【細菌と人類】これは別にヒトと細菌の戦いの話ではない。
日曜日の新聞書評は、「産経」が1面だけになっていてがっかりしたが、いつも3面ある「毎日」には収穫があった。15冊ほどアマゾンに注文したら半数は今日、月曜日の朝届いた。信じられない速さだ。
その中に、D.コーエン(林昌宏訳):「経済と人類の1万年史から、21世紀を考える」(作品社, 2013/4)、
水野和夫・大澤真幸:「資本主義という謎:<成長なき時代>をどう生きるか」(NHK出版新書, 2013/2)があった。
ダニエル・コーエンは典型的なユダヤ人名だ。パリ第1大学(ソルボンヌ)の経済学教授だが、人類史の観点から経済発展の歴史と経済法則の認識の歴史をわかりやすく書いている。著者はノルウェーの作家ヨースタイン・ゴルデルの『ソフィーの世界』を意識して書いたという。これは高校生のソフィーという女の子に、見知らぬ哲学者から毎日手紙が届き、哲学の歴史が解き明かされるという物語で、日本でもベストセラーになった。「大学新入生に薦める101冊の本」でも推薦しておいた。
訳者の林昌宏はプロの翻訳家で、リュック・フォリエ「ユートピアの崩壊:ナウル共和国」(新泉社, 2011/2)という、燐鉱石の輸出のみに依存していたナウルが、資源が枯渇した後、世界最高の福祉国家からいかに急激に最貧国に転落したかを、詳しく書いた本を訳している。フランス語が専門らしいが、訳文はよくこなれており、読みやすい。
読んでみるとジャレド・ダイアモンド「文明崩壊」(草思社,2005)の影響をかなり受けている。
コーエンの視野は広い。のっけから、人類は農耕の発明後に定住を始めたのではなく、最古の都市エリコ(この城壁がユダヤ人が攻めた時に、神の力で自然に崩壊する話は、旧約聖書に出て来る)は農耕以前に成立していたという。依拠した文献はフランスの考古学者ジャック・コーヴァンの1994年の著「神性の誕生、農業の誕生:新石器時代における象徴の革命」(Jacques Cauvin: Naissance des divinites, naissance de l'aguriculuture. La revolutiondes symboles au neolithique. CNRS, Paris, 1994) である。
もしそうなら、青森の「三内丸山遺跡」の意味づけはすっかり変わってしまうだろう。しかし私の知るかぎりこの本は邦訳されていないし、考古学者の間で問題にされた記憶もない。竹岡俊樹さんあたりが、訳して出さないかと思う。
「経済法則」というのは、人間社会の経済活動の「傾向」をいうものだから、社会構造の歴史的な移り変わりにより、成立したり消滅したりする。文明が違えば、成り立つ法則も違う。
そのへんのところをコーエンはうまく解説してくれている。
読んでいて、定住の開始と村落の形成、新しいアイデア(イノベーション)の誕生(「神」の概念をふくむ)、農業革命、人口の増加、階層社会や国家の誕生とが、一連の動きをなし、しかも面白いことに、「バクテリアの増殖曲線」と一致しているのが理解できた。(添付1)
「新石器革命=農業革命」が1万年前に始まったとき、世界人口は1000万人弱だった。人類誕生から15万年経っていたが、狩猟採取時代は狩猟地域の拡大により人口が増えるだけで、ペトリ皿の培地に植えた細菌の場合でいうと「遅滞期(ラグ期)」で、ほとんど人口増がなかった。
農業革命により人口増と「余剰」を手に入れた王や官僚や僧侶が支配階級になり、社会の階層化が進んだ。しかし西暦1世紀には世界人口はまだ2億人しかいなかった。これは添付図の1.5時間目つまり「対数増殖期(ログ期)」の「初期」に相当する。
14世紀の初め世界人口は倍の4億人だったが、ヨーロッパを襲ったペストにより、100年後には3億5000万人に減った。
その後も、ヨーロッパでは三十年戰争などの戦乱、飢饉、疫病が続き、これからの回復に300年かかった。
しかし、16世紀にフィレンツェのメディチ家が合法的に「利息を取る」金貸し業を初め、これが金融資本主義のはじまりになった。
17世紀の中頃、英国で蒸気機関が発明された。これが第一次「産業革命」の端緒で、英国の経済力・軍事力を飛躍的に高めた。古典派経済学が英国で誕生したのは偶然ではない。が、産業革命により化石エネルギーが生産過程に投入されるようになると、安い製品を輸出し、大量の穀物を輸入する国家となった。帝国主義のはじまりである。たちまち人口が増えた。細菌の増殖曲線では、「ログ期中期」に相当する。図では2~3時間のところだ。1800年における世界人口は10億人という。図で3時間の所である。
この現象を見て、「食料生産の伸びと人口増の大きなギャップ」を指摘したのが「マルサスの法則」である。マルサス『人口の原理』は1798年に出版されている。これが世界初の「経済学法則」だという。
その後、産業は19世紀の半ばに、重工業が化学と結びつき、製薬工業や化学肥料工業や化学染料工業などが生まれた。これを第二次「産業革命」ということもあるらしい。これが付図では3.5時間のところに相当する。
第一次大戦と第二次大戦は、わずか25年のうちに起こり、世界人口を1億人ほど減らしたが、「人口増」のトレンドには影響を与えなかった。戰争終結後、敗戦国は約30年で、戦前の水準より豊かになった。戦勝国も同様で、フランスでは1945~1975年の30年間を「栄光の三十年」と呼ぶそうだ。日本で昭和40年代を「古く良き時代」というのと同様だ。各国に生じた「高度成長経済」を支えたのは、石炭のほかに新たなエネルギー源として加わった、石油である。
1990年に世界人口は53億人に達した。同時にこの頃から、マイクロコンピュータがゲーム機、パソコン、ケータイなどとして普及し始めた。インターネットも登場した。そして、この頃から先進国に「少子高齢化」起こり始めた。少子化は女性の社会進出とも関係がある。これが第三次「産業革命」で、付図の4時間のところである。
この革命が従来の革命と大いに異なるのは、女性の「生涯特殊出生率」を2.0以下に押し下げ、従って長期的には世界人口の減少をもたらす、つまり「マルサスの法則」の死滅を意味していることである。
今、先進国はカーブの5時間のところにある。人口が定常化してきたから、古典的資本主義(1国内資本主義)だと、労働者不足で生産規模を拡大できない、よって生産物の総額(GDP)を増やせないことになる。が、実際には、米国の場合、農業生産人口は全労働者の2%、工業でも10%以下が従事しているにすぎない。
圧倒的多数の労働人口は、サービス業(教育、医療、介護などを含む)に従事している。産業構造が筋肉依存型から、知識依存型に変わっているのである。
世界はいま、「IT・金融革命」の時代にある。付図では5~7.5時間目のところだ。細菌だと「定常期」つまりゼロ成長の時代だ。ここで無理に「高度成長」を続けようとすると、1)資源の枯渇、2)生態系の大崩壊による社会の破滅が生じる。
コーエンはこうした破局を回避しようという合理的な選択の結果として、先進国が「低い経済成長率」を選択したのではなく、「アメリカに追いつく」という戦略を達成したあと、それを追い抜くという、危険な冒険に乗り出すための知恵も勇気もなかったからだ、と説明している。
フランスがアメリカと肩を並べるのに要した年限が、フランス経済の年間成長率を決めたとコーエンはいう。フランスは30年かかったから、その間6%の経済成長率があった。日本もほぼ同様である。
確かに「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(1979)と言われたトタンに、日本の経済はおかしくなった。ハリウッドやマンハッタンのビルや会社を敗戦国の日本企業に買われたアメリカ人の気持ちは、いま中国人にビルや山林を買われて憤っている日本人どころではなかったであろう。
水野和夫らの本(対談)は、1992年以来「2%以下のゼロ金利」が16年間も続いている、今の日本は世界史の上で、17世紀イタリアのジェノヴァで金利 2%が11年続いた「利子率革命」以来、400年ぶりの記録更新だという。
この本では、低金利が続く理由、国債残高が1000兆円を超えても、国民の預金残高が700兆円あるので、「一国経済」として見れば大した額でなく、よって国債金利は暴騰しないなど、興味深い見方が述べてある。
アベノミクスは日銀に紙幣を増刷させ、貨幣総量を増やし、消費者が値上がり感から金をものに変える速度つまり貨幣流通速度を高め、「流通貨幣量X流通速度」により決まる「名目GDP」高めて、2%の経済成長を達成しようとしている。
水野はこの理論は「資本が国際的に移動できない社会でしか通用しない」と批判的である。素人の私が考えても、必要量を超えた通貨を増刷すれば、株や土地に投資された後、最終的に資本は海外に流出する。かつてハワイやハリウッドに向かったことがあるし、これからゼロ金利で金を借りて、金利2%の米国債を買う投資家も出てくるだろう。
「失われた10年」という言葉は、記憶によれば村上龍が「失われた10年を問う」(NHK出版, 2000)で広めたものだが、バブル破裂後、すでに「失われた20年」になり、さらに「失われた30年」になるかもしれない。
基本的な問題は、経済と情報がグローバル化しているのに、国民国家としての日本国の経済システムがそれに合致していない点にある。レーガノミクスは少なくともソ連に対して「スターウォーズ計画」を突きつけ、ソ連経済を破綻させ冷戦を終結させる効果があった。「IT・金融革命」に対する有効な処方箋のない、アベノミクスは必然的に破綻するだろう。
バクテリアの場合、培地の更新がなければ「定常期」は2時間半続き、以後、個体数の減少に入る。これは江戸期なら270年に相当する。明治維新がなければ、社会システムの崩壊が起こっていただろう。
今のシステムは「55年体制」が生み出したものだ。何とか保っているのは、700兆円の個人預金と年金のかなりの額が預金に回っているためだ。以前として家庭の貯蓄率は高い。「退蔵」されている現金もある。現状では、破綻は10年後だろうという。しかし「社会保障制度」改革や相続税、固定資産税に手を付けて、個人資産の海外逃避が起こると、破綻はもっと早まるだろうと思う。
日曜日の新聞書評は、「産経」が1面だけになっていてがっかりしたが、いつも3面ある「毎日」には収穫があった。15冊ほどアマゾンに注文したら半数は今日、月曜日の朝届いた。信じられない速さだ。
その中に、D.コーエン(林昌宏訳):「経済と人類の1万年史から、21世紀を考える」(作品社, 2013/4)、
水野和夫・大澤真幸:「資本主義という謎:<成長なき時代>をどう生きるか」(NHK出版新書, 2013/2)があった。
ダニエル・コーエンは典型的なユダヤ人名だ。パリ第1大学(ソルボンヌ)の経済学教授だが、人類史の観点から経済発展の歴史と経済法則の認識の歴史をわかりやすく書いている。著者はノルウェーの作家ヨースタイン・ゴルデルの『ソフィーの世界』を意識して書いたという。これは高校生のソフィーという女の子に、見知らぬ哲学者から毎日手紙が届き、哲学の歴史が解き明かされるという物語で、日本でもベストセラーになった。「大学新入生に薦める101冊の本」でも推薦しておいた。
訳者の林昌宏はプロの翻訳家で、リュック・フォリエ「ユートピアの崩壊:ナウル共和国」(新泉社, 2011/2)という、燐鉱石の輸出のみに依存していたナウルが、資源が枯渇した後、世界最高の福祉国家からいかに急激に最貧国に転落したかを、詳しく書いた本を訳している。フランス語が専門らしいが、訳文はよくこなれており、読みやすい。
読んでみるとジャレド・ダイアモンド「文明崩壊」(草思社,2005)の影響をかなり受けている。
コーエンの視野は広い。のっけから、人類は農耕の発明後に定住を始めたのではなく、最古の都市エリコ(この城壁がユダヤ人が攻めた時に、神の力で自然に崩壊する話は、旧約聖書に出て来る)は農耕以前に成立していたという。依拠した文献はフランスの考古学者ジャック・コーヴァンの1994年の著「神性の誕生、農業の誕生:新石器時代における象徴の革命」(Jacques Cauvin: Naissance des divinites, naissance de l'aguriculuture. La revolutiondes symboles au neolithique. CNRS, Paris, 1994) である。
もしそうなら、青森の「三内丸山遺跡」の意味づけはすっかり変わってしまうだろう。しかし私の知るかぎりこの本は邦訳されていないし、考古学者の間で問題にされた記憶もない。竹岡俊樹さんあたりが、訳して出さないかと思う。
「経済法則」というのは、人間社会の経済活動の「傾向」をいうものだから、社会構造の歴史的な移り変わりにより、成立したり消滅したりする。文明が違えば、成り立つ法則も違う。
そのへんのところをコーエンはうまく解説してくれている。
読んでいて、定住の開始と村落の形成、新しいアイデア(イノベーション)の誕生(「神」の概念をふくむ)、農業革命、人口の増加、階層社会や国家の誕生とが、一連の動きをなし、しかも面白いことに、「バクテリアの増殖曲線」と一致しているのが理解できた。(添付1)

「新石器革命=農業革命」が1万年前に始まったとき、世界人口は1000万人弱だった。人類誕生から15万年経っていたが、狩猟採取時代は狩猟地域の拡大により人口が増えるだけで、ペトリ皿の培地に植えた細菌の場合でいうと「遅滞期(ラグ期)」で、ほとんど人口増がなかった。
農業革命により人口増と「余剰」を手に入れた王や官僚や僧侶が支配階級になり、社会の階層化が進んだ。しかし西暦1世紀には世界人口はまだ2億人しかいなかった。これは添付図の1.5時間目つまり「対数増殖期(ログ期)」の「初期」に相当する。
14世紀の初め世界人口は倍の4億人だったが、ヨーロッパを襲ったペストにより、100年後には3億5000万人に減った。
その後も、ヨーロッパでは三十年戰争などの戦乱、飢饉、疫病が続き、これからの回復に300年かかった。
しかし、16世紀にフィレンツェのメディチ家が合法的に「利息を取る」金貸し業を初め、これが金融資本主義のはじまりになった。
17世紀の中頃、英国で蒸気機関が発明された。これが第一次「産業革命」の端緒で、英国の経済力・軍事力を飛躍的に高めた。古典派経済学が英国で誕生したのは偶然ではない。が、産業革命により化石エネルギーが生産過程に投入されるようになると、安い製品を輸出し、大量の穀物を輸入する国家となった。帝国主義のはじまりである。たちまち人口が増えた。細菌の増殖曲線では、「ログ期中期」に相当する。図では2~3時間のところだ。1800年における世界人口は10億人という。図で3時間の所である。
この現象を見て、「食料生産の伸びと人口増の大きなギャップ」を指摘したのが「マルサスの法則」である。マルサス『人口の原理』は1798年に出版されている。これが世界初の「経済学法則」だという。
その後、産業は19世紀の半ばに、重工業が化学と結びつき、製薬工業や化学肥料工業や化学染料工業などが生まれた。これを第二次「産業革命」ということもあるらしい。これが付図では3.5時間のところに相当する。
第一次大戦と第二次大戦は、わずか25年のうちに起こり、世界人口を1億人ほど減らしたが、「人口増」のトレンドには影響を与えなかった。戰争終結後、敗戦国は約30年で、戦前の水準より豊かになった。戦勝国も同様で、フランスでは1945~1975年の30年間を「栄光の三十年」と呼ぶそうだ。日本で昭和40年代を「古く良き時代」というのと同様だ。各国に生じた「高度成長経済」を支えたのは、石炭のほかに新たなエネルギー源として加わった、石油である。
1990年に世界人口は53億人に達した。同時にこの頃から、マイクロコンピュータがゲーム機、パソコン、ケータイなどとして普及し始めた。インターネットも登場した。そして、この頃から先進国に「少子高齢化」起こり始めた。少子化は女性の社会進出とも関係がある。これが第三次「産業革命」で、付図の4時間のところである。
この革命が従来の革命と大いに異なるのは、女性の「生涯特殊出生率」を2.0以下に押し下げ、従って長期的には世界人口の減少をもたらす、つまり「マルサスの法則」の死滅を意味していることである。
今、先進国はカーブの5時間のところにある。人口が定常化してきたから、古典的資本主義(1国内資本主義)だと、労働者不足で生産規模を拡大できない、よって生産物の総額(GDP)を増やせないことになる。が、実際には、米国の場合、農業生産人口は全労働者の2%、工業でも10%以下が従事しているにすぎない。
圧倒的多数の労働人口は、サービス業(教育、医療、介護などを含む)に従事している。産業構造が筋肉依存型から、知識依存型に変わっているのである。
世界はいま、「IT・金融革命」の時代にある。付図では5~7.5時間目のところだ。細菌だと「定常期」つまりゼロ成長の時代だ。ここで無理に「高度成長」を続けようとすると、1)資源の枯渇、2)生態系の大崩壊による社会の破滅が生じる。
コーエンはこうした破局を回避しようという合理的な選択の結果として、先進国が「低い経済成長率」を選択したのではなく、「アメリカに追いつく」という戦略を達成したあと、それを追い抜くという、危険な冒険に乗り出すための知恵も勇気もなかったからだ、と説明している。
フランスがアメリカと肩を並べるのに要した年限が、フランス経済の年間成長率を決めたとコーエンはいう。フランスは30年かかったから、その間6%の経済成長率があった。日本もほぼ同様である。
確かに「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(1979)と言われたトタンに、日本の経済はおかしくなった。ハリウッドやマンハッタンのビルや会社を敗戦国の日本企業に買われたアメリカ人の気持ちは、いま中国人にビルや山林を買われて憤っている日本人どころではなかったであろう。
水野和夫らの本(対談)は、1992年以来「2%以下のゼロ金利」が16年間も続いている、今の日本は世界史の上で、17世紀イタリアのジェノヴァで金利 2%が11年続いた「利子率革命」以来、400年ぶりの記録更新だという。
この本では、低金利が続く理由、国債残高が1000兆円を超えても、国民の預金残高が700兆円あるので、「一国経済」として見れば大した額でなく、よって国債金利は暴騰しないなど、興味深い見方が述べてある。
アベノミクスは日銀に紙幣を増刷させ、貨幣総量を増やし、消費者が値上がり感から金をものに変える速度つまり貨幣流通速度を高め、「流通貨幣量X流通速度」により決まる「名目GDP」高めて、2%の経済成長を達成しようとしている。
水野はこの理論は「資本が国際的に移動できない社会でしか通用しない」と批判的である。素人の私が考えても、必要量を超えた通貨を増刷すれば、株や土地に投資された後、最終的に資本は海外に流出する。かつてハワイやハリウッドに向かったことがあるし、これからゼロ金利で金を借りて、金利2%の米国債を買う投資家も出てくるだろう。
「失われた10年」という言葉は、記憶によれば村上龍が「失われた10年を問う」(NHK出版, 2000)で広めたものだが、バブル破裂後、すでに「失われた20年」になり、さらに「失われた30年」になるかもしれない。
基本的な問題は、経済と情報がグローバル化しているのに、国民国家としての日本国の経済システムがそれに合致していない点にある。レーガノミクスは少なくともソ連に対して「スターウォーズ計画」を突きつけ、ソ連経済を破綻させ冷戦を終結させる効果があった。「IT・金融革命」に対する有効な処方箋のない、アベノミクスは必然的に破綻するだろう。
バクテリアの場合、培地の更新がなければ「定常期」は2時間半続き、以後、個体数の減少に入る。これは江戸期なら270年に相当する。明治維新がなければ、社会システムの崩壊が起こっていただろう。
今のシステムは「55年体制」が生み出したものだ。何とか保っているのは、700兆円の個人預金と年金のかなりの額が預金に回っているためだ。以前として家庭の貯蓄率は高い。「退蔵」されている現金もある。現状では、破綻は10年後だろうという。しかし「社会保障制度」改革や相続税、固定資産税に手を付けて、個人資産の海外逃避が起こると、破綻はもっと早まるだろうと思う。
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