RuN RiOt -marukoのお菓子な美術室-

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ラファエル前派展 英国ヴィクトリア朝絵画の夢 (その1)

2014-03-14 21:30:00 | 美術
見てきました

森アーツミュージアム

会期は2014年1月29日から2014年4月26日。

【それは懐古か反逆か】
このフレーズとともにチラシに使われているのははラファエル前派の画家、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「プロセルピナ」
詳細の日程が決まる前からチラシを集め、楽しみに楽しみに待っていました。

2014年1月 笑
2008年のミレイ展(Bunkamura)、2013年のターナー展(東京都美術館)に続くテートと朝日新聞の共催展だそう。

さて。
ラファエル前派についてですが。
1848年、ロンドン、ロイヤル・アカデミーで学ぶ
ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ
ウィリアム・ホルマン・ハント
ジョン・エヴァレット・ミレイ
上記3人が中心となり、
ジェームズ・コリンソン
フレデリック・ジョージ・スティーヴンス
トーマス・ウールナー
ウィリアム・マイケル・ロセッティ
の4人が加わって結成された集団。
正式名称は《Pre-Raphaelite Brotherhood》
《ラファエル前派兄弟団》となります。

その由来はルネサンスの画家、ラファエロより前、ということになります。
19世紀のアカデミーには古典偏重の美術教育がなされていて、ラファエロの絵画を模範としていました。
しかし、その劇的な描写はわざとらしいと考えた若者たち。
彼らはそれよりも前の芸術、中世や初期ルネサンスを範とし、素朴な絵画に立ち戻ろうという意味を込め"ラファエル前派"と付けました。
ラファエロ、、、悪くないのに悪者扱い。笑
今回はそんなラファエル前派の活動を取り上げた展示となります。
これまでラファエル前派の画家の作品は見てきていますが、この運動をしっかりと取り上げた展示は初めてかもしれない。
展示は1章から7章までで構成されています。
今回2回に分けて書いていきます。
今日は「その1」
第1章から3章までです。

《1.歴史》
17世紀、ヨーロッパでアカデミーが創設されて以来、最も重要だったジャンルです。
聖書、神話、文学、歴史的事件などを描きました。
ラファエル前派はこの分野で、新しい形式を作り上げます。
彼らはシェイクスピアやアーサー王伝説などに題材を見出し、服装や背景は史実に忠実で本物らしい道具立てを再構成。
登場人物は仲間うちのモデルを使い真実味のある作品を作り上げました。
これらの作品は写実性と豊かな人物像を特徴とし、ヴィクトリア朝の新興富裕層の心をとらえますが、アカデミーの慣行からはかけ離れていたため、批判を受けました。

アーサー・ヒューズ「4月の恋」
青い服の女性がとにかく目をひきます。
美しい色彩に惚れ惚れ。
これから男性と会うのかな。。
はにかんだようにも不安げなようにも見えるその表情。
まわりを咲く花々もこの恋が咲くのを祝っているかのよう。
紫、青、緑はヒューズ独特の色だそうです。
美しい。

ウィリアム・ホルマン・ハント「クローディオとイザベラ」
シェイクスピアの"尺には尺を"に着想。
描かれているのは鎖につながれた兄クローディオと妹で修道女のイザベラ。
死刑となった兄の命を救うため純潔の提供を求められた妹。
イザベラはその申し出を断ります。
その兄に運命を受け入れるようなだめている場面が描かれています。
暗い室内に対し、窓の外の明るさが目立ちます。
青い空やピンクの花など。
細部まで丁寧に描き込まれています。

フォード・マドックス・ブラウン「リア王とコーディリア」
シェイクスピアの"リア王"から。
リア王とコーディリアの再会の場面です。
野営地で眠る王に両手を差し出す娘コーディリア。
古代風の衣装は細かく描き込まれ、とても美しい。

フォード・マドックス・ブラウン「黒太子45歳の誕生日にシーン宮殿で父エドワード3世と延臣たちに「タスタンス姫の伝説」を読んで聞かせるジェフリー・チョーサー(エドワード3世の宮廷に参内したチョーサー)」
人々はチョーサーの話に耳を傾けつつ思い思いの格好で過ごしています。
エドワード3世は愛人とともに、黒太子と呼ばれたエドワード皇太子は妻のひざにもたれています。
この作品ではロセッティがチョーサーのモデルを務めました。

フィリップ・ハーモジニーズ・コールデロン「破られた誓い」
あぁ、と思わず声が出そうになります。
腰に手をやりあきらめたような表情の女性。
破れかけた木の戸の向こうには男性と女性。。。
あぁぁぁぁぁ。。。
もういやだ。考えただけでも切なくって。。
手前の女性の周りにはかれた花びらや萎えたアイリスなどが意味ありげに描かれています。
この作品、とっても色彩が美しい。
美しいだけに余計切ない感じが伝わってきます。

ジョン・エヴァレット・ミレイ「マリアナ」
この作品、2008年のBunkamuraの展示でも来日しました。
たしか。
「オフィーリア」ばかりに目が行きがちでうろ覚えなのが残念。。。
シェイクスピアの"尺から尺を"を引用したアルフレッド・テニスンの詩"マリアナ"から。
船の難破により持参金を失い、婚約者アンジェロに捨てられたマリアナ。
塀に囲まれた館で孤独な生活を送ります。
描かれているのは刺繍の手を止めて伸びをしているところ。
青いドレスの艶やかさ、ステンドグラスの輝き。
外の明るさも伝わってきます。
色彩がとにかく美しい。
床の上にネズミがいますが、こちらもテニスンの詩に登場するのだそう。

ジョン・エヴァレット・ミレイ「オフィーリア」
Bunkamuraで見たとき以来。
相変わらず美しい。
はっとさせられるのです。
シェイクスピアの"ハムレット"からです。
オフィーリアは父親を恋人のハムレットに殺され、正気を失い、歌いながら川辺で花冠を作ります。
それを川縁の枝に掛けようと、枝を掴んだところその枝が折れ、川に転落。
描かれているのは、川に流されながら死が迫っているのに歌を口ずさんでいた、というシーンです。
まさに、これから死にゆく姿。
ゆっくりと流れていく感じが伝わってきます。
顔は蒼白、目もうつろ。
周りの緑の美しさと花々の輝きがその死を際立てているようです。
細かく描かれたドレスも美しい。
ドレスの上に、先ほどまで彼女が握りしめていたであろう花々が散らばっていますが、それも美しい。
花に囲まれ静かに流れていく様子は、まるで棺の中に入れられているかのよう。
ミレイは、サリー州のユールにあるホッグスミル川のほとりで週に6日、毎日11時間、5か月にわたってこの川を描き続けたそう。
だから描かれている花々の季節は混ざっています。
これらの花にはそれぞれ寓意が込められているのだそう。
オフィーリアのモデルは19歳のエリザベス・シダル。
のちにミレイの友人でラファエル前派の代表的な画家、ロセッティの妻となります。
ミレイはバスタブに水を張り、モデルを浮かべて描きました。
時は真冬。
ミレイは絵に集中しすぎてバスタブの水を温めるために燃やしていたオイルランプの油が切れたことに気づきません。
シダルは冷たい水のながでも辛抱し、結果肺炎に。
シダルの母親から医療費の請求書がミレイにだされたことは有名すぎるエピソード。
幻想的で美しい作品です。

ジョン・エヴァレット・ミレイ「釈放令、1746年」
1746年にスコットランドで起こったジャコバイトによるグレートブリテン王国に対する最後の抵抗。
イングランドに敗れて牢獄に入れられたスコットランド兵が釈放されるシーン。
子どもと犬を連れた妻と抱き合う再会の場面です。
旦那さんは奥さんの方に頭をもたれ、犬は主人に寄りかかり嬉しそう。
子どもは父親に渡すためなのか小さな花束を手にしています。
ですが奥さんは無表情。
左手で子供を抱き、右手は旦那さんの後ろを通して看守に釈放令を突き付けています。
今まで家を、子供を守ってきた強さを感じさせました。

ヘンリー・ウォリス「シェイクスピアが生まれた部屋」
誰もいない静かな空間。
汚れた壁にいくつかのアンティークの椅子。
この部屋は実際にヘンリー・ストリートにある生家。
今も当時のまま保存されているそうです。

ヘンリー・ウォリス「チャタートン」
トーマス・チャタートンは中世詩の贋作で有名となったイギリスの詩人。
野心にあふれ、詩作を続けましたがなかなか認められず、1770年にわずか17歳9か月の若さでヒ素自殺をしました。
描かれているのはそのときの様子。
ベッドの上にぐったりとしていますが、服はきちんとしていて靴も履いています。
窓から差し込む光の具合とかがドラマチックさを演出しています。
右手にはガラスの小瓶。
薬が入っていたのでしょうか。。
なんだか切なくも感じる情景です。

ウィリアム・モリス「麗しのイズー」
モリスが描いた唯一のイーゼル絵画とのこと。
ドレスや部屋の壁などにモリスらしさがいっぱいです。

《2.宗教》
19世紀前半のイギリスではプロテスタント系の英国国教会の中から、教会の歴史的権威や儀式を重んじるオックスフォード運動が起こり、キリスト教信仰の実際のあり方に関心が高まりました・
ラファエル前派は盛期ルネサンス以降あまり顧みられなくなった中世キリスト教絵画の図像や形式を復活させます。
かれらは聖書を人間ドラマの宝庫とみなし、神の教えというより文学的、詩的な意味を求める対象としました。

ジョン・エヴァレット・ミレイ「両親の家のキリスト(「大工の仕事場」)」
描かれているのは大工の家族。
大工仕事をしている老父。
小さな男の子は手のひらに釘をさしてしまい、血を流しています。
それを心配した母親に安心させるようにキスをしています。
その脇には水を運ぶ子供。
家の外には羊。
人物は愛らしい表情をしています。
これは聖家族を表現したもので怪我をした子供はキリスト。
寄り添う母は聖母マリア。
老父はヨゼフで水を運ぶ子供は洗礼者ヨハネ。
聖家族は理想化されて描く時代だったため、俗っぽすぎると批判されたそう。
手のひらから滴る血が足の甲にも垂れています。
後の受難を示しているかのようです。

フォード・マドックス・ブラウン「ペテロの足を洗うキリスト」
弟子ペテロの足を洗うキリストが描かれています。
師が跪き足を洗う様子に戸惑いのような緊張のような表情のペテロ。
他の弟子たちはそれを覗きこんで見ています。
一番左にいるユダの表情が怪訝な感じにも見えてしまう。。。
当初、キリストは裸だったようですが、批判を浴びて服を着せたそう。
めんどくさいな。。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「見よ、我は主のはしためなり(受胎告知)」
白いベッドに座るマリアに白いユリの花を持った天使ガブリエルが受胎を告げる場面。
ガブリエルには翼がなく、マリアも怯えているような表情をしているなど、これまでの"受胎告知"とはまったく違うもののよう。
白く簡素な部屋は病院のようにも見えました。
マリアのモデルは妹のクリスティーナ、ガブリエルは弟のウィリアムが務めました。
聖書の話というより、人間ドラマといった俗っぽさが感じられます。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「ナザレのマリア」
小川の流れる景色の中、スコップを手にバラと百合の手入れをするマリア。
白いハトがその近くを飛んでいます。
マリアやキリストには頭に金の輪が描かれますが、この作品ではハトにも描かれています。
柔らかな色彩が印象的。

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「礼拝」
聖母とイエス、そしてダビデが羊飼いと王の姿でやってきて祝福している場面。
周辺には天使たち。
天使は外からも、屋根の破れたところからも覗いています。
人物は暖かく描かれています。

ウィリアム・ベル・スコット「大洪水の前夜」
お酒を飲んだり食事をしたり。
のんびりと過ごす人々。
動物もくつろいでいます。
右端には巨大な箱舟に乗り込もうとする人々が列をなしています。
遠くには大洪水の予兆の黒い雲。
のんびり過ごす人々は堕落した宮廷で、船に乗る人を笑っているかのよう。
くつろいでいると思われる足元のチーターは退廃の象徴。
色々込められた作品なのです。

《3.風景》
ラファエル前派の画家たちは評論家ジョン・ラスキンの「自然に忠実たれ」という言葉に基づいて、自然を油彩で描く手法を確立します。
彼らの自然の見方はパノラマ的な景観を避け、近くと遠くを一つのまとまりとしてとらえ、すべての要素を均等かつ正確に描いたそう。
またこれらの風景画はダーウィンの『種の起源』発表前後のイギリスの自然科学、地質学、植物学、気象学などの発展に影響を受けています。

ウィリアム・ホルマン・ハント「幽霊屋敷」
どこに幽霊屋敷が??と思う作品。
庭を描いた美しい風景画です。
青々と茂る草、流れる水、木漏れ日。
色彩も美しい作品。
右奥に見える小さな建物がその幽霊屋敷なんでしょうか。。

ウィリアム・ホルマン・ハント「ユールの穀物畑」
青い空と黄金色の畑の対比が美しい作品。
色彩も鮮やかで情景の広がりが容易に想像できます。

トマス・セドン「謀略の丘から望むエルサレムとヨシャファトの谷」
この画家は信仰心が厚く、エルサレムを旅して描いたそう。
なんと5ヶ月も写生したとか。
段々の景色、オリーブ山、モスク。
こまやかに描かれた景色は見事としか言えません。
羊の毛並みまでも見えます。
強い日の光も感じ、その空気まで伝わってくるようでした。

チャールズ・オールストン・コリンズ「5月、リージェンツ・パークにて」
この画家はラファエル前派のメンバーに加わることはありませんでしたが、ロイヤルアカデミーで知り合ったミレイと1840年代後半から親しく交際を続けました。
描かれているのは家から見えたリージェンツ・パーク。
ラファエル前派の風景画としては唯一ロンドン中心部を描いたものだそう。
綺麗に手入れされた公演。
人気も少なくのどかで静寂な日常が描かれいます。
奥に見える池の表現がすばらしいです。

ジョン・ブレット「ローゼンラウイ氷河」
ものすごい表現力。
リアリズムの絵画かと。
石の表現、雪や氷の迫る様子。
目の前で実際に起きているのかと思うほど。

フォード・マドックス・ブラウン「ヘンドンのブレント川」
森の中を静かに流れる小川とそのほとりで本を読む若い女性。
全体的に暗い色調で描かれているのですが、そこに差し込む光が美しい。

ジョージ・プライス・ボイス「サリー州ウォトンの風景、秋」
美しい田園風景。
緑も美しいのですが、目を惹いたのは空。
秋の淡いオレンジ色の優しい光に満ちた空がとにかく美しい。

ジョージ・プライス・ボイス「木立の中でブナの側に立つ少女」
大きな大きなブナの木とそばを歩く少女。
バランスがとても素敵です。
ブナの木は覆い尽くさんとばかりに枝を伸ばし葉を茂らせています。
その奥には遊ぶ子供たち。
少女は一緒に遊ばないのかな。。
それとも先に一人帰るのかな。。
そちらをちらりとみる少女の気持ちが気になります。

36ウィリアム・ダイス「ペグウェル・ベイ、ケント州―1858年10月5日の思い出」
海岸で貝殻を拾う女性たちが描かれています。
描かれている景色がとても美しく壮大で人物に帰って違和感が。。
景色は白亜の崖から空、海、映り込む光までとても細密に描かれていてリアルです。
描かれている人物は画家の家族。
スカーフなどを重ね海沿いの風から身を守ろうとする女性。
こちらも表情までリアルに描かれています。
ここだけ切り取って肖像画にできるのでは、と思うほどです。

以上が1章から3章までです。
明日は4章から7章まで書いていきたいと思います。



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