旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

渥美東洋さん

2014年07月14日 21時07分02秒 | Weblog

渥美東洋さんは講義のあとでいつも学生たちに囲まれた。まるで講義を続けているかのように質疑に応えていた。英国風のダークスーツを着こなしたいでたちで、学生相手といえども直立不動の姿勢を崩すことはなかった。太く通る声で、学生ひとりひとりの目をみつめながら真剣に持論を展開した。
朝日新聞の「惜別」で紹介されているように、講義途中で退席した学生を、学外まで追いかけて連れ戻したとか、反抗的な学生に激高して辞書を投げつけたとか、刑訴の単位が取れないために卒業できない学生が泣きついたところ、「学問は、そんなに甘いもんじゃない。」と一喝したとか、30歳の半ばですでに学部の伝説だった。
「刑事訴訟法を本気で学ぶ気がない学生は私の講座を取らないように、単位を取得できないだろうから。しかも、法律学科の学生は刑事訴訟法が必修だから、本気で学ぶ気がない学生が私の刑訴
を取ると卒業できなくなる。」と断言して憚らなかった。実際に7割以上の学生に不可をつけたことがあると初回の講義で明らかにした。
その渥美さんがこの1月に亡くなったことを朝日新聞の「惜別」で今日知った。「旧満州で生まれ、その地で終戦を迎えた。公務員の父はシベリアに抑留され、母と2人の姉とともに帰国した。かって父親が住んでいた浜松市は焼け野原になっていた。」(「惜別」から)。講演ではいつも「法を理解し、法を通した平和を考えよう。」と説いていたという。
講義の中で「私は仏教徒です。」と明言したことを懐かしく思い出す。享年79歳。


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