トーキング・マイノリティ

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シリアナ 2005年【米】スティーブン・ギャガン監督

2006-03-11 20:51:05 | 映画
 コピーが「知れば怖い、知らねばもっと怖い」「地球は陰謀でできている」。CIA、石油会社、司法省、産油国、イスラム過激派などが入れ替わり登場するが、石油利権をめぐる陰謀なのだ。タイトルの「シリアナ」とは、イラン、イラク、シリアが一つの国家になることを想定した、米の研究機関の専門用語とか。

  登場人物はCIA工作員、石油会社重役、経済アナリスト、弁護士、中東の王族、出稼ぎ労働者と多岐に渡り、ストーリーも複雑だが、彼らの人生が相互に絡み 合いつつ展開する。アメリカが中東や中央アジアでの石油利権確保に狂奔するのは、台頭する中国のエネルギー確保もある。平たく言えば先に唾を付けようとい うこと。中東の王族は中国人も商談に招き、時にはアメリカ以上に優遇する。
 石油会社ではとかく利権が大事。受注のためなら法を破って贈賄工作などものともしない。重役が言い放った通り、「我々の聖書には石油は世界の富とある」のだから。ライバルの裏をかいて何としても契約を取る世界。

 ベテランCIA工作員がレバノンで拉致された時の拷問が、中国での法輪功信徒へのそれを真似たものだった。実行犯は①水牢に入れる②両手を縛り上げ顔を汚物に突っ込む③ペンチで指の爪を剥がす、と拷問の種類を挙げ、③でCIA工作員は痛めつけられるが、実際に中国では3種類だけではすまないだろう。

 中東の王族がオイルマネーで欧米で派手な生活をしてるのは知られているが、一人当たり送金額が一月十万ドルとは呆れる。もちろん産油国側もアメリカのテキサス、カンザスといった失業者の多い地帯に援助も行い、“思いやり予算”は出しているのだ。
  一方、産油国へのパキスタン人出稼ぎ労働者は最低ラインの生活を強いられている。将来に希望のない若者にイスラム神学校から誘いがかかる。神学校に行けば 食べ物をくれ、何かと親切にするのは、むろん下心がある。タダより怖いものはないのは何処の世界も同じで、簡単に洗脳され、最後は自爆テロに駆り立てられ る。

 アメリカにとって産油国が独裁制だろうが、自国に安値で安定した石油を供給さえすれば構わず、逆に制度改革しようとする王族は許さない。そんな改革者は暗殺するのを躊躇しないのがアメリカ。高山 正之氏の本のタイトルどおり、まさに世界は腹黒い

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6 コメント

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乾坤一擲 (Mars)
2006-03-12 21:08:46
こんばんは、mugiさん。



コピーの「知れば怖い、知らねばもっと怖い」「地球は陰謀でできている」というのはある意味、お笑いですね。陰謀や謀略、策略、権謀術策のない時代はありません。



戦いにしても何でも、戦術の前に戦略があり、帳の千里の外に勝利を決するのが理想であり、戦わず勝つのが理想ですね。



戦には矛を交えないものもあります。外交戦、冷戦など、表現はありますが。さて、日本は今後も、世界で勝ち組みになれるでしょうか?一時の勝者の言を聞いても、意味はないですね(たった一戦の敗戦で、勝者から転落するのは、盛者必衰とはいえ、諸行無常でしょうね)。



追伸、

ラモネ氏の論文を取り上げた、反対の意見のブログを紹介いただいてありがとうございます。

でも、本当に、日本にはこういう意見の者は少なくでしょう。でも、この意見では、暴力肯定ですよね。

如何なる理由(特に理不尽な場合)でも、暴力反対を貫くのが真の非暴力。私も甘いが、かの人の甘さといえば、、、。



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時の運 (mugi)
2006-03-13 00:17:40
こんばんは、Marsさん。



安易なコピーですが、お人よしの日本人は隣国の悪意を知らない人が少なくないので、怖いですね。

戦わず勝つのが理想とは孫子が言ったのですよね。

常に勝ち続ける事は出来ないし、勝負は時の運とも言われます。



例の憲法改正反対ブロガーですが、どこか在日系のニオイがしましたね。日本在住と書いてましたが。

イスラム擁護の姿勢を取りながらも、ウイグルの事を触れた私のコメントや、日本人は他のアジア人を見下しているという意見へのMarsさんの反論は、見事にスルーでしたから。

イスラム擁護をする者で、中露の弾圧を批判したカキコはまず見た事がありませんが、やはりあの御仁もそうでした。真にイスラムを擁護するなら、ナチ同然のイスラエルの弾圧はもちろん、中露も非難するべき。イスラム贔屓は反日、反米の隠れ蓑。
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商売上手 (にら)
2006-03-15 09:48:09
ノンポリでボンクラな自分なので、世界がどう回ってるのかもよくわかりませんが、カネが儲かると踏んだらなんでも作るハリウッドメジャーも石油業界と同じくらいしたたかだなぁ、と思いました。



ノンポリでボンクラな日本の恥なので、こんなつまらないコメントしか残せませんが、TBありがとうございました。
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コメント&TBありがとうございました (mugi)
2006-03-15 21:31:52
にらさん、コメントありがとうございます。

ノンポリ、ボンクラでは私も変わりありませんが、仰るとおりハリウッドメジャーもかなりしたたか。

『シリアナ』『ジャーヘッド』みたいな映画を作る一方で、湾岸戦争やイラク戦争の英雄が主人公の作品も作る。そこが競争原理の働くアメリカ映画の特徴でもあり、面白いところでもありますが。

これが表現の自由のない中国や旧ソ連なら、型どおりのプロパガンダ映画になってしまい、民衆も実は見抜いている。
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Unknown (耕作)
2006-07-17 05:38:29
おはようございます♪

年ばかりを重ね、世界の実情も知らないオジさんとしては

事の真意はともかく、物事を考えるきっかけとなり

とても為になる作品でした(笑)



やっぱり、映画とは面白いな、と思いつつTB&コメント

ありがとうございました。
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コメント&TBありがとうございます (mugi)
2006-07-17 21:53:59
今晩は、耕作さん

コメント&TBありがとうございました。



全ては石油利権と国益が複雑に絡んで世界が動いている、ということでしょう。

石油への需要がなくならない限り、問題は複雑化するばかりです。
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