ラムタラが英国に買い戻されました(記事、キャッシュ)。
日高の生産者の期待を一身に背負って44億円のシンジケートで種牡馬入りしたものの、父系としてのNijinsky系衰退の流れには勝てず、メイショウラムセスを出した程度でした。冷静に状況を分析すれば導入する前に過剰投資であることが分かりそうなものですが、3歳の初めに生死の境を彷徨いながらも無敗で欧州主要レースを3つ勝った神秘性といい、コンパクトで美しい馬体、賢そうな顔つきといい、人を引き付ける魔力のある馬でした(神秘性、魔力という得体の知れないものに44億円も賭けてしまっては割りが合わないのですが)。
海外の競馬を集中して見ていた時期に現れた名馬であり、とても思い入れがあります(ブログ1、ブログ2)。
父は言わずと知れたイギリス最後の三冠馬。母のSnow Brideはオークス馬(アガカーン殿下の生産馬Aliysaの失格による繰り上がり*)。ダービー馬とオークス馬の組み合わせによる唯一のダービー馬です。Northern Dancer2×4の濃いインブリードがあります(Nijinsky24歳時種付けであり、ゼロ交配です)。
英国での活躍を期待するとともに、日本では牝系に入っての活躍を期待したいです。優秀な血が凝縮している馬だけに、チャンスは十分にあると思います(種牡馬としてよりむしろ牝系に入ってからの方が良さそうに思っています)。
ラムタラ産駒でもっとも期待したのは松国厩舎で現役のタニノエタニティです。1歳下の従兄弟にタニノギムレットがいますし、IK的にも高評価を得ました。母父カツラギエース(ブログ)、祖母父Sea-Bird、曾祖母父Graustark、全て好みです。同牝系で同様にIK的高評価馬とは言え、タニノギムレットのような強引なまでの破壊力はなく、神経質な感じの馬でした。まだ現役続行中ですので、もうちょっと見守ってみます。父の海外放出を機にスイッチが入ったりしないかな・・・。(でも障害も含めて50戦以上して2億近く稼いでいますね。皐月賞馬ノーリーズンより稼いでいます。)
ラムタラ産駒でもっとも活躍したのは愛オークス2着、オークス3着のMelikahでしょうか。欧州に残して来た産駒で、母は凱旋門賞馬Urban Seaであり、半弟にGalileo、Black Sam Bellamyのいる超良血馬です。イギリスの方がまだ合っているかもしれません。
近親クロスに種牡馬としての失敗の原因を求める人もいますが、日本では父系としてのNijinsky系(Northern Dancer系)がいらないこと(Northern Dancerのクロスを持つNijinsky直仔が必要かという意味も含む)、ヨーロッパ向きのヘビーさ、線の細さ、五十嵐氏理論的な観点からは明確な主導を作りにくいこと、の方が原因ではないかと思っています。「きつい近親クロス」だけに注目することに合理性はありません。
極端な近親交配をもつ種牡馬をあげてみます。
・Galopin3×2のクロスを持つFlying Foxはパリ大賞典のAjaxらを出し、フランスで3回リーディングサイアーに輝きました。(母VampireがGalopinのゼロ。)
・Galopin4×2のBayardoは短い供用期間でGay Crusader、Gainsboroughと2頭の英三冠馬を出し、2回リーディングサイアーに輝きました。
・Domino2×2のUltimusは早世したものの、ベルモントSのLuke McLuke、名種牡馬のHigh Timeらを出しました。
・St. Simon=Angelica2×3*5のHavresacはイタリアで大成功し、Nearcoの母で伊1000ギニー、伊2000ギニーのNogaraやミラノ大賞典のCavaliere d'Arpinoを出して、10回リーディングサイアーに輝きました。(父RabelaisがSt. Simonのゼロ。)
・Omnium3×2のKsarは仏ダービーなどのTourbillonらを出し、フランスで1回リーディングサイアーに輝きました。Tourbillonはフランスで3回リーディングサイアーに輝いた大種牡馬です。
・Tourbillon2×3のTarguiはハリウッドGCのCadizらを出してニュージーランドで成功しました。(父Djebelのゼロ交配であり、DjebelもTourbillonのゼロ。)
・Tourbillon2×3、Bruleur4×3*5のHugh Lupusは大成功した訳ではないものの、セントレジャーのHethersett、1000ギニーのPourparlerらを出しました。(父DjebelがTourbillonのゼロ。)
・Athanasius2×3のOrsiniは独ダービーのMardukらを出し、ドイツで4回リーディングサイアーに輝きました。
・Dr. Fager3×2、Cequillo4×3のQuiet Americanは米二冠馬Real Quiet、最優秀古馬牝馬のHidden Lakeらを出しました。(父Fappianoのゼロ。)
・Raise a Native2×4のマイニングは成功したとは言い難いものの、バレリーナHの勝ち馬でゼンノロブロイの母のローミンレイチェルを出しました。クイーンズプレートSのEdenworldの母父でもあります(ブログ)。(父Mr. ProspectorがRaise a Nativeのゼロ。)
・名種牡馬ではありませんが、Herold1×3という目を疑うような超近交を持つAgamemnonはオイロパ賞、イタリア大賞典のPrince Ippiの母父としてその血を残しています。(祖母AntoniaがHeroldのゼロ。)
牝馬のクロスは意味が少し違うかもしれませんが、身近なところではLady Angela3×2を持つノーザンテースト、Neocracy2×4を持つタイテエムがいます。ノーザンテーストは大種牡馬ですし、タイテエムもコーセイ、シンチェストなどの重賞勝ち馬を出しました。
一般論として近親交配を避けるべき、というのを、近親交配馬は種牡馬として成功しないからラムタラも失敗した、なんて拡大解釈してしまうのはデータ不足か偏見によるものでしょう。
もっと本質的な、その血が必要かどうかの方が重要だと思います。
近親交配を持つ現役種牡馬では、Riverman4×2のAnabaa Blueがいます。父方のRivermanはゼロです。産駒が今年デビューします。父はヨーロッパで流行中のDanzig系ですし、近親にすでにGIホースを出したGalileo(ブログ)、King's Best(ブログ1、ブログ2)がいます。いいところも難しいところもある種牡馬なのですが、ついでなのでちょっと注目してみたいです。
*注:Snow Brideの父がアガカーン殿下の持ち馬Blushing Groomなのがなんとも皮肉です。
日高の生産者の期待を一身に背負って44億円のシンジケートで種牡馬入りしたものの、父系としてのNijinsky系衰退の流れには勝てず、メイショウラムセスを出した程度でした。冷静に状況を分析すれば導入する前に過剰投資であることが分かりそうなものですが、3歳の初めに生死の境を彷徨いながらも無敗で欧州主要レースを3つ勝った神秘性といい、コンパクトで美しい馬体、賢そうな顔つきといい、人を引き付ける魔力のある馬でした(神秘性、魔力という得体の知れないものに44億円も賭けてしまっては割りが合わないのですが)。
海外の競馬を集中して見ていた時期に現れた名馬であり、とても思い入れがあります(ブログ1、ブログ2)。
父は言わずと知れたイギリス最後の三冠馬。母のSnow Brideはオークス馬(アガカーン殿下の生産馬Aliysaの失格による繰り上がり*)。ダービー馬とオークス馬の組み合わせによる唯一のダービー馬です。Northern Dancer2×4の濃いインブリードがあります(Nijinsky24歳時種付けであり、ゼロ交配です)。
英国での活躍を期待するとともに、日本では牝系に入っての活躍を期待したいです。優秀な血が凝縮している馬だけに、チャンスは十分にあると思います(種牡馬としてよりむしろ牝系に入ってからの方が良さそうに思っています)。
ラムタラ産駒でもっとも期待したのは松国厩舎で現役のタニノエタニティです。1歳下の従兄弟にタニノギムレットがいますし、IK的にも高評価を得ました。母父カツラギエース(ブログ)、祖母父Sea-Bird、曾祖母父Graustark、全て好みです。同牝系で同様にIK的高評価馬とは言え、タニノギムレットのような強引なまでの破壊力はなく、神経質な感じの馬でした。まだ現役続行中ですので、もうちょっと見守ってみます。父の海外放出を機にスイッチが入ったりしないかな・・・。(でも障害も含めて50戦以上して2億近く稼いでいますね。皐月賞馬ノーリーズンより稼いでいます。)
ラムタラ産駒でもっとも活躍したのは愛オークス2着、オークス3着のMelikahでしょうか。欧州に残して来た産駒で、母は凱旋門賞馬Urban Seaであり、半弟にGalileo、Black Sam Bellamyのいる超良血馬です。イギリスの方がまだ合っているかもしれません。
近親クロスに種牡馬としての失敗の原因を求める人もいますが、日本では父系としてのNijinsky系(Northern Dancer系)がいらないこと(Northern Dancerのクロスを持つNijinsky直仔が必要かという意味も含む)、ヨーロッパ向きのヘビーさ、線の細さ、五十嵐氏理論的な観点からは明確な主導を作りにくいこと、の方が原因ではないかと思っています。「きつい近親クロス」だけに注目することに合理性はありません。
極端な近親交配をもつ種牡馬をあげてみます。
・Galopin3×2のクロスを持つFlying Foxはパリ大賞典のAjaxらを出し、フランスで3回リーディングサイアーに輝きました。(母VampireがGalopinのゼロ。)
・Galopin4×2のBayardoは短い供用期間でGay Crusader、Gainsboroughと2頭の英三冠馬を出し、2回リーディングサイアーに輝きました。
・Domino2×2のUltimusは早世したものの、ベルモントSのLuke McLuke、名種牡馬のHigh Timeらを出しました。
・St. Simon=Angelica2×3*5のHavresacはイタリアで大成功し、Nearcoの母で伊1000ギニー、伊2000ギニーのNogaraやミラノ大賞典のCavaliere d'Arpinoを出して、10回リーディングサイアーに輝きました。(父RabelaisがSt. Simonのゼロ。)
・Omnium3×2のKsarは仏ダービーなどのTourbillonらを出し、フランスで1回リーディングサイアーに輝きました。Tourbillonはフランスで3回リーディングサイアーに輝いた大種牡馬です。
・Tourbillon2×3のTarguiはハリウッドGCのCadizらを出してニュージーランドで成功しました。(父Djebelのゼロ交配であり、DjebelもTourbillonのゼロ。)
・Tourbillon2×3、Bruleur4×3*5のHugh Lupusは大成功した訳ではないものの、セントレジャーのHethersett、1000ギニーのPourparlerらを出しました。(父DjebelがTourbillonのゼロ。)
・Athanasius2×3のOrsiniは独ダービーのMardukらを出し、ドイツで4回リーディングサイアーに輝きました。
・Dr. Fager3×2、Cequillo4×3のQuiet Americanは米二冠馬Real Quiet、最優秀古馬牝馬のHidden Lakeらを出しました。(父Fappianoのゼロ。)
・Raise a Native2×4のマイニングは成功したとは言い難いものの、バレリーナHの勝ち馬でゼンノロブロイの母のローミンレイチェルを出しました。クイーンズプレートSのEdenworldの母父でもあります(ブログ)。(父Mr. ProspectorがRaise a Nativeのゼロ。)
・名種牡馬ではありませんが、Herold1×3という目を疑うような超近交を持つAgamemnonはオイロパ賞、イタリア大賞典のPrince Ippiの母父としてその血を残しています。(祖母AntoniaがHeroldのゼロ。)
牝馬のクロスは意味が少し違うかもしれませんが、身近なところではLady Angela3×2を持つノーザンテースト、Neocracy2×4を持つタイテエムがいます。ノーザンテーストは大種牡馬ですし、タイテエムもコーセイ、シンチェストなどの重賞勝ち馬を出しました。
一般論として近親交配を避けるべき、というのを、近親交配馬は種牡馬として成功しないからラムタラも失敗した、なんて拡大解釈してしまうのはデータ不足か偏見によるものでしょう。
もっと本質的な、その血が必要かどうかの方が重要だと思います。
近親交配を持つ現役種牡馬では、Riverman4×2のAnabaa Blueがいます。父方のRivermanはゼロです。産駒が今年デビューします。父はヨーロッパで流行中のDanzig系ですし、近親にすでにGIホースを出したGalileo(ブログ)、King's Best(ブログ1、ブログ2)がいます。いいところも難しいところもある種牡馬なのですが、ついでなのでちょっと注目してみたいです。
*注:Snow Brideの父がアガカーン殿下の持ち馬Blushing Groomなのがなんとも皮肉です。
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