トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

宗教の復讐 その④

2016-10-31 22:10:10 | 読書/ノンフィクション
その①、その②、その③の続き 狂信的な宗教組織が過激化するのにさして時間は要しない。元から政教一体が大原則のユダヤ教、宗教組織員が社会や政治問題に介入してくるのは当然なのだ。宗教に回帰したユダヤ人にとって、唯一神から与えられた神聖なる“約束の地”を1平方㎝でも汚らわしいゴイにわたすのは、耐え難い屈辱だけでなく冒涜行為なのだ。彼らの中にはテロリズムに走る者も出てくる。 198 . . . 本文を読む

宗教の復讐 その③

2016-10-30 21:10:21 | 読書/ノンフィクション
その①、その②の続き シモン・フルヴィッツの著作『ユダヤ人であること』が出版された同年、同じくユダヤ系アメリカ人マイヤー・シラーもまた『帰路』という著書を発表している。近代の行き詰まりの起源は啓蒙時代にあると言い、それをこう断定した。「人間が神中心の世界から固いもやい綱を断ち切り、世俗イデオロギーの潮流によって、冷酷にも居心地の悪い懐疑の海に引きづられていった時代……以 . . . 本文を読む

宗教の復讐 その②

2016-10-27 21:40:11 | 読書/ノンフィクション
その①の続き「アメリカを扱った章は、特に読み物としても面白い」と言った翻訳者だが、私には読み物として最も面白かったのは、イスラエルを扱った第4章「イスラエルの贖罪」だった。イスラムやアメリカを扱った章よりも面白く感じられたのは、これら地域よりもイスラエルにおける宗教と政治の関係は、本書で初めて知った内容ばかりだったから。おそらく大半の日本人も、唯一のユダヤ人国家における宗教と政治の結びつきをあまり . . . 本文を読む

宗教の復讐 その①

2016-10-26 21:10:14 | 読書/ノンフィクション
『宗教の復讐』(ジル・ケペル著、晶文社)を先日読了した。題名からして物騒な印象を受けるが、これは意訳した邦題なのだ。原題はズバリ『神の復讐―世界の再征服に乗り出すキリスト教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒』、より過激なタイトルとなっている。そして裏表紙には次の紹介がされている。 「1970年代半ば以来、ヨーロッパで、中東で、アメリカで、過激な宗教運動が次々に復活し始めた。それは神の言葉を武器にした世 . . . 本文を読む

虫嫌い

2016-10-21 21:10:05 | 世相(日本)
 虫が大の苦手、見ただけで気分が悪くなるという人がいる。特に女性にはそのタイプが少なくないと思われるし、男性でも虫が嫌いと公言して憚らない人もいる。子供時代は虫は平気でも成人すると敬遠するようになり、苦手になる方もいる。 私自身も、小学校中学年頃までは昆虫採集や虫を飼うことはしていたし、カタツムリを平気で手に這わせていたこともある。今では到底出来ず、カタツムリに触れるのさえ汚いとしか感じられない。 . . . 本文を読む

ポーラ美術館コレクション展

2016-10-17 21:40:13 | 展示会鑑賞
 先日、宮城県美術館の特別企画「ポーラ美術館コレクション」展を見てきた。サブタイトルは「モネからピカソ、シャガールへ」とあり、チラシでは今回の展示会をこう紹介している。 「ポーラ美術館は、2002年、「箱根の自然と美術の共生」をコンセプトに箱根仙石原に開館しました。本展では、ポーラ美術館の所蔵する日本有数の西洋絵画コレクションの中から、印象派の巨匠モネ、ルノワールをはじめ、セザンヌ、ゴッホ、ゴー . . . 本文を読む

黒隊長ジョヴァンニ

2016-10-12 21:40:06 | 音楽、TV、観劇
 10月6日に放送されたNHK BS『ザ・プロファイラー』は、シーズン5突入記念もあり、フィレンツェからのロケだった。舞台がフィレンツェならばルネサンス時代を扱うのは予想できたし、番組サイトでも「今回の特別篇ではそのルネサンスの別の顔に光をあてます」と載っている。ルネサンスと聞いただけでナナミスト(塩野七生ファンのこと)は刺激されてしまい、録画して見た。 今回取り上げられたのは傭兵隊長ジョバンニ・ . . . 本文を読む

オランダ総督の見た原住民 その③

2016-10-06 21:10:06 | 読書/東アジア・他史
その①、その②の続き バンダ諸島征服の仕方は、現代のような人道主義などなかった当時でもやり過ぎと思われたらしく、知らせを聞いた会社職員の1人アールト・ヘイゼルスは次の発言をしている。「彼らが自分達の国の自由のために戦ったのは、我々が我々の自由を守るために多年生命や財産を賭して戦ってきたのと同様であることを、理解せねばならない」 オランダ東インド会社の重役集17人会すら、クーンに送った書簡の中で、も . . . 本文を読む

オランダ総督の見た原住民 その②

2016-10-05 21:40:13 | 読書/東アジア・他史
その①の続き 前回書いた様にクーンが最も信奉し、かつ必要としたのは「実力」だった。彼は意見書の中で原住民をこのように記していた。「東インドの原住民は最も強い者と交わる。此処では最強の者が正しい……この地方では皆風のままになびく。最強の者は彼らの最強の友である」 現地情勢を見据えたうえで下した彼の意見だったが、最強の者が必ずしも最強の友になるとは限らない。クーンの政策に対 . . . 本文を読む

オランダ総督の見た原住民 その①

2016-10-04 21:40:18 | 読書/欧米史
 1602年設立、世界初の株式会社と言われるオランダ東インド会社。会社といえ、現代人のイメージするそれとは極めて異なり、アジアにおける交易はもちろん、植民地経営や支配を行う一大海上帝国でもあった。オランダが東インド経営の基礎を固めたのは、第4代並び第6代東インド総督ヤン・ピーテルスゾーン・クーン(在任1619-23年、再任1627-29年)の時代だった。 記録好きでは定評のあるオランダ人らしく、ク . . . 本文を読む