息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

月読

2010-10-24 13:56:56 | 著者名 あ行
太田忠司 著

つくよみ と読む。
古代の夜を統べたといわれる神の名であるが、本書では特殊な職業というか、
才能のようなものを指している。

舞台は現代の日本のようでいて、少し違う。
人が死ぬと月導──つきしるべというものが出る。
それは虹であったり、ガラスのランプであったり、既存の標識をゆがめていたり、
中には温度──そこだけが異様に冷たい──ということもあるようだ。
その意味を読み取り遺族に伝えるのが月読の役割であるが、
一部のぬきんでた才能をもつもの以外、現在の僧侶同様、
葬儀の一部として形骸化している。

そしてもっとも大きな差があるのは、その月導の研究に多くの力が割かれてきたため
パソコンも携帯電話もなく、そしてほかのあらゆるメディアが遅れているのだ。
人類はまだ月へも到達していない。
舞台が地方都市であることも加わり、どこか息苦しさがある。

そんな中で優れた力をもつ月読が、事件に巻き込まれていくのだが。

死ぬ間際のメッセージっていまわのきわとか辞世の句とか、なんだか大仰な扱いだけど
それって知らないほうが幸せなものもあるんだろうなと感じた。
死を前にしながら意外と能天気に違うことを考えてたり、やたらと意味ないことが気になってたり。
そんなのを読まれて遺族に伝えられても嫌だ。
このストーリーの中では、なまじ死者の気持ちがわかるかもしれないという期待感がかえって悲しい。
後半はおどろおどろしいことになっていくのだが、結局自分のつごうのよいことを
月読に読んでもらえなかった逆恨みだったりと、面倒なことになっている。

設定がロマンティックでファンタジックなのに、なかなかリアルに現実的でした。

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