとか。到着した救急隊の人は、病院に電話で「指、ついてます!」と連絡していたそうな…)
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辛い現実 (ネコむし)
2008-03-07 17:22:15
つくづくと考えさせられました。
適正利用、普段からの健康管理、応急手当の知識等々…どれも分かっちゃいるけどなかなか現実は…の問題ばかりで。
いつも思うんですけど、こういう重~いケースの後、隊員さん達はどうやってメンタルケアなさってるのかな~と。
それどころじゃない忙しさかもしれませんが
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けいさんへ (ムサシ)
2008-03-07 22:17:41
持っていた病気に対して、ちゃんとかかりつけの病院はあったようなのです。しかし、定期的に通っていなかった様子。

奥さんが言っていたのは、さっきまでは普通だったのに気分が悪いと言い出して、それから動かなくなった、と。

まさか急にそんな風になるとは思わなかったでしょう。


しかし、帰署後に自分でその病気について調べてみたところ、やはり放っておけば生命に関わるような病気でした。


もし定期的に、病院にかかっていれば…って考えてしまうのです。

まだ若かったし、ご両親も健在で子供も小さかった。だからこそ、やっぱりやりきれない思いがするのです。
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ネコむしさんへ (ムサシ)
2008-03-07 22:29:37
こういった現場で起こる、惨事ストレス。

あまり良い言い方では無いですが、『慣れ』です。

職業柄、こう言うことは避けて通れないものですから、仕事なんだと割り切るのも一つの手です。


心がそんなに強くない私は、あまり思い返さないようにすること。時が経って、あぁそういえばそんな事案があったなと、あえてそう思うようにしています。

そんなことがあった当番勤務の明けの日は、疲れててもどこか出かけて気分転換をするようにしています。

助けられなかった命をいつまでも悔いるのではなく、前を向かないとね。


正直どうでもいい理由で呼んだ人たちに対して、この現実を見せてやりたいって思う時があります。

『急』いで『救』う必要がある人たちのために、救急車があるんだよってことを。『急』の必要の無い、無料の病院行きタクシーじゃないんだよってことを。
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