息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

天璋院篤姫

2010-11-09 11:20:21 | 宮尾登美子


  宮尾登美子 著

大好きな宮尾本。
どれも数十回単位で読んでいる。マニアですね。

これまで理解しづらかった歴史の場面や人物を読み解くのにはもってこい。
幕末のドラマなんてどちらかというと男性好み?とか、
ひたすら気の強い天璋院とプライドの高い和宮との争いなんて気が重いとか、
そんなものはすべて吹き飛び、あっという間に上下読了。

もちろん宮尾登美子独自の見解や挿話があるのには違いないけれど、
資料を読み込み、じっくり研究しての執筆なので、たとえつくりごとでも
その人物を彩る物語になっている。
宮尾本に悪人なし、というか、誰しもが思いやりがあり憎めないのだが、
たとえ、陰口をたたかれていたような人物を扱ったとしても、なぜその人は
そうあらねばならなかったかを見つめることができる。

裏長屋に住むおかみさんでも、天下を統べる御台所でも、
それぞれに心の揺れや悲しみがあり、まわりとの摩擦もある。
それを切り取り、見せてくれるのが宮尾登美子の魅力だと思う。

そしてこの物語は一人の少女が優秀な女性へと育つ成長物語でもあり、
ビジネスを進めていくキャリアストーリーでもある。

私は旧華族だの皇族だののエッセイや伝記が好きだが、その理由のひとつが
スケールの大きさだ。深窓で風にもあてず育てられているようでいて、
福祉、外交、政治と大きな場面に臆することなく立ち向かう姿や、
与えられている特権の華麗なる活用ぶりに惹きこまれてしまうのだ。

もちろんこの時代、いかに篤姫が優秀でも力及ばなかったことは多く、
それが良かったか悪かったかは何とも言えない。
それでも、力を尽くして生きた物語はいくら読んでも飽きない魅力がある。