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空を愛する者として各地を歩いた際の航空機の写真災害時の活用法などを掲載しています。現場の意見などコメントをください。

災害の発生時刻と即応性

2008-09-11 10:16:42 | Weblog
平成20年6月14日(土)0843、岩手県内陸南部の深さ8kmを震源としてM7.2(最大震度6強)が発生(「平成20年岩手・宮城内陸地震」)した。この地震では、自衛隊や消防防災、海上保安庁、警察など関係機関のヘリコプターの対応が極めて速かったことで賞賛された。関係者の即応性維持に対する日頃の努力に敬意を表したいと思います。その際、某報道機関は、阪神淡路大震災の際は、地震発生から約1.5時間かかっているのと比較すれば教訓が活かされて素晴らしいことだと表現していたが・・・、本当にそうなのだろうか?出動に要した時間はその通りでしょうが、地震の発生時刻とか、気象条件、装備機材の保有状況、待機のための宿舎の整備とか出動に係る環境の全体像を見てからコメントする人は少ない様に思われます。そこで、少し最近の比較的大きな地震と発生時刻と出動の状況について考えて見ましょう。阪神淡路大震災は、ご承知の通り、平成7年1月17日(火)0546に発生しています。当時の冬の早朝は、どのような気象状況だったでしょうか。当日は、日の出が0704、日没が1712で、一年でも一番日中の時間が短い時期です。5時の気温は1℃位(大阪で北東の風1.6m、気温2.4℃)で、霜が降りており、とても冷えていました。神戸の西から淡路島東部地域にかけては小雪でした。ヘリコプターなどを運航したことのある人はよく理解できるでしょうが、航空機をエプロンに搬出して、気象条件をチェックし、暗闇で機体のチェックをし、エンジンを始動しても、油温などがグリーンに入るには相当の時間を要します。また、当日は1月15日16日と連休の翌日でしたので、自宅に帰っていた関係者も多かったはずです。従って、航空操縦士などの参集に相当の時間を要しています。航空機などを運航するためには、いわゆる「チーム力」が問われるのですが、当時としてはその環境条件を客観的に見れば、決して遅くはなかったと感じています。その後一時、関係者の宿舎などを基地近傍に移すことなどが検討されましたが、金が無いことなどを理由に十分に反映されていないことは言うまでもありません。
 そして、平成16年10月23日(土)1756に発生した新潟県中越地震の場合は、秋の夕方で、日暮れ後でした。したがって、新潟空港などへの移動や比較的高い高度での情報収集は夜を徹して行われましたが、十分な機材を保有していない機関は夜間はあまり動けませんでした。陸上自衛隊がヘリコプターに搭載していたFLIR(赤外線映像装置)を活用して、新潟新幹線が脱線しているなどの情報を収集していましたが、リアルタイムでの情報共有が課題とされました。中山間地での被害の細部が明確になったのは、翌朝になってからのことです。土曜日の日が暮れた後の時刻での災害発生への対処の困難性を物語っています。
 さらに、平成19年7月16日(月)1013に発生した新潟県中越沖地震は、午前中の明るい時間帯に発生しています。この地震では柏崎刈羽原子力発電所3号機の変圧器が延焼して注目されました。当日は、月曜日ですが、海の日の休日で多くの人が休んでいた日に発生しています。
 次に当初書きました、岩手・宮城内陸地震ですが、発生時刻が0843と言う正に、防災関係機関が毎朝実施している各種機材のチェックを終了する時間帯であったこと、夏の朝で天候が良かった事が幸いしています。ヘリコプターなどは、朝一番に機能チェックをしておけば、すぐに出動ができます。そのために各機関が日頃訓練しているとおりの極めて早い初動対応ができたわけです。
 ところが、続いて発生した岩手県沿岸北部地震(平成20年7月24日(金)0026発生)では、発生時刻が深夜であることから、即応して対応したのは、機材を保有し、日頃から夜間の訓練をしている自衛隊だけでした。それも沿岸地域は海霧が出ていたために行動が制限される中での必死の情報収集が行われています。夏の地震ですから、早朝4時ころには明るくなるため、早朝から本格的な情報収集が行われたようです。幸いにして地震の発生メカニズムの特徴から被害が少なくて事なきを得ました。
以上大まかに最近の地震について発生時刻と即応性について見てみましたが、さらに詳しく比較検討しておくと今後の参考になると思います。ヘリコプターなどによる情報収集と救助活動の即応性は、地震の発生時刻と極めて関連が深いことがわかります。これを克服するには、要員の交代制をを含めた連続待機態勢体制の整備と夜間などの各種気象条件に応ずる訓練はもちろん、各種装備の充実や宿舎の整備などについて包括的に検討され、これを実行することが極めて重要であることを承知して頂きたいものです。このような検討を踏まえた上での報道機関などのコメントがされることを期待しています。