RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

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能面と能装束 -みる・しる・くらべる-

2014-09-09 21:30:00 | 美術
見てきました

三井記念美術館

会期は2014年7月24日から2014年9月21日。

三井記念美術館、夏の恒例企画"美術の遊びとこころ"シリーズ。
今回は第7回目。
扱うテーマは能。
日本の伝統芸能である能。
難解なイメージがあり、また仮面劇ということも不思議な印象を与えます。
今回は能で重要な面と装束をかたちや文様など様々な角度から見ていく展示となっています。

まずは面から。
能面は能で使われる仮面。
能の世界では"面(おもて)"と呼ばれ大切に伝えられてきました。
"能面のような表情"という言葉がありますが、実は能面は細かく分けると200以上の種類があるのだそう。
まずは能面を下記の5つに大きく分けて展示してありました。

翁(おきな)面
→「翁」という特別な演目専用
尉(じょう)面
→老人男性の能面。老人や神など。
鬼神面
→神や精霊など超越的な力を持つもの。
男面
→原則として現実の男性の役は能面を使用しない。この面は公家や武将の霊、美少年、盲人の役など。
女面
→年齢、正確によって多数あり。

詳細はそれぞれの作品のところで書いていきますが、ざっとこんな感じで使われています。

能面はヒノキなどの針葉樹彫って作っていますが、裏は漆が塗られています。
これは耐久性や美的効果の観点から。
今回、面の裏側が見えるように展示されているのでそちらも注目です。

1-1伝日光「翁(白色尉)」
"翁面"です。
"翁"とは特別なときに上演するもの。
"能にして能にあらず"とも言われます。
というのも、明確なストーリーがないから。
天下大平と五穀豊穣を祈願する儀式的なものだそう。
長いひげに白い綿のような眉毛。
この眉はボウボウ眉というのだそう。
にっこりと笑った優しい表情。

1-3「父尉」
こちらも"翁面"
こちらもボウボウ眉。
そして下あご部を紐で結ぶ切りあごという形です。
1-1と似ていますが目は小さく釣り目です。
この面は別名式三番とも呼ばれる「翁」
当初は、父尉、翁、三番叟の3番の曲でしたが、室町初期には父尉を省いて舞うのが普通に。
この面室町時代制作のものですので、その後ほとんど使われていなかったと思われます。
古い能面の原型をとどめる貴重なもの。

1-4伝三光坊「舞尉」
"尉面"です。
尉は翁よりも人間に近い存在。
これはその名の通り、舞い踊る尉用の面です。
優雅で品のあるように見えてきます。

1-6洞白満喬「癋見悪尉」
洞白満喬は江戸時代の名工。
こちらも尉ですが、目が金色。
どちらかというと鬼神よりです。
天狗の役などに使われるのだそう。
目は金銅製の板を使っているそうです。
つるりとしています。

1-7伝福来「中将(鼻まがり)」
きれいな二重に眉を顰め、薄い口髭にお歯黒をした男性の面。
どことなく憂いを帯びたような表情で品のある顔。
在原業平の顔を表しているとも言われています。
業平の亡霊のほかに、平家の公達の亡霊などに使われるのだそう。
この面、裏には"本"の字が入っています。
これは"本面"といって各流派が規範とする面。
面打ちはこれを写して制作することが基本です。
鼻まがり、は微妙に鼻筋が曲がっていることから。

1-8出目満照「景清」
出目満照は桃山の名工。
この面は"景清"で使われるもの。
景清とは平景清。
"悪七兵衛"の異名を持つほど勇猛でありました。
その勇猛なイメージとは一転、おでこには深いしわ。
目は細くほとんど閉じられた状態。
景清は捕えられ盲人となったのです。
なんだか泣いているようにも見えます。

1-9伝龍右衛門「小面(花の小面)」
ふっくらと若々しい女性の面。
"花の小面"となっていますが、これは豊臣秀吉が愛した"雪・月・花"の3つの面のうちの"花"なのです。
花は三井記念美術館所蔵。
月は江戸城の火災で焼失。
雪は京都金剛宗家の所蔵となっています。

1-10伝日氷「痩女」
頬はこけ、目はうつろ、生気のない女性の顔。
髪だけが黒々としていて異様な雰囲気です。
これは恨みを抱く女性の幽霊役。

1-11「不動」
青い肌の不動明王。
金色の目に大きな口、キバ。
曾我兄弟の仇討を描く"調伏曾我"の後シテ不動明王の専用面です。
この面の異名が"肉付き面"
うしろを見てみると漆が塗られておらず、素地のまま。
そして黒い斑点がぽつりぽつりとついています。
この面を掛けたら顔から取れなくなり、無理やりはがしたら肉がついたままになってしまった、という伝説から"肉付き面"というのだそう。
黒い斑点が血のように見えてきますが、実際には木のヤニと考えられているそうです。

1-12伝赤鶴「黒髭」
横から見るとよく分かりますが顎が大きく突き出されています。
ぎょろりとした目、大きな口、くっきりとした鼻。
雨水の神、龍神を表しています。

1-13伝赤鶴「獅子口」
見開いた目、むき出しの歯、鼻も大きく、おでこには深いしわ。
"石橋"専用の面で文殊菩薩に仕える獅子。
力強い作品です。

2-1伝孫次郎「孫次郎(オモカゲ)」
ややほっそりとして上品で優しい顔立ちの女性の面。
女性の面なのに男性の名前がついているのは面打ちの名にちなんでいるから。
この作品に"オモカゲ"とついているのは、若くして亡くなった妻の面影を映したから。。
素敵な面です。

展示室4は能装束です。
室町時代は日常着を流用したため質素なものでしたが、桃山時代になり染織、刺繍の技術が向上し優れた装束が作られるようになります。
複雑な文様も生まれますが、それらは演目と関連付けられます。
基本的には上着・着付(下着)・袴の3種になります。

4-1「蜀江錦翁狩衣」
"蜀江文"とは"翁"で着用する狩衣のみに使用。
八角形と四角形が連続する幾何学的な文様です。
その中に唐草文が配されています。

4-2「白繻子地鱗模様摺箔」
白地に金色の三角形が連なる文様。
鱗のように見えます。
これは女性の恨みの象徴。
蛇や龍の化身を演じるときに使います。

4-3「黒繻子地油煙形縫箔」
黒に六弁の花が美しい装束。
六弁の花の中には稲妻文、亀甲文など様々な文様が。
色とりどりでとても美しい装束。

4-5「緋綸子地立涌寿文字散模様半切」
半切りとは袴のようなもの。
赤い地に青と白の曲線が上るかのように施されています。
曲線の間には金色で"寿"と。
めでたい感じのする装束です。

4-7「納戸地龍雲模様側次」
側次とは袖のない表着。
武士の簡略的な甲冑姿や中国人、鬼神役に着用します。
全面的に刺繍が施され、宝珠をもつ龍がいます。
色も華やか。

4-8「紅白萌黄段亀甲石畳雲板蝶火焔雲笹模様厚板唐織」
落ち着いた色彩に蝶の刺繍が目立ちます。
蝶は不老不死の象徴ということから武士に好まれたそう。
武士の霊の役に使います。
蝶が、、ちょっとモスラとかそういったもののようにも見えます。

4-9「刺繍七賢人模様厚板唐織」
人物や動物などがいっぱい刺繍されたにぎやかな衣装。
年を取った人物は近くに竹があるため竹林の七賢人と思われます。
また唐子や鶴、象など吉祥の動物のほか、ハリネズミのような生き物まで。
大変珍しいものだそう。

4-12「茶納戸島取地秋草模様唐織」
なでしこに女郎花、桔梗、菊など秋の植物が斜めの縞地に配されています。
色も落ち着き秋らしい衣装。
素敵です。

4-14「金地ちぎれ雲毘沙門亀甲雲板模様法被」
法被は幅広の表着。
雲板文が金地に華やかです。
"鞍馬天狗"などに使うそう。

4-15「紅白萌黄段扇面秋草観世水模様唐織」
観世水とは渦を巻くような水の流れをデザイン化した文様。
桔梗や菊が施され、優美な色彩です。

次の展示室5はまたまた面。
ここでは一見同じように見える様々な能面を比べてみるという面白い展示となっていました。

5-1伝春日「翁(白色尉)」5-2伝春日「三番叟(黒色尉)」
どちらも"翁"に使われる面。
白はそれ自体が神体だそう。
確かに格調高く見えてきます。
黒は健康的で五穀豊穣
にっこりと人懐っこそうな表情です

5-3伝赤鶴「大飛出」5-4伝赤鶴「小飛出」
びっくりしたかのように目と口をあけた面。
目の大きさの違いで神威の程度が表現されているのだそう。
大は雷神などで小は動物の亡霊や精霊などだそう。

5-9伝夜叉「喝食」5-10伝春若「大喝食」
寺に使える少年。
あらゆる芸事に秀でる美少年だそう。
前髪はいちょう形とおかっぱとありますが、展示品はいちょう形。
この前髪の大きさで「大」がつくのだそう。

5-11金剛頼勝「中将」5-12伝夜叉「平太」
どちらも若い男性を表現するときに使います。
11は在原業平モデル
公達や平家の亡霊を演じるときに使います。
顔は白いです。
12は素朴な顔立ちで色黒。
源氏の亡霊などに使います。
こういった違いで演じ分けるのですね。

5-13伝龍右衛門「般若」5-14「蛇」
どちらも怖い顔をしていますが女性の面です。
般若はまだ人間っぽく目元に優しさが見えます。
蛇は大きくしゃくれた顎、大きな角、ぎらぎらとした印象です。
なお、「蛇」は"道明寺"専用です。

展示室7には三越伊勢丹が所蔵する歌舞伎の衣装が展示されています。
かつて三越は1907(明治40)年に衣裳部を設置。
歌舞伎公演の貸衣裳業を営んでいました。
そのため昭和初期の歌舞伎衣裳役350点を保存しています。
歌舞伎役者が実際に着用した衣装13点が展示されていて豪華です。

以上になります。
三井家ではその昔、自宅にあった能舞台で実際に能を舞っていたのだそう。
そんなお家もあるんですね。。
静かで優美な展示でした。



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