ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第41回 Michel Trino Wines@「キャッチ The 生産者」

2009-05-14 10:00:15 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2007年12月21日)

第41回  Nicolas Cornejo Costas  <Michel Trino Wines>

今回のゲストは アルゼンチン『ミッシェル・トリノ』 のマーケティング・マネージャー、ニコラス・コルネホ・コスタスさんです。


<Nicolas Cornejo Costas> (ニコラス・コルネホ・コスタス)
ミッシェル・トリノ社のマーケティング・マネージャー 。


“カファジャテ”はどこにある?    - Michel Trino -  

アルゼンチンは南米で最も大きなワイン生産国で、世界でも第5位(04年の統計)。

しかしながら輸出量は少なく、国内消費が大半を占めているため、実際にはまだ一部のワインしか海外に紹介されていないというのが現状です。
しかし、このところは国際市場を意識し始めたワイナリーも増え、世界に通用する高品質ワインが次々と誕生しています。

日本でもアルゼンチンワインは以前から親しまれてきていますが、その産地の大半は中央西部のメンドーサ(総生産量の70~75%)とサン・ファン(同約20%)で、この2つですでに90~95%になります。

ところが、今回紹介する「ミッシェル・トリノ」は、ここには入らないマイナーな地域にワイナリーを構えています。

それが北西部サルタ州(Salta)“カファジャテ”(Cafayate)地区です。

南緯26度で、メンドーサから1000km以上北に位置しているので、さぞかし暑いだろうと思いきや、ブドウ畑は標高1000~2000mの山間部の渓谷にあるため、ブドウ栽培に非常に適した環境にあるというのです。

さて、このカファジャテという土地では、一体どんなワインがつくられているのでしょうか?



Q.カファジャテはどんなところですか?
A.アルゼンチンには北から南まで大きく5つのワイン生産地がありますが、その最も北に位置するのがサルタ州です。当社のワイナリーのあるカファジャテは標高1700mの高地にあり、渓谷(Cafayate Valley)にブドウ畑が広がっています。

カファジャテは昼間の日照がたっぷりとありますが、朝晩はぐっと冷え込みます。
そのためにブドウがゆっくり育ち、酸が豊かでフルーティーな香りが高まり、アロマティックなものになります。ゆっくり育つのでブドウが均一に育ち、日照のおかげで色付きが良く、エネルギーを充分蓄えたブドウが得られます。


Q.土壌の特徴は?
A.土壌はとても貧しく、石が多い砂質です。また、雨が少なく、サボテンが生えるような乾燥した地域のため灌漑が必要で、アンデス山脈の雪解け水を使って灌漑(ドリップイリゲーションシステム)を行っています。この地にはインカ帝国時代の水路が見られるので、その流れを止めて使ったりもしています。


Q.カファジャテのワインはどのような特徴がありますか?
A.天候が安定しているので、安定したワインがつくれます。また、1日の寒暖の差が大きく、土壌も特殊なので、個性を持った、消費者にわかりやすいワインをつくることができます。
ブドウ品種は、白はトロンテス、赤はカベルネ・ソーヴィニヨンが適しています。


Q.『ミッシェル・トリノ』 について教えて下さい
A.1892年、ダヴィッド・ミッシェルとガブリエル・トリノによって創設されたため、ワイナリー名を『ミッシェル・トリノ』としました。

カファジャテ地域はワイナリーの数は12~13ほどしかありませんので、当社はブティックワイナリー的存在といえ、スーパープレミアムワインに特化しています。

自社畑は720haで(年間生産量500万リットル)、ブドウ畑はすべてワイナリーから15分以内のところにあります。ブドウ樹の平均樹齢は30年です。

当社はHACCP*1やGMP*2などを取得し、また、一部の畑ではオーガニックの証明(Argencert)も取得しました。
5つのレンジのうち、日本にはこのオーガニックワインを含む2つのレンジを輸出いたします(07年10月より販売)。


Q.オーガニックワインについて教えて下さい
A.ブランド名は“CUMA” (クマ)といいます。
当社では1990年代の初めからできるだけ何も使わない農法に取り組み始めました

CUMAはFinca El Transito Vineyard (エル・トランジット)の畑(約40ha)のブドウからつくられます。02年に申請を行い、06年10月から新レンジとしてリリースしています。
品種はトロンテス、マルベック、カベルネ・ソーヴィニヨンの3アイテムです(日本ではトロンテスとカベルネを発売)。

CUMAは、現地のアイマラの言葉で“クリーン&ピュア”の意味があります。次の世代にクリーンでピュアな環境を残していこうということから生まれたワインです。




Q.トロンテスについて教えて下さい
A.トロンテスは、スペイン語圏、特にスペイン北西部ガリシアによく見られるローカル品種です。甘い香りがあり、モスカートのファミリーに属していますが、飲むと甘くはありません。
フローラルな香りが強く、バラ、ジャスミン、菩提樹のアロマを感じますが、食事によく合うワインだと思います。日本料理にも合い、スパイシーな料理にも最適です。


Q.日本で発売されるもう一つのレンジとは?
A. “DON DAVID ” (ドン・ダビ)といい、創設者のDavidに敬意を表して名付けました。
エレガントで複雑なファインワインで、すべて樽を使用しています(日本ではシャルドネ、トロンテス、カベルネ・ソーヴィニヨン、マルベックの4種を発売。すべてレゼルバ)。

CUMAはフルーティーでナチュラルなテイストのワインですが、長い熟成期間を要するDON DAVIDは ボルドーを思わせるような複雑さとエレガントさが特徴です。




*1 HACCP
Hazard Analysis and Critical Control Point、
安全な食品をつくり出すための危害の分析や抑制方法の継続的措置を行うこと

*2 GMP
Good Manufacturing ractice、適正製造規範の意


<テイスティングしたワイン>

DON DAVID Chardonnay Reserve 2006
樽、ナッツの香りが豊かで、果実味と繊細な酸がきれいです。クリーンで凝縮した感じがあり、広がり方はそれほどでもないものの、余韻の長さを感じます。

「アメリカンオークとステンレスタンクを50%ずつ使用し、フルーツとオークのバランスを重視しています」(ニコラスさん)


CUMA Organic Torrontes 2007
シャルドネよりも香りが華やかで、きれいな酸味があり、果実味が軽快。爽やかに気軽に飲めるタイプのワインだと感じました。

「トロンテスは、現代の若い人の食生活にマッチする味わいのワインだと思います。東南アジア料理やカレーにも合うのでは?」(ニコラスさん)


DON DAVID Torrontes 2007より繊細でデリケートな花の香りがあり、エレガント。口当たりもソフトで複雑味があります。グレープフルーツの皮のようなほろ苦さ、ふくよかさ、余韻の長さが印象的。

「45%はステンレスタンクで、残り45%はトラディショナルな樽、10%はアメリカンオークの小樽を使用しています。CUMAよりも繊細な料理向きだと思います」(ニコラスさん)




DON DAVID Malbec Reserve 2005 
深く黒々とした紫色で、燻したベーコンのようなスモーキーなニュアンスを感じます。アタックはまろやかで、とろみ、濃度があり、なめらかさがあります。果実味が豊かで、タンニンはキメ細かく、タンニンは甘ささえも感じました。

「05年は天候に恵まれ、よりフルーツの感じと色の濃いキャラクターが出ています。スパイシーな感じが出ているのが、カファジャテの特徴です」(ニコラスさん)


CUMA Organic Cabernet Sauvignon 2007
青っぽい野菜の香りがあり、若々しいキャンディの感じもありますが、口に含むとやわらかでなめらかで、香りとのギャップを感じました。価格を考えると、ワンダフル!


DON DAVID Cabernet Sauvignon Reserve 2005
CUMAよりも複雑で、これも燻したニュアンスがあります。酸がしっかりとし、タンニンは豊かなのに、ガチガチした感じではありません。アルゼンチンらしくないワインだと思いました。



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インタビューを終えて

冒頭に書いたように、アルゼンチンワインは国内需要から輸出に目を向けています。
現在の輸出先は、アメリカ、イギリス、カナダ、スカンジナビア諸国が中心となっています。

「アルゼンチンワインは国としてプロモーションを始めました。すなわち、今後は国のサポートが期待できるということで、これによって海外市場を確保していければと思っています」 とニコラスさん。

たしかに、ここ数年、アルゼンチンワインのプロモーションの機会が多くなったと感じます。

また、アルゼンチンには、このミッシェル・トリノの“CUMA”同様のオーガニックワインが多く、クリーンで洗練された高品質ワインがずらりと揃っています。
これを実現させているのは、乾燥して雨が少なく、病気にかかりにくい自然環境に他ならず、アルゼンチンでは無理なくオーガニックな栽培が可能です。

かつては、ちょっと野暮ったい感のあったアルゼンチンワインですが、新しいワインに出会うたびに、「これがアルゼンチンワイン?」と驚かされることしきりです。しかも、このミッシェル・トリノをはじめ、手頃な価格にも驚かされます。

コストパフォーマンスの良い高品質ワインを探すのなら、アルゼンチンは、もはや外せません。


一見サッカー選手?(笑)のニコラスさん


取材協力: 株式会社スマイル


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