酒場の選択肢が限られがちな日曜でも、天文館では何ら不足に感じることはありません。これも偏に、盤石の安定感を誇る「分家無邪気」が日曜営業だからです。今回も迷うことなく、五時半の開店と同時に暖簾をくぐりました。
昨日訪ねた熊本の「瓢六」を、いついかなる時でも満足できる、万人に自信を持って勧められる名店だと評しました。同様のことがこの店についてもいえます。正方形をした分厚いニス塗りのL字カウンターは居心地よく、一辺には様々なネタを収めたガラスケース、もう一辺には当店名物の味噌おでんが湯気を立て、背後の棚には焼酎の一升瓶が待機するという機能的な配置も秀逸。串焼きと味噌おでんを二枚看板にして、刺身、焼物、揚物、酢物、酒肴にご飯ものと豊富な品が揃い、どれもおいしく価格は大衆的と、非の打ち所がありません。
しいて難点を挙げるとすれば、このような万人受けする陣容により、今日のような混み合う日には予約客が殺到するということでしょうか。開店直後に入ったにもかかわらず、既にカウンターの大部分と全てのテーブルに予約席の札が立っており、辛うじて残っていたカウンターの角の空席に滑り込みました。まずはもちろん味噌おでん、次いで串焼きを選び、続いて真打の鳥刺しを投入するという展開は、この店を一軒目に訪ねたときの定跡です。七点盛りの豪勢な鶏刺しは、各部位それぞれ二切れ以上が奢られるため、ポン酢に醤油、生姜におろしにんにくと組み合わせを変えつつ楽しめます。
なお、万人受けすると申しましたが、実は例外があります。店主が熱狂的な巨人ファンのため、アンチ巨人には間違ってもおすすめできないということです。この日も店内の大型テレビでは巨人戦の中継が放映されており、入ったときはまさしく勝利の瞬間に重なり、その後も過去の名場面などが延々放映されました。店主と常連の巨人ファンがそれを眺めて悦に入る中、アンチ巨人が居心地よく酒を呑めるとは思えません。もっとも、そのような特殊事情がない限り、この店が天文館でも屈指の名酒場なのは事実です。今回も盤石の横綱相撲でした。
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分家無邪気
鹿児島市東千石町11-4
099-222-4976
1700PM-2300PM(LO)
第二・第四月曜定休
不二才・アサヒ・岩いずみ
突き出し(枝豆)
おでん三品
串焼き二品
地鳥刺