ある宇和島市議会議員のトレーニング

阪神大震災支援で動きの悪い体に気づいてトレーニングを始め、いつのまにかトライアスリートになってしまった私。

【タリウム殺人事件】難波先生より

2017-01-17 11:13:19 | 難波紘二先生
【タリウム殺人事件】
http://www.usuge-tiryo.com/tariumu-dokusei-syouzyou.html
「タリウム」日本語のスペルから「Talium」「Tallium」「Tarium」を推定して「医学辞典」「物理科学辞典」の類を牽くといずれも載っていない。正式には「Thallium」だった。そのことを「ドーランド医学用語辞典」を牽いてやっと知った。タリウムが殺人の目的で使用されたのは1981年福岡大学病院検査室の休憩所においてである。タリウムという元素の存在も、それが毒性であることも、この時初めて知った。タリウムから原語スペルが推定できない、「日本語」というのは、とてつもなく不自由な言語だなと思った。
 残念ながらこの事件では容疑者が自殺し、事件の全貌は不解明のままに終わった。タリウムは無味無臭、易水溶性の砂糖に似た白色粉末だから、コーヒーに混ぜれば毒殺用に使用可能だ。が、入手は専門家以外にはまず不可能だろう。

 以後1991年には東大で同様の事件が、起きている。
https://matome.naver.jp/odai/2139890853170535801
 この事件では同僚のNが犯人として逮捕され、後に裁判で懲役11年の刑が確定している。

 私は呉共済病院臨床病理科長時代に、青酸カリ、酢酸ウラニウムなど「劇物・毒物・放射性物質」については管理を厳重にし、別の薬品棚に保管し、その鍵は技師長が保管するシステムを構築した。一般の技師が勝手に毒物にアクセスできないようにしたのだ。
 それは1970年代のことだったから、時代的には20年ほど先んじていたかもしれないが、おかげで福大・東大型の事件は一度も起きずに済んだ。

 「メルク・マニュアル」を見ると、タリウムには「酢酸」「臭素」「炭酸」「塩化」「青酸」「フッ素」「塩化」「沃素化」「水酸化」「塩素化」「酸化」「セレン化」「酸化」「硫酸化」など14種以上の有毒化合物があるようだ。

 「河北新報」がタリウム事件を報じている。
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201701/20170115_13026.html
 これによると事件は2012年に、当時19歳だった容疑者が仙台で高校の同級生2人に「硫酸タリウム」を飲ませて殺害しようとしたとある(未遂)。硫酸タリウムの「一般用途」とは「殺鼠剤」だが、高校生の彼女がなぜこのような専門知識を得ていたのか?
 事件を報じたのは、「河北新報」以外にも各紙あるが、この核心的疑問を解明する報道は一本もない。合理的推論を述べれば、「各紙社会部記者の脳みそが白紙だから」としか言いようがない。

 付言になるが、私はすべての新聞報道を蔑視しているわけではない。「産経」1/13の記事「赤字削減、日本に矛先:日米貿易摩擦、懸念も」という第三面の記事を読んでいて「ブードゥー経済学」という用語に出くわした。記事本文にはブードゥーに対して「おまじない」という注が加えられていた。
 読みながら、「これはジャレド・ダイアモンドの本で有名になった喩えで、産経といえども原書を読みこなせていなければ、ワシントン支局の記者でも書けないだろう」と思った。果たして記事末には「秋本裕子・ワシントン清水憲司」とあり、現地記者の原稿に本社デスクが手を入れたものとわかり、得心した。
 私は「産経」の政治的主張には必ずしも賛成できないが、このように記事の一言一句までチェックした後に刊行する姿勢には感服する。また日韓問題や日米問題で、国益を主軸にした個別報道には賛同している。「タリウム殺人事件」についても、「報道タブー」にひるむことなく真実を報じてほしいと思う。

1/16朝日は初公判の模様を報じている。
http://www.asahi.com/articles/ASK1D7DS2K1DOIPE036.html

 それによるとタリウム混入事件は2012年、高校2年生(16歳)の時で、同級生の被害者2名はいずれも中毒したものの死亡には至っていない(殺人未遂事件)。
 だがどうして16歳の女子高生がタリウムの毒性についての知識を持つに至ったのか、報道ではそこがさっぱり分からない。私は高校と大学での化学実験でタリウムなど扱った記憶がない。 
 一般に毒物は市販薬局での入手は不可能で、薬品卸小売り業者から入手するしかない。タリウムが入手可能なのは高校化学の薬品庫から盗み出す。実家がまさに「薬品卸小売り」業であるという二つの場合しか私には考えられない。前者なら「窃盗罪」が成立するはずだ。
 どうも新聞記事は「隔靴掻痒」の感がある。

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3 コメント

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Unknown (Mr.S)
2017-01-17 17:22:55
私などは子供の頃に「ねこいらず」食えば猫どころか人だって死ぬんだと思ってましたよ。
キンチョールを飲めば死ぬだろなとも思いましたから
女子高生がタリウムで殺人が出来る事くらい知っていても不思議じゃないでしょう。
人の死ぬところに興味があったんですから、今はネットで調べられる時代です。簡単に知識は得られますよ。
Unknown (Unknown)
2017-01-29 06:31:16
あげられているURLの記事には、
「高校時代には、05年に起きた静岡県の女子高校生によるタリウム殺人未遂事件を知り、自分の事件でも同級生の中毒症状を「観察」したという。」
と書かれている。

入手方法についても、過去の記事には記載がある。
http://www.tokyo-sports.co.jp/nonsec/social/401417/


ちょっとネットで検索すると、被告の元女子大生の名前だとか、当時のツイッターアカウントなども分かります。個人情報なのでここには記しませんが、この方が毒物に興味を抱いて行った過程に関心がおありでしたらご自身でお調べになるといいでしょう。アカウントを見るに、彼女はタリウムの正しい綴りを高校生の時点で既にご存知だったようです。
Unknown (Unknown)
2017-01-30 23:26:59
>一般に毒物は市販薬局での入手は不可能で、薬品卸小売り業者から入手するしかない。タリウムが入手可能なのは高校化学の薬品庫から盗み出す。実家がまさに「薬品卸小売り」業であるという二つの場合しか私には考えられない。前者なら「窃盗罪」が成立するはずだ。

タリウムの化合物のうち、毒物及び劇物取締法(通称:毒劇法)で「劇物」に指定されているものは硫酸タリウム、硝酸タリウム、酢酸タリウムの3種類。事件で使われたのは硫酸タリウムなので、「劇物」であって「毒物」ではない。

劇物の販売は、毒劇物販売業の登録をした薬局ならできる。販売(交付)は、18歳未満の者に対してはできないが、高校生(当時)は当時、年齢を偽っていたようである。販売(交付)の際には、書面で「その交付を受ける者の氏名及び住所を確認」する必要がある。販売した薬局は、この確認を怠っていたのかも知れない。

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