みやっちBlog

ライター「宮下アツシ」の頭の中をlogする「みやっちBlog」

社会保障における企業負担は本当に重いのだろうか

2008年05月13日 22時48分52秒 | 政治・社会
道路整備費財源特例法改正案が今日、衆院で再可決されることになり福田内閣は消費税の5%アップを目論む税制改革論議を本格化するとか。



少子高齢化により今後、国の財政における医療費負担が増えるなど社会保障給付が国庫の負担となって、財政健全化が望めなくなるとの理由から、医療制度改革や消費税増税論議が沸き起こるが、そもそも日本の社会保障給付費は他国に比べて過大なのだろうか。

厚生省の「平成11年版厚生白書」によれば、国民(家計や企業)所得対比で社会保障給付費はスウェーデンが約53%、フランスが約38%、ドイツが約33%、イギリスが約27%、アメリカが約19%、日本が約15%となっている。つまり、低福祉低負担といわれるアメリカよりも国民所得対比で社会保障給付費が低いことを厚生省は認めているのである。ちなみに、国民の負担に関してはスウェーデンの租税負担は51%、社会保障負担は20%、フランスがそれぞれ34%と29%、ドイツがそれぞれ31%と25%、イギリスがそれぞれ31%と10%、アメリカがそれぞれ25%と10%、日本がそれぞれ24%、12%となっている。これを見る限り、日本は平成11年の段階でアメリカに並ぶ低福祉低負担の社会保障だということがわかる。

ところが、社会保障を含め企業の負担率が他国に比べて高いと指摘する声が大きく、法人税と社会保障の企業負担をさらに下げるべきだという論調が目立つ。

たしかに、一般会計の税収に占める企業からの税収の割合は3割ほどで、厚生年金の企業負担率や労災保険、雇用保険などの負担もあって法人税率を下げるべきだと主張する人たちの意見もなるほどと思えてしまうが、ほとんどが最終的に個人や消費者の負担となる特別会計にかかわる税収を含めて考えると様相は一変するのではないだろうか。

平成17年度の社会保障費の収入117.5兆円に対し企業負担は21兆円ほどなので企業負担は17.9%。平成19年度予算での一般会計と特別会計をあわせた歳入の純計234.9兆円に対して法人税収入は16兆円で6.8%となっている。

ちなみに、「世界」の4月号で神野直彦氏は、法人税と社会保障負担率を合わせると日本の企業負担率は法人税で7%、社会保障で6%しか企業は負担していないと指摘している。ちなみに、同じ基準での各国の企業負担率はフランスが法人税で15.8%、社会保障は15.6%、スウェーデンは法人税18.5%、社会保障14.8%だとしていて企業の負担軽減を強硬に主張する人たちの数字とは大きくかけ離れている。

何を何処まで含めるのか、何を基準に考えるのかで企業負担率は変わってくるのだろうが、企業サイドはベースの違う数値を持ち出して企業負担率が重いと主張しているのではないかと思えてならない。

企業の社会貢献の基本は、国に税金を納めることであり応分の社会保障を負担することなのではないのだろうか。ところが、見かけ上の企業業績を高めることで株価を高めて海外からの投資資金を呼び込もうというのが成長路線を主張する人たちの論理。しかし、人件費抑制、社会保障負担の軽減、法人税の軽減などで労働者の賃金は抑制され非正規雇用が増え、労働者世帯の医療費負担が増えて、税負担が増えれば国内消費に悪影響が出ることは火を見るよりも明らか。それに加えて年金で生活している高齢者の個人負担も増えたのだから、原材料や原油の高騰による生活必需品や食料品などの価格が高騰する今の状況では一部の金持ちや高給取り以外は生きてゆくのも厳しくなっているのも当たり前。

にもかかわらず、消費税の5%アップによる影響は限定的だと麻生元外相が言い切っているように、政府与党には国民の厳しい生活実態は見えていない。

いくら日本国内に本社を置いて事業を行おうとしても、国内でモノが売れなければ法人税が安くても市場を海外に求めて外に出て行くのだからどうにもならない。しかも、海外での事業収益に日本の税制の網が掛けられないのであれば、本社だけ日本にあっても意味が無い。

そもそも、日本は国内での輸送コストがべらぼうに高い。その輸送コストの高さを吸収できているのは運送業界が低賃金でトラックドライバーを使っているからに他ならない。しかし、それもこのところの燃料価格高騰で行き詰まっていて、このままでは日本の物流は中小運送業者の大量倒産と共にズタズタとなってしまう可能性がある。

以前にも書いたが、グローバル企業を日本に呼び込むつもりならば徹底してそのための制度を作り上げなければ意味は無い。しかし、そのために日本で暮らす主権者を含めた国民に負担を強いるというのは本末転倒。日本に暮らす国民の暮らしのために、法人への税率を下げるなどの優遇策をとることでより多くの企業を日本に呼び込んで、結果として企業からの税収総額を増やすというのでなければ、なんのための政府なのか。

金融や証券市場に関しても同じことで、国民生活を犠牲にして外国人投資家を呼び込む政策をなどとんでもない話。

社会保障を削る真の目的は、外国の保険業界に国民の個人資産を差し出すことだと指摘する人もいるが、まさにそうした状況になってきている。

多額の財政赤字を作り出した自民党が、その反省も検証もないままに政権の座に居座って、企業に対しては優遇しながら国民の個人負担増で穴埋めをしようというのだから盗人猛々しいにも程がある。

民主党に対して政権担当能力が無いと批判する自民党だが、本当に政権担当能力のある政党であれば、これほどの財政赤字を生み出すはずは無い。

道路特定財源の暫定税率復活や後期高齢者医療制度に対して10万人規模のデモやストが起こらない日本という国。他の主権在民の立憲主義に基づく民主制を採る国であれば、間違いなくデモやストが起こるだろうし暴動が起こってもおかしくない状況なのに、ただただ福田首相が衆院解散総選挙をしてくれるように願うばかりという日本の主権者は、あまりのおとなし過ぎるのでは。

民主主義を守るための言論の自由があり、集会の自由もあり、スト権もあるにもかかわらず、それが行使できない社会的な雰囲気があるのだとすれば、それはなぜなのか。国家に統制された国になりつつあるということなのではないのだろうか。

権力を握る人たちにとって、主権在民の立憲主義に基づく民主主義ほど自らの権力を脅かすものは無い。だからこそ、新憲法制定により国家権力を強めて国民を憲法によって縛ろうとしたいのだろうが、西側諸国の仲間から外れないためには便宜上主権在民の民主主義の国であると謳っておく必要があるので、その文言は非常に巧妙に創られている。

現在の政権与党に多額の献金を行うグローバル企業や大企業と政権の座に居座り続けたい与党の都合の良い国に作り変えることが政権担当能力だというのであれば、そんな能力しかない政党には即刻政権の座から降りてもらいたいものだ。



↓いろんな意見を知るのに役立ってます。

皆様のポチッに元気をいただいております。ありがとうございます。
テクノラティプロフィール

最新の画像もっと見る

コメントを投稿