ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【カッパのへそ】難波先生より

2014-04-19 13:22:15 | 難波紘二先生
【カッパのへそ】
 この言葉は医学部で解剖学のうち組織学を担当していた浜清教授から聴いた。日本の研究を批判する意見のなかで飛び出した。浜先生はその研究に対して米NIHから多額の研究費が支給されており、文部省科学研究費をもらう必要がなかった。申請しないでいると、文部省の方から「先生が申請してくれないと、科研費の値打ちがさがるから、ぜひもらってくれ」と言われたほどの人だ。
 浜教授は後に阪大の教授となり、学生委員長なったが、大学紛争に嫌気がさして、学生がいない東大医科研に移った。後に岡崎市の国立研究所に移り、所長も勤めた。研究一筋に生きた人だ。

 「カッパのへそ」は誰も見たことがない。日本の研究は「誰も見たことがない」という理由で、やたら新しいもの珍しいものにこだわり、学問の本道を深く掘り下げるという姿勢に欠けている、というのが批判の主旨だった。
 STAP細胞はカッパのへそか、ツチノコと同じで、小保方さんが200回以上見たといっているだけで証拠がない。他に誰も見たものが名乗り出ない。笹井会見はSTAP細胞を「STAP現象」と言い換えただけで、証拠の有無には言及しなかった。

 木曜日のRCCラジオの質問に以下のように答えた。
●このSTAP論文騒動について、どのようにお考えですか?
 ・ここまで大きな問題になってしまったのは何で?
 3点ありますね…
 一つはネイチャーという科学雑誌に掲載された論文に多くの不正があったこと。
 共同執筆者によるチェックに大きな不備がありました。
 ネイチャー誌に掲載された論文が与えるインパクトは大きいです。
 世界中で12箇所以上の研究室で追試が行われましたが、すべて不成功でした。

 ふたつ目は、理研が大々的な広報をおこない、それにメディアがとびついて、「リケジョ」ブームになったことです。初め持ち上げる報道をしたものだから、手のひらを返すようにすぐには批判的報道ができなかった。
 メディアが論文を他の専門家の意見などで検証し、もっと淡々と報じていたらこれほどの騒ぎにはならかったと思います。

 最後に、論文発表から2ヶ月もたってやっと理研がこの4月に不正を認めたことです。その間にますます問題が拡大し、国際的な信用が失墜しました。組織として危機管理体制がなっていないと思います。

●論文取り下げをしないと、小保方さんは言っておりますが、先生のご意見は?
 STAP細胞があると報告した論文に正しいデータがなく、200回も作ったはずの細胞のサンプルも提出できないのですから、取り下げるのが当然でしょう。
 「データに故意でないミスが多々あったが、結論は間違っていないから撤回しない」と言っていますが、データの合理的解釈により結論が導かれるのです。算数の応用問題で、立てた方程式は間違っていたが、答えは正しいと言っているようなものです。
 過去にも本人の同意がなくても、施設からの要請や雑誌編集部の判断で論文を撤回した例がありますから、今回もそうなるものと思います。

●メディアでも様々言われておりますが、そもそもSTAP細胞は存在するのでしょうか?
ツチノコを例に挙げましょう。
「ツチノコはいる」という人に、「では証拠写真を出しなさい」というと、「200回も見た。だからツチノコは存在する」というのと、論理的には同じですね。あるかないか、あるという証拠をまず出すべきです。

両生類のイモリやサンショウウオでは、前足を肩のところから切り離しても、再生が起こりちゃんと指まで揃った新しい前足が生えてきます。ヒトで同じことが起こったと報告されたとして、すぐに信じますか?
証拠がないと信じないでしょう。STAP細胞も同じことです。
科学の世界では、あるという証拠がないかぎり、信用されません。

水曜日の記者会見で小保方さんの論文を執筆した笹井氏が「STAP現象は有力な仮説」と述べました。STAP細胞は人工的に作った細胞のことですから、それが仮説ということは、理研に残されたサンプルは偽物ということです。つまり本物のSTAP細胞は存在していないということです。
 その証拠に理研は残された細胞やキメラマウスの検証をしぶっています。
あーだ、こーだという言い訳はもう沢山です。残された物的証拠を第三者が検査して、はっきりした結論を早急に出すべきです。

● 昨日、理研の笹井さんの会見もありましたが…なぜ別々に会見を?組織はどうなっている?
1月の末の「STAP幹細胞を発見した」という理研の記者会見には主な共同研究者は一緒に出て来たのですから、不正の疑惑が生じてからの記者会見も共同でやるべきです。
私は理研の内部のことを知りませんので、推測になります。理研がこれまでの記者会見に小保方さんと実際に論文を書いた笹井さんを出さなかったのは、出してはまずい理由があったのでしょう。
「トカゲの尻尾切り」というのは、日本型組織が不祥事に対応する時の、一般的な原理です。
笹井さんは、「騒ぎで研究が停滞することが日本の最大の損失になる」と述べましたが、これは渦中の研究者が言うべき言葉ではありません。人ごとみたいに聞こえます。

●ここで、みんなが考えてしまうのは、なぜネイチャーという世界的な科学雑誌に掲載されるに至るまでに確認をなされなかったのかということですが…
 ネイチャーに載った今回の論文は、3段階の実験から成り立っています。
 第1段階は普通のからだの細胞を酸で処理して初期化する。これがSTAP細胞です。
 ところがこの細胞はそのままでは増えないので、第2段階としてSTAP細胞が増殖するように特殊な培養液に入れて培養する。すると増殖能力をもった細胞ができるといいます。
 第3段階は、これが本当に万能細胞かどうかを、マウスの初期の受精卵に入れて、まだらのマウスができるかどうかを確かめる。これがキメラマウスです。
 実験があまりに複雑で、1人の人間が一貫してやれない。そこに事故なのか故意なのか分かりませんが、細胞が入れ替わったりする可能性があるのです。

 「体細胞がストレスにより初期化する」ということを、関係者がみんな信じこんでいたので、論文の内部に存在した矛盾点や盗用やデータの改ざん、捏造に気づかなかったのでしょう。
 論文には査読委員というレフェリーがいますが、理研というブランド名と世界的な研究者が名を連ねているし、何度も何度も投稿してくるので根負けして掲載したというのが、真相でしょう。

●ネイチャーに掲載されるというのは科学者にとってステータスに?
他にもランセット、サイエンスという医学、科学の一流雑誌がありますが、ネイチャーが注目度ナンバーワンの一流誌であることはまちがいありません。
そのため研究者は誰でもネーチャーに論文が載るような研究を目指しています。

●日本のさまざまな研究自体への不信感につながりそうな問題になってしまいましたよね。
これが一番痛いです。今回の事件について、MIT(マサチューセッツ工科大学)の生命倫理の教授は、「日本のバイオサイエンスに壊滅的な打撃を与えるだろう」とまで言っています。
理研は一日も早く真相を公表し、国内外の信頼を取り戻すように努力してほしいと思います。

● こうした問題が二度と起こらないようにするためにはどうすれば?
 今回の調査も理研の内部調査なので不審点が十分に解明されていません。アメリカにはNIH公衆衛生局の中にORI研究公正局が設置されています。政府の資金をえた研究に不正疑惑が、告発や内部告発で問われた場合に、この組織が迅速に調査を開始します。科学FBIと呼ばれるほど、つよい権限を持っています。

 日本でもiPS細胞の臨床試験をめぐる昨年の東大森口事件とか、ノバルティス社の高血圧の薬の臨床研究を巡るデータ不正とか、同様の事件が多発しています。
 日本版ORIを早急に作る必要があります。このような第三者機関が設置されれば、抑制力になりますし、事件が起こった際には迅速に客観的な調査を行うことができます。

●若い世代に伝えたいことなどありますか?
 小保方さんはあれほど大々的に理研が売り出し、また自分からテレビなどのメディアに露出させたので、自ら研究者の道を閉ざす結果になりました。元はといえば彼女が播いたタネです。
 コピペは学生の間にまん延しているようですが、カンニングと変わりませんし、真の学力もつきません。
 今、盗用検出ソフトが開発されていますし、1行くらいの文章ならネットの「グーグル検索」で、同じものがあるかどうかすぐに検出できます。
 盗用、改ざん、捏造はすぐにばれますし、身の破滅です。絶対やってはいけない。お札をコピーして使ったら最高で無期懲役の刑罰があります。
 今回、小保方さんは反面教師になってくれました。それが彼女の唯一の功績だと思います。


 小保方晴子の「ハーバード留学体験記」が、早稲田のHPに今でも掲載されている。読んでみると、やはり嘘があるように思う。
http://www.waseda.jp/prj-GCOE-PracChem/jpn/newsletter/img/GCOENL01_C.pdf

 この土曜日、4/26 13:30から「STAP細胞検証会」(仮称)が、「大阪大学中之島センター」で開催されるそうだ。元の阪大医学部で、大阪駅からタクシーですぐだ。
大阪大学 中之島センター事務室‬詳細‬‎
‪〒530-0005‬
‪大阪府大阪市北区中之島4丁目3-53‬
06-6444-2100
 大手メディアの報道をジャーナリストが自ら検証する場でもあるらしい。榎木英介さんなどが参加するらしい。彼は東大理学部卒だが、大学院博士課程を中退し、神戸大医学部に学士入学して医師となり、病理医になった。肩書は「近畿大学講師」になっている。
植木氏は、STAP事件の背景理解にも役立つ「博士漂流時代」(ディスカヴァー・サイエンス新書, 2010)という、興味深い本を書いている。
 私も参加する予定だ。クローズとは聞いていないから、興味のある方は参加されたらどうかと思うので、掲載した。
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