みつばやま小零庵だより

宇宙の塵、その影のような私ですが、生きている今、言葉にしたいことがあります。

「私」の生態系

2016-03-08 05:53:24 | 健康・病気
「人は独りでは生きていけない」と題する山本太郎氏(1964~ 国際保健学)(あの素敵な国会議員と同じ名前だけれど別人)の記事を、岩波書店の「図書」3月号で読んだ。「ひょうそ」という細菌感染症で怖ろしい思いをし、抗生物質のおかげで何とか完治しつつある私は、真剣に読まずにいられなかった。

・・「私」は、実は「私」に常在する細菌とともに「私」を構成している・・ 「私」はマイクロバイオータと呼ばれる常在細菌叢(じょうざいさいきんそう)との相互作用を通して、生理機構や免疫を作動させ、私たちヒトをかたち作る。そのマイクロバイオータが今、大きな攪乱に見舞われている。抗生物質の過剰使用や帝王切開の乱用、伝統的食生活の変化によって。

帝王切開の乱用問題は知らなかった。新生児は経腟分娩によって母親の常在細菌を受け継ぐのだという。

近代医学は、とりわけ感染症において、病原体の「存在」を同定し、病原体の「存在」を排除することによって、その存在意義を示してきた。しかしマイクロバイオータの多様性の喪失や中枢細菌の喪失が突きつける問題は、ある種の「不在」が、病気を引き起こす可能性を指摘する。

抗生物質の使用がいけないわけではない。・・その過剰使用が問題なのである。・・耐性菌を生み出すだけでなく、感染症や免疫性疾患に罹患しやすくなるという、まさに「抗生物質の冬」の時代をもたらすことになる。

耐性菌の問題は一応承知していたけれども、抗生物質が感染症への感受性を飛躍的に高める、とは知らなかった。怖ろしいことだ。

ヒトに常在する細菌は・・祖母から母、母から娘、娘から孫へと受け継がれてきた。長い進化の過程で、私たちヒトは役に立つ細菌を選択してきた。・・自然というマクロの生態系のなかでも、あるいは、人体という小さなミクロの生態系の中でも、人は独りでは生きていけない・・

そして、一度失われた種や細菌は、再び回復することはないという。やがて遠からぬ未来に、ヒト自体もそうなるのだろう・・・

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