日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

沈黙の春 再び

2015-09-17 22:40:42 | 旅日記
北海道新幹線の開業が来年の3月下旬に決まりました。今回の特徴は、切り替え工事の関係により、在来線の最終運行日が21日、新幹線の開業日が26日と分かれることです。北陸新幹線の開業時と違い、これでは現地で見届けるのも現実的ではありません。積雪前はおそらく今秋が最後、その後は正月の三連休と二月の飛び石連休に、乗車を主題として行くのがせいぜいではないでしょうか。
開業前から興ざめしているのは、趣味的な見地からの影響が乏しいという理由によります。北陸新幹線の開業時には、特急街道だった北陸本線が寂れたローカル線に一変し、国鉄型車両も一掃されるという切迫した状況でした。それに対して今回は、「北斗星」が一足早く姿を消し、残った「はまなす」は言わずもがなの狂乱状態、なおかつ冬場は走行時間帯からして実質撮影不可能、あとは「スーパー白鳥」がせいぜいという状況です。これではとことん追い続ける気にもなりません。
より根本的な理由として、北陸新幹線以上に弊害が大きいという点が挙げられます。まず、新幹線といいながら、在来線との共用区間は従来と同じ速度に抑えられ、短縮効果は大きく減殺されます。終着駅は函館から遠く離れた場所に建設され、そこからの移動手段は、わずか3両のロングシート車になることが決まっています。10両編成の新幹線から、3両編成のロングシート車に詰め込まれる状況を想像しただけでも、函館へ列車で行く気が失せるというものでしょう。
接客設備云々はともかく、空港よりも遠い場所に駅を造ってどうするつもりなのでしょうか。建設費が少々高くなろうが、線形がスイッチバックになろうが、函館市街に列車を停めなければ、新幹線を造った意義も半減してしまいます。函館のみならず道南の主要都市をことごとく素通りし、札幌に直行する形で新幹線を造っても、航空機から転移してくる乗客は皆無に近いでしょう。しかも新幹線の整備を大義名分にして、在来線は問答無用で切り捨てられ、全国各地を結んでいた鉄路はことごとく分断されていくわけです。「おらが村にも新幹線」の幻想がもたらした、哀しい結末というしかありません。
まだ直視したくない現実ではありますが、「沈黙の春」は半年後に迫りました。変わり果てた北陸から完全に足が遠のいたのと同様、新幹線が開業すれば函館に行く機会は激減するでしょう。残されたわずかな機会を大切にしたいものだと思います。
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