トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

We Will Rock You! その二

2012-08-21 21:10:22 | 歴史諸随想

その一の続き
 英国崇拝者が多い日本の文化人だが、同時に反英感情を持つ者もいるし、私のような英国嫌い日本人も珍しくないと思う。昨年「イギリス嫌いの弁明」という記事を書いた時、結構な反響があった。その一人哲さんは、「今回の書き込みは盛り上がりましたね。けっこう皆さん、白人に対してむかっ腹が立っているのだと思います」と書込みしている。そんな中で冷静に英国との関係を分析したコメントがあったので、全文紹介したい。

英米>仏独>露>中韓朝 (motton)
2011-09-06 00:28:10

イギリスが狡猾なのは同意ですが、日本が付き合う上では、英米>仏独>露>中韓朝と思っています。 近代の条約(国際法)への姿勢からは、

英米…守る。守りたくない場合は難癖を付けて破る。
仏独…守る姿勢を見せる。いざとなったら破る。
露…利益があるならすぐ破る。
中韓朝…国際法は自分達を縛るためにあると思ってる。破るべき。
その他の地域…国際法?何それ。

という感じなので。
(戦前の日本は大陸欧州に近かったと思います。満州事変仏印進駐は英米ならもっとスマートに(狡猾に)やってますから。)

英米が国際法を守るのは自分達が作ったものだから守る方が利益があるという部分はありますが、露中あたりがその立場ならどういう振る舞いを するかは容易に想像が付きます。
英米は香港や沖縄を返還しましたが露中がそうするは思えません。
スポーツに例えると、欧米はルールを変えるだけですが、中国以下は平気で審判を買収します。

これが明治政府が露(や東亜)より英を選択した理由と思っています。
嫌英米の保守?の人の中には中韓朝と同じ考え方の人がいますが、幕末攘夷論のレベルです。長谷川三千子さんくらいであればいいのですが。


 戦前の日本は大陸欧州に近かったという見解は目からウロコだったし、他のコメンター室長さんの「他方で、日本人文化人の一部には、反米感情を隠す隠れ蓑として反英感情に走るという、そういう傾向も見られるようなので…」(2011-09-08 10:50)もハッとさせられた。
アングロサクソンの過去の罪状とか、色々、恨み辛みの感情ともなるけど、実際に日本の国益から見て、現実に「提携し、連合すべき国家はどこか?」と考えていけば、なかなか黄色人種連合とかで、日本が得するとも思えない」という室長さんの意見も納得させられた。

 かつては軍事力で世界をRock、大英帝国を築いた英国だが、20世紀後半はポップスやロックで世界を制した。音楽で「We Will Rock You!」 ならマシだろう。 

 

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10 コメント

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他国と利益を分かち合う (室長)
2012-08-23 10:36:09
こんにちは、
 最近中西輝政の「国民の文明史」という本を読んでいます。結構、小生には難解な書物ですが、272ページの記述は衝撃的です。
 満州事件に関するリットン報告書に関して、次のようにコメントしている。

1.5%のコミッション
 英語に「どんな慈善活動にも、5%のコミッション(手数料)」という言葉がある。リットン達は他国のためにいいことだけすると言うことはなかった。必ず「5%のコミッションを取る」。その5%のコミッションに当たるのが、この場合は、満州市場の開放であった。この際満州市場を開放体制にして、英国資本、米国資本が入っていきやすいようにしろ、というわけだった、という。特に満鉄には、資本参加したいと言うことであったという。報告書の中には、単に「満州経済の国際化」と書かれていて、それは要するに、英米にも分け前を、ということだった、という。満州利権を、日本が主導することはよいが、英米にも分け前をよこせ、ということだったという。

2.昭和天皇も、リットン報告に賛成していた
 そして、更に驚くのは、リットン報告書を読まれた昭和天皇も、「これで良いではないか」と仰有ったという。
  昭和天皇は、満州における日本の権益を、英米と分かつことによって、国際的な承認を得る、ということ、長期的により良く保障されうると言うことを良く理解されていた、という。

 結局、日本のみの権益独占という、軍部の狭い意向で突っ走ってしまったことで、却って日本の長期的な満州利権の確立に失敗した、ということだ。

 国際法を主導し、世界の秩序を導く役割を永年勤めてきた英米両国に対する、5%のコミッションをけちって、中国大陸に対する権益全体をも喪失していく、そういう間違った外交を軍部の独走が招いたと言える。

 外交というのは、長期的視点で損得を考えていく必要があるし、特に「利益を分かち合う」、「5%のコミッションをあたえる」というような、英米における「裏の常識」とも、うまくつきあっていかねばならない、ということであろう。
 何でも白黒を鮮明にして、理詰めで考えてもいけない、大国と利益を共有していく、という配慮を何時も忘れてはならない、ということだと思う。
RE:他国と利益を分かち合う (mugi)
2012-08-23 22:15:16
>こんはんは、室長さん。

 中西氏の『国民の文明史』は未読ですが、リットン報告書に関しての分析は興味深いですね。「どんな慈善活動にも、5%のコミッション(手数料)」という言葉があるのも初耳ですが、満州市場の開放による5%の“手数料”なら、別に暴利ではないと思います。

 にも拘らず日本のみの権益独占にしてしまい、満州どころか大陸の利権を全て失った。何故このような拙いやり方になってしまったのか不可解ですが、軍部には外交の分かる者がいなかったのやら…

 戦前ばかりか最近のメディアでも、責任追及とばかり何でも白黒を鮮明にし、理詰めで考えよという論調が多すぎる。外交というのは常に曖昧だし、大国と利益を共有するという発想も必要です。反原発、オスプレイ問題でも単に感情を煽り立てる論調には心底ウンザリさせられます。
5%のコミッション (室長)
2012-08-24 09:52:52
こんにちは、
 「慈善活動にも、5%のコミッション」という考え方、或いは諺が、英語であるというのは、小生もこの中西氏の書物で初めて知ったことです。
 そういえば、英国には、Oxfamといったような、巨大チャリティー(NPO)が存在し、その雇用者数などは、大企業を超えるほどと聞きます。
 マケドニアに小生が出張していたときに、マケ政府関係者が、西欧から来たNPOなどが、EUから直接資金援助を受けて、その職員達が西欧並みの給与(マケ人から見れば多すぎる給与)を得て、毎日旧市街の食堂で焼き肉を食べて贅沢していると怒っていた。返済の義務はないにせよ、EUからマケへの援助金として公式統計に乗る金の大部分が、西欧の怪しげなNPO職員の「巨額な給与」として消えていて、マケ国民の懐とは関係のないところに消えるのが、腑に落ちない、と言う感じでした。

 西欧にしてみれば、自国の失業者対策でもあるNPO職員という「職業」に、対外援助金から「給与」を支払う・・・・決して、無駄にはならない、良い制度、ということになる。
 
 植民地での利益を「分かち合う」というやり方は、確かに、欧米列強の汚い帝国主義に荷担する、ということでもある(そういう目で見れば)が、他方で、日本のみが利益を独占せず、先進国同士で利益を分かち合う、ということになる。それが、当時の中国大陸を巡る大国の常識だったと思う(英国は、そのやり方で、仏、独、蘭などにも配慮してきた)。やはり日本は、東亜から欧米植民地主義を追い出す、という大義を名乗ったにしても、実質は、相手側に言わせれば、東亜における利益配分から欧米を排除しようとした、ということになる。
 上海租界などにおける英国利権の擁護に、日本軍の援護を要請したのに、幣原喜重郎外相は、あっさりと拒否したらしい。いくら日英同盟が解消後でも、そういう国際社会からの支援要請には、対応して、恩を売る、という態度が必要でした。外交のトップも、料簡が狭かったのです。
独裁者 (motton)
2012-08-24 12:17:46
20世紀前半の日本の問題は独裁者がいなかったことかもしれませんね。そのため、中長期的な戦略がなかったように思いますし、松岡や石原莞爾の様な無責任な外交を行なう輩が出ました。

WWII時、日本以外の主要国には全て独裁的な権力者がいたことは、もっと注目されてもいいかもしれません。
RE:5%のコミッション (mugi)
2012-08-24 22:09:28
>こんはんは、室長さん。

 英国のOxfamという巨大チャリティー(NPO)の名は初めて知りましたが、そのからくりは興味深いですね。要するにEUからマケへの援助金を食い物にしていたということ。他人のカネで支援者面しながら「巨額な給与」を得て、毎日旧市街の食堂で焼き肉食べ放題。これでマケの政府関係者はもちろん一般国民も怒りますよ。

 改めて欧米のNPOの狡猾な裏の面が分かりました。もちろん西欧にとっては失業者対策になるし、良い制度でしょう。震災後、やたら国内外のNPOの活動を讃えている日本のメディアも本当に信用できないですね。

 ちなみに幣原喜重郎をwikiで見たら、「アメリカとともにイギリスによる派兵の要請を拒絶…」とありました。アメリカが要請を拒絶した理由は不明ですが、案外米国も外交下手でしたね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%A3%E5%8E%9F%E5%96%9C%E9%87%8D%E9%83%8E
RE:独裁者 (mugi)
2012-08-24 22:10:25

>mottonさん、

 毎度ながら貴方の意見は実に慧眼ですね。仰る通り東條如きは同じ枢軸国はもちろん、連合国に比べても指導力など無きに等しかった。

 WWII時に限らず残念ながら日本の政治風土では、独裁的な権力者を出さないのです。それが今の政治の混迷を招いているのでしょう。仮にその素質と能力を持つ人物がいても、日本では活かせないかもしれません。
一国一文明 (室長)
2012-08-25 09:50:18
こんにちは、
 mottonさん、mugiさん、
中西輝政の『国民の文明史』によれば、352ページ頃から、東アジアの特異性を述べています。

 欧州が、文字といえばラテン文字かキリル文字の二つしかない(小生に言わせれば、ギリシャ文字もあるけど)し、キリスト教という宗教だし、国境も良く入れ替わって、一つの文明圏なのに対して、アジアでは、中国、インドが、国境線が良く入れ替わるものの、他の諸国は、ほとんど国境線が、過去1千年ほど動かない、一国一文明の国家が多いという。

 もちろん、島国で、ずっと一国一文明を2千年以上続けている日本は、東アジアでももっとも顕著な例ですが、朝鮮、ベトナム、カンボジア、タイ、ビルマなども、一国一文明として、長らく独自の国家を形成してきた、という意味で欧州とは対極にあるという。つまり、アジアは一つではないという。言語も、文字も、全く異なるので、相互に全く理解不可能という。

 そして、一つの文明には、その文明独自の生態、特徴があり、宗教、文化、神話などで、独自の国民形成をしているというのが、中西理論のようです。
  幕末、明治のエリートである薩長の武士、或いは平民出身者達が、元老として国家指導した明治期は、日本としても例外的に、国家にしっかりしたエリート層が居て、一貫した国政指導をしましたが、「大正デモクラシー」という欧米化が進みすぎ、大衆文化化した頃から、日本はダメになったと中西氏は言う。
  恐らく英国式の、紳士層、エリート層による国家指導の巧みさを学んだ中西氏には、大正文化人の愚かさ、昭和軍人達の愚かさが、とても許せない感じだと思う。天皇のみは日本国の宗教、精神基盤の要とはいえ、残念ながら、天皇を支えるしっかりした「支配階級」などは存在しないのが日本です。
  本当は、頼朝と鎌倉武士階級が、天皇崇拝、日本式仏教(神仏混淆)、などの国の根幹を作った、というのも、中西氏の理論らしい。しかし、明治の四民平等政策で、武士階級もいなくなり、元老も質が低下し、天皇を支える知恵袋がいなくなった、ということ。

  やはり、エリートを上手に生み出すには、英米式の、ケンブリッジ、ハーバードなどの大学が必要なのかも。とはいえ、凡人が足を引っ張り合いつつ、1年限りの首相、政権という・・・・これこそ民主主義という説もあるけど・・・これが日本的なのでしょうが、困ったものです。東大、京大をもっと盛り立てて、立派にするか、或いは、筑波大などをもっと育成すべきなのか??
RE:一国一文明 (mugi)
2012-08-25 21:36:14
>こんはんは、室長さん。

 中西氏による東や東南アジア諸国への一国一文明論も面白いですね。カンボジア、タイ、ビルマは仏教国ですが、言語や文字もそれぞれ異なる。これでは同じ仏教徒という意識は芽生えにくいはず。同様に回教国のマレーシアやインドネシアも違っている。インドや中国は国境線が入れ替わらなくとも、国は広いし様々な言語がありました。これで「アジアはひとつ」とは完全な幻想と妄言でしょう。

 ジョージ・フィールズという人物をご存知でしょうか?彼は生前、頼朝を「革命家」と呼んだことがあり、外国人の目にはそう見えていたのは驚きました。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%82%BA

 ただし、この“革命家”が天皇制を廃止、若しくは自ら天皇にならなかったのが日本的でした。聖俗分離で双方の指導者が両立する体制を確立したのが頼朝でしたが。

 階級社会の方が返って優れたエリートを輩出しやすいのかもしれませんね。今の日本ではエリート育成も難しくなっているような。人間は誰しも嫉妬心を持っていて、平等化が進むほどエリート層を許せなくなるのでは?
 学歴社会や拝金主義を批判する者はネットでもありますが、殆どはルサンチマンの僻みにしか見えない。 そのくせ「カネは問題ではない」と言っているから、金に不自由していないことは確か。大衆文化が極まると、足の引っ張り合いが蔓延るのかもしれません。
革命家頼朝 (室長)
2012-08-26 09:30:53
こんにちは、
 ジョージ・フィールズという人に関しては、小生日本にいない期間が長かったからか、全く知らない人物です。

 中西氏によると、神皇正統記を書いた公家の北畠親房が、頼朝、泰時による鎌倉幕府を「正統な政権」として評価していた、という。北畠は、足利氏による室町幕府を徹底して批判したと言うけど、東国武士を束ねて新たな政権を築いた(確かに革命政権と言える)頼朝、北条氏による政権を、正しい政治をしたと見ていた由。

 中西氏は、鎌倉幕府が、鎌倉仏教、或いは伊勢神道を確立することに力添えしたことも、高く評価しています。要するに、日本国家の根幹と言える宗教の分野で、伊勢神道と、日本精神と和合した仏教である鎌倉仏教を成立させたこと、モンゴルの侵略に対抗し断固防衛して国を守り抜いたこと、など、鎌倉政権の功績を称えます。他方で、鎌倉内部における凄惨な粛正人事、処罰などの「暗い権力政治抗争」についても言及はしている。

 足利義満が、日本国王を名乗り、一時的とはいえ、貿易の利益を狙って、明に「臣従」した事実は、聖徳太子以来の対シナ独立路線に背反することとして非難している。また、京都に幕府を置くことで、天皇家に介入し、天皇家の皇統を二分したこと、京都を焼け野原としたこと、など室町幕府への評価は低い。室町文化への評価も、低い。

  ともかく、中西理論は、英米への造詣の深い中西氏の政治、文明観が基本で描かれた壮大な議論なので、面白いけど、革新的史観ともいえ、消化が苦しく、小生もなかなかきちんと理解できない側面がある。他方で、占領軍による指導で、本来の日本精神から乖離した方向に、歴史家、文化人、などの思想が誘導された戦後史のゆがみにも鋭くツッコミを入れています。

 基本的には、米中が今後対決していくその中で、日本はきちんと米国と同盟していくべきで、かつ自立した防衛軍を強化すべき、との「基本的な国家戦略」部分では、小生と同じ立場です。朝鮮半島、これと連動する台湾情勢、これらにおいて、中国に負ければ、東南アジア、太平洋の海域も中国優勢となって、日本国滅亡への道筋となります。

 戦後政治家達への評価も、なかなか面白い。吉田茂に関しては、その統治における「経済再生」専念路線を批判している。吉田崇拝の池田、佐藤政権にも批判的だし、もちろん田中角栄にもダメ出ししている。
 岸信介、安倍晋三路線に期待しているのが、中西氏です(この著書は03年頃の執筆)。なお、中西氏が1947年生まれと、小生より2歳若いと気付きました。たいした学者だと益々尊敬し始めています。
RE:革命家頼朝 (mugi)
2012-08-27 00:13:31
>こんはんは、室長さん。

 神皇正統記は未見ですが、北畠親房が鎌倉幕府を「正統な政権」として評価していたとは知りませんでした。足利氏による室町幕府を徹底批判したのは立場上当然ですが、その前の鎌倉幕府は高く評価していたとは意外でした。もちろん鎌倉幕府は実質的には北条一族による一族支配だったし、ライバルの豪族を次々に潰していきました。やはり革命政権には粛清がつきもののようですね。
 また足利義満の「臣従」政策に関しては、戦前から日本国内で批判があったようで、『父が子に語る世界歴史』(ネルー著)の中にも触れられていました。

 米中の関係が今後どうなるのか、専門家でも見方は様々だし、まして私のような素人が分かるはずもありません。しかし、東南アジア諸国さえ中共支配よりも、“米帝”支配を望むのではないでしょうか?日本以上にこれら地域では華僑への不信感が根強いはず。戦前のインドが日本より大英帝国を選んだのは、今では当然の選択だったと思います。

 中西氏の戦後政治家への批評も興味深いですね。氏は1947年生まれでしたか。先日拙ブログに動画をリンクした英国のギタリストも同じ年だし、方々にアラシをしていたブロガーも同じ年頃。還暦過ぎも様々です。