時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

NHKの偏向報道:ウクライナ南東部における住民投票について

2014-05-12 23:54:48 | リビア・ウクライナ・南米・中東
圧巻、そして痛快でしたね。昨日、ウクライナ南東部のドネツク・ルガンスクで行われた
住民投票で、ドネツクでは89.7%、ルガンスクでは96.2%で同地域の独立が支持されました。


投票率はドネツクで74.87%、ルガンスクで81%でした。

ウクライナ軍が同地域で武力行使をしている最中に行われたことを踏まえれば、
かなり高いものと言えるでしょう。現場にいたドイツの記者は次のように答えています。


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投票しようとする人々は、巨大な流れのようだった。
我々は、それにまず驚き、そもそも大変多くの人々が、
組織上の混乱から投票所を見つけられないのだろうと考えた。

しかし実際はそうではなく、ドネツクでは非常に多くの人々が次々と投票所に集まった。
他の所でも皆同じような状況だったと聞いている。

(http://japanese.ruvr.ru/2014_05_12/272287325/)

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(http://rt.com/news/158276-referendum-results-east-ukraine/より引用)

今回の投票結果で、もうメディアは彼らをテロリストと決めつけることができないはずです。


民衆は、ドネツク人民共和国をはじめとした現地の自治政権の呼びかけに応じました。
上の写真ではマリウポル市の選挙委員会のメンバーから投票用紙を市民が受け取っています。


日本ではテレビをつけても、タイヤと鉄条網にグルリと囲まれた庁舎と、
武装して警護に当たる自警団の姿しか映されていません。


しかし冷静に考えれば、住民投票は建物を占拠しているだけの集団には実行不可能です。


都庁を占拠した数名のテロリストが住民投票を行うと宣言したとして、
都民は投票日に投票所に集まるでしょうか?まずありえないでしょう。
(警察や政府の言葉を信じて自宅に待機するものではないでしょうか?)


「この人たちは、ある意味、この建物に閉じ込められているはずなのに、
 どうやって住民投票など行えるのだろう?」と私は前から気になっていました。


先日、紹介したドネツク人民共和国の議長のインタビューから察するに、
どうもクリミア同様に、現地の各自治体あるいはそれに代わる市民団体が
実際には、現地での独立運動を取り仕切っているのではないでしょうか?


ルガンスク州では州議会が投票に賛意しており、
少なくとも、州議会と同格の存在と現地では受け止められているはずです。



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ウクライナ東部ルガンスク州の州議会幹部会は、予定されている住民投票の支持を表明した。

文書では、
「大きな痛みと共に確認する。
ウクライナでは現キエフ政権とその保護者たちが扇動した内戦が起こっている。

数十人の人々が命を落とし、数百の家庭が喪に服し、
数百万人の人々の心に憎悪が生まれたのは彼らの責任だ。

ウクライナ国民の半分が、犯罪者やテロリストとみなされた。

それは、彼らが考えるウクライナの未来と、
キエフで政権に就いた政治家たちが考えるウクライナの未来が異なっているからだ。

キエフ政権は彼らと対話するかわりに、
数百万人の市民に対して、対テロではなく、まさにテロ作戦を展開した。


これは欧州現代史における自国民に対する最初の軍事作戦であり、市民に対する公のテロだ

と述べられている。
(http://japanese.ruvr.ru/news/2014_05_11/272241833/)

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当日、ウクライナ軍がいくつかの投票所を占拠し、投票を妨害する事件が発生しました。
特に、クラスノアルメイスクでは、占拠した兵士が抗議する市民に発砲、2名が死亡しました。


映像をクリックしてご覧ください。撃たれた市民は無防備の状態でした。
無抵抗の市民に対して軍が発砲し、投票を妨害した。

これは、非常に重大な事実で、投票が物理的な妨害を受けつつ、
軍隊が国民を殺している中で敢行された
ことを物語っています。



このような事件こそ、ウクライナ騒乱の本質を知るのに欠かせない情報であるはずです。
にもかかわらず、NHKは、これを隠匿して報道しました


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しかし、一部のメディアは、1人の有権者が2人分の投票を行ったと不正を伝えるなど、
投票率が実態を反映しているかどうか疑問視されています。

また、地元のメディアによりますとドネツク州西部のクラスノアルメイスクでは、
投票所の近くで発砲事件が起き1人が死亡したということで、
一部で混乱がみられるなかでの住民投票となりました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140512/k10014371381000.html

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なぜ主語を書かないのでしょうか?


私は以前からNHKを批判していますが、今回ばかりは本当に失望しました
私が見たNHKのニュースでも、誰が撃ったのか、そもそも軍隊がそこにいたのかも
わからない映像が流され、「投票の最中に混乱があった」とだけ説明されていました。

先に挙げたYouTubeの映像のうち、
兵士が発砲しているシーンだけ削除して報道していたのです。


なぜ、ウクライナ暫定政権が派遣した兵隊に
無抵抗の市民が撃たれたことを知らせないのでしょうか?


なぜ、NHK(をはじめとした日本のメディア)は代わりに、
不正があった可能性があると、住民投票の信ぴょう性に注目するのでしょうか?


不正が気になるならば、暫定政権が軍を使って
物理的に投票を妨害した事実に着目するはずです。
(まさか、結果が気に入らなくて難癖をつけているわけではなかろう)


これを解くカギは、安倍政権の住民投票に対するコメントです。
菅官房長官は、住民投票の結果について、次のように述べています。


「ウクライナ住民投票、民主的な正当性欠く」
「ウクライナ住民投票、事態の悪化につながりかねず懸念」



つまり、安倍政権の意向に合わせた形で報道したのではないか
と私はにらんでいます。TPPしかり、アベノミクスしかり、
万事が安倍政権を礼賛する内容なのですから。



仮に不正があったとしても、それはもう一度、やり直せばいいだけのことです。
本質的な問題ではありません。しかし、ウクライナ軍が丸裸の市民を攻撃する
というのは(それも投票するために来ただけの民衆にむけて)、
暫定政権の「対テロ作戦」の正体を明確に示してくれるもので、本質的なものです。
(アメリカ政府の見解の欺瞞を暴くという点でも)


加えて、住民投票は民主的な正当性を欠くものだったと述べる
菅官房長官の言葉のほうこそ、民主主義を侮辱したものです。

本来なら、このコメントへの非難がされるはずでしょう。


日頃は、中国のデモについて(それも反日デモでない限りだが)、
声を大にして民衆の声を聞けと叫んでいるわりには、
住民投票という極めて民主的な手段で得た結果を全く顧みようとしない。
コメントに対して、なんら反応もできない。こういう態度でいいのでしょうか?


さて、この事件に関しては英文の記事がありますので、以下に掲載します。
なお、私が訳した文章なので、原文が知りたい人は引用元のサイトを確認して下さい。
閲覧注意!銃殺された遺体の写真もあります。)

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自警団と目撃者の証言によれば、東ウクライナで
軍が抗議者と投票者にむけて発砲し、二名の市民が殺され、数名が傷を負った。

民衆はクラスノアルメイスクの占拠された投票所の周辺に集まっていた。


ウクライナ軍(※)は、日曜日以前からドネツク地方の都市に進軍し、
数か所の投票所と市議会(市役所:原語 the city council building )を占拠し、
内部を兵士で埋め尽くした。

はじめの発砲の報告は、ツィッターからのものだった。

「私はちょうど、軍が一人を殺し、数名を傷つけているのを見ました。」

これはロシア人ジャーナリスト、イリヤ・アサル氏が自分のマイクロブログに書いたものだ。
この後にドネツク人民共和国(自称)の共同議長であるデニス・プーシリン氏が確認した。
アサル氏は死亡した若い男性の遺体の写真にツィッターで次のようにコメントしている。


人々は、武装もせず、兵士に占拠された市役所の外にただ立っていただけでした。




!!!閲覧注意!!!(クリックで拡大できます。)






「一人は死亡し、一人は傷を負ったのを見ました」と、
ラプトリイ社のフィールド・プロデューサーで現場にいたモニカ・カリノーソカは
自分のツィッターに書いている。他の匿名のツィッターの報告でも、
少なくとも、この他に3人が負傷したと言っている。

これら負傷者のうち、1名は病院へ移送される最中に死亡し、
1名は銃弾が貫通した足の傷を現在、治療している。

クラスノアルメイスクで銃撃がされる前、人々は役所の中にいる軍と交渉していました。
 兵士は民衆に対して自分たちは平和のためにここにいるといい、タバコを要求して、
 その次には(我々は知っていますが)銃撃を開始したのです」

エコ・モスクヴィ・ラジオステーションの特派員である
ティムール・オレヴスキー氏は、ツィッターで次のように書いている。

「頭上を銃弾が飛び交っていたときに私たちは地面に伏せていました。」
「殺された人は1人の兵士を押しのけたそうです。
 私は見てませんが。近くに立っていた人がそう言っています」

彼はこう付け加えた。

「正直に言うと、兵士は彼を意味もなく殺したのです。あっというまに。
 それが真相です。なぜです?多くの人はショックの中にいます。」


ロシア・トゥデイのラプトリー社の映像から、数人の傭兵が投票所として
利用された市議会本部に入ることを妨害し、地方では発砲もしたことがわかっている。

クラスノアルメイスクは、ウクライナ南東部の多くの他の場所と一緒に、
住民投票に着手していた。ウクライナ軍の干渉によって、投票はストップした

4つの学校は覆面をした男たちに占拠されたので、人々は皆、撤退しなければらなかった。

地元住民は、ロシア・トゥデイに
「彼らは私たちを脅かして、キエフ政権から送られてきたのだと話していました」
と教えてくれた。

それまでに4万7千人が投票を終えていたと自警団は話している。
http://rt.com/news/158264-dead-ukraine-krasnoarmeysk-shooting/


※原語は、National Guard。つまり、本来なら州兵と訳す単語だが、
それでは「The National Guard entered the city in the Donetsk region」
という文章がやや不思議な日本語になるのではないかと思い、
キエフ政府の指揮下にある軍という意味を強調し、ウクライナ軍と訳した。

なお、「ロシアの声」では国家親衛隊と訳している。

参考記事

(ウクライナ東部ドネツク州マリウポリで戦闘が始まり、
 一般市民に向けて発砲が行われている。
 ドネツク人民共和国政府のデニス・プシリン共同議長が、
 イタル・タス通信の特派員に伝えた。

プシリン共同議長は、
「私たちの情報によると、マリウポリでは戦闘が行われている。
 国家親衛隊とみられる部隊が、市内で一般市民に向けて発砲した」と語った。
 なおプシリン氏は、死者や負傷者に関する情報は確認しなかった。
 http://japanese.ruvr.ru/news/2014_05_09/mariupol/)

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確認した限りでは、NHKだけでなく他のメディアも、
この発砲事件よりも不正の有無のほうに重点を置いて報道しているようです。


不正がなかったら独立を支持するつもりなのでしょうか?
そうは思えません。

第一、不正を言うのであれば、
これはむしろ、軍隊が行ったのではないでしょうか?
銃撃という手段をもって。



この何が何でも相手を悪く言おうとする姿勢は、実のところ、
中国や韓国、北朝鮮に対する報道と全く同じ姿勢です。


当サイトで何度も言っていますが、そういう自国の政府にとって都合のよい解釈は、
結果的に問題の理解を妨げ相手国に有利な形で外交が進む原因になるのでやめるべきです。


といっても、今のメディアがやめるわけがないのですが、
少なくとも、市民団体や個人のレベルで、反対することはできるはずです。


今回の事件は、共産党も同様の見解を示すでしょう(歴史的に同党は反ロシアだから)。
そうであるからこそ、日頃から日本共産党を悪しざまに罵倒している正義の人士たちには
ぜひとも、曖昧な態度や沈黙ではなく、猛然と日本での伝えられ方に抗議してほしいですね。


・追記
なお、前の記事で批判したアムネスティ・インターナショナルは、
暫定政権の武力行使を支持しています。


但し書きで自衛の手段に限定せよと主張はしていますが、
要は「やりすぎない程度に弾圧しろ」という意味ですから弁解の言葉にすらなっていません。

これが世界的に有名かつ代表的な人権団体であり、こういう団体が、
よその国の人権に対してあれこれ文句をつけることは、例えば、慰安婦問題が顕著ですが、
かえって当事者たちの問題解決を妨害するもので、非常に問題があることだと言えるでしょう。


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