Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Noah Zacharin

2006-08-28 | Folk
■Noah Zacharin / Noah Zacharin■

 夜になると虫の音が涼しげに聴こえてくるようになりました。 もうすぐ、SSWやフォークを聴くには絶好の季節とも言える秋がやってきますね。 今日、スーパーに行ったらビールのコーナーが「秋味」だらけだったのには驚きましたが。
 さて、そんな晩夏に取り出したのは、カナダのモントリオールを拠点に現在も活動しているフォークシンガー、Noah Zacharin のデビュー作となる名盤です。 1982 年に発表されたこのアルバムは、彼の公式ページのなかでは、「The Green Album」とも呼ばれているようです。 ほぼ、自主制作レベルで発表されたことから、1982 年当時には、このアルバムを輸入盤店で見かけたことはありませんでしたが、この緑の枠取りとモノクロで想いに耽る Noah の表情は、いつ見てもインパクトがあります。
 
 アルバムの内容も、予想を裏切らないカナディアン・フォークのメインストリームとも言えるものになっています。 2 曲のカバーを除いて、すべてオリジナル。 ミュージシャンも、曲によってベースに Pat Donaldson を配するだけで、ほとんどが引き語りとなっています。 この Pat Donaldsonは、元 Fotheringay でRichard Thompson のソロなどでも見かけるベーシスト。 このアルバムのために、イギリスからモントリオールまで海を渡って参加したことになります。

 アルバムは個人的な好みでは A 面が好きですね。 「Dawn Song」、「Clear As The Air」はクールな中に真摯な姿勢を感じることのできる名曲。 Leonard Cohen のスタンダード的な名曲「Chelsea Hotel」のカバーも、オリジナルの持つ独特の渋みや重たさがない分だけ、素朴さが前面に出た仕上がりになっています。 春の空気というタイトルそのままの「Air Of Spring」、心地よいカッティングと伸びやかなボーカルが自由な気分にさせてくれる「Take Me Away」と並ぶ後半は素晴らしい出来です。
 B 面に移ると、一度聴いたら忘れられないサビがユニークな「Feel Like A Jukebox」以降は、やや憂いを帯びた曲が続きます。 Patrick Sky のカバー「She」はオリジナルを含むアルバムを持っていないので比較して語ることはできません。 「Seasons Of Glass」と「Widow Of Raven Cliff」はともに哀愁を帯びたマイナー調の曲。 こう流れてくると、ラストの「Europe」には何かひと工夫あると思いたいものですが、それがあるのです。 このラストはギターのみのインストなのですが、この曲がなんとも言えずに素晴らしいのです。 特に大げさな展開や斬新なアレンジやメロディーなど無いのですが、ラストに相応しい内容だと思います。 この曲の余韻があるからこそ、僕はこのアルバムを名盤と呼ぶことを躊躇しないのです。 (大げさですな)

 Noah Zacharin は公式ページによると、このアルバムを含む、全ての作品が CD で入手することができるようです。 僕はこの「The Green Album」しか聴いたことがないのですが、2000 年以降のアルバムは何だか聴いてみたい気分になりません。 ジャケットやタイトルから受ける直感だけが、その理由なのですが。



■Noah Zacharin / Noah Zacharin■

Side-1
Dawn Song
Clear As The Air
Chelsea Hotel
Air Of Spring
Take Me Away

Side-2
Feel Like A Jukebox
She
Seasons Of Glass
Widow Of Raven Cliff
Europe

All Songs by Noah Zacharin
Except ‘Chelsea Hotel’ by Leonard Cohen , ‘She’ by Patrick Sky

Noah Zacharin : vocals , guitars , harmonica
Pat Donaldson : bass

Recorded at Studio Production , Montreal
Engineer : Gordon Gibson

Soffwin SW-33-101