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よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。
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第24回 Susana Balbo <Dominio del Plata>
今回のゲストは、アルゼンチンのドミニオ・デル・プラタのオーナーであり、チーフワインメーカーであるスザンナ・バルボ さんです。
スザンナさんと夫のペドロさんは、日本で初めて開催されるアルゼンチンワイン試飲会のために来日しました。
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<Susana Balbo>
1956年4月9日生まれ。
1981年に醸造学科を卒業後、さまざまなワイナリーのワインメーカーを経て1999年にドミニオ・デル・プラタ設立を決意。
2001年にワイナリー完成。現在はドミニオ・デル・プラタのオーナー兼チーフワインメーカー。
2006年3月、アルゼンチンワイン協会会長に就任。
夫のPedoro Marchevskyさんとは1994年に出会い、1995年に結婚。ペドロさんはドミニオ・デル・プラタのオーナー兼ヴィンヤードマネージャーを務める。
アルゼンチン初の女性ワインメーカー
スザンナさんはアルゼンチン初の女性ワインメーカーとして知られています。
数々のワイナリーで活躍し、また、アルゼンチン人として初めてヨーロッパのワイナリーのコンサルタント を務めてきましたが、ペドロさんというパートナーと出会い、2人のワイナリー、ドミニオ・デル・プラタが誕生しました。
その一方で、スザンナさんは2006年3月からWines of Argentina(アルゼンチンワイン協会)の会長に就任し、アルゼンチンワイン界の発展に努めています。
スザンナさんは、まさに現在のアルゼンチンワイン界を代表する人物といえます。
Wines of Argentinaについて
Q.Wines of Argentinaはどんな組織?
A.12年ほど前、アルゼンチンワインのブランドを確立するために設立されました。アルゼンチンワインを世界中のみなさんに飲んでいただくこと、品質の高さを知っていただくことを目的として活動しています。
Q.参加しているワイナリー数は?
A.仲の良い10のワイナリーで“Top 10 Association”をつくったのが始まりで、その後のAVA(Argentine Viticulture Association)を経て、Wines of Argentinaになりました。現在は、小さいところから大手まで、さまざまな規模の約100のワイナリーが参加しています。
Q.この3月に会長に着任したということですが?
A.それまでも取締役ではありましたが、前会長の退任により私が会長職を引き継ぎました。取締役会では女性は私一人だけでした。
Q.アルゼンチンでは、ワインづくりにかかわっている女性は少ないのでしょうか?
A.25年前は女性は私1人でした。今は女性のワインメーカーは30人くらいいると思いますが、まだまだ男性社会かもしれませんね。
Q.男性社会のアルゼンチンのワイン業界で、女性であるあなたが協会の会長に選ばれた理由は?
A.私はこの25年、真面目に正しい姿勢でワインづくりに励んできました。もちろん夫の助けがあったからですが。
得た知識や情報は惜しみなく他のワイナリーとシェアしてきましたし、そのオープンな姿勢と偏見を持たない態度、品質の高いワインをつくってきた実績が認められたからではないでしょうか。
アルゼンチンワインには“変革”が必要だといわれています。そのためには、ワイン以外のさまざまな業界を巻き込んで実施する必要があり、それには私が適任だと思われたことも、理由のひとつのようです。
Q.それはどのような変革ですか?
A.アルゼンチンワインを国際市場で受け入れられるような商品スタイルにしたいと考えていますので、そのためには、品質向上を目的とした技術革新が必要です。
Q.現在の輸出の状況は?
A.Wines of Argentina に参加するワイナリーの生産量の90%が輸出向けで、アメリカ、イギリス、ブラジル、カナダ、ロシア、ラテンアメリカ諸国、ヨーロッパ・・・と続き、日本は第9位です。
Q.アジアのマーケットについてはどのように考えていますか?
A.今回、香港と中国と日本で試飲会を行いました。毎年、世界25都市で試飲会を行っていますが、アジアでは初めての試みでした。非常に手ごたえがありましたので、今後アジアでも定期的に開催していけたらと考えています。
Q.国内市場の現状はどうなっていますか?
A.アルゼンチンでは、政治的かつ経済的問題から他国との国際交流がほとんどできなかった時期がありましたので、ワインは国内の嗜好を中心に、昔ながらの、古臭くてちょっと酸化したようなものがつくられてきました。
ですが、7年前くらい前からだいぶ様子が変わってきました。まず、インターナショナルなワインが好まれるようになり、安いワインをガブ飲みするというスタイルから良いワインを少しずつというように、飲み方も変わってきました。
70年代の終わり頃の国民一人当たりのワイン年間消費量は95リットルでしたが、現在は30リットルという数値がそれを物語っています。これは世界的な傾向(量より質)とも一致しています。
Q.ワインの消費量が減ったことについて、なにか対策は?
A.ワインを飲むためのさまざまな機会を提案したいと考えています。例えば、ゆっくり食事をしながら良質のワインを飲むディナータイムとか、考えれば色々ありますものね。
Q.アルゼンチンで人気の品種は?
A.アルゼンチンに昔からあるトロンテスは、かつては低い品質のワインが多かったのですが、現在はクオリティが向上し、再発見されている品種です。
他には、白ではソーヴィニヨン・ブラン、赤ではマルベックはもちろん、メルロが人気です。
Q.確かに、アルゼンチンといえばマルベックですが、その特徴は?
A.非常に恵まれた栽培条件にあるため、ブドウの房を完熟した状態で木に付けておくことができ、タンニンがよく成熟したブドウが得られます。色に深みがあり、ワインになった時点ですでに心地良く飲むことができ、長く熟成させることもできます。
早く飲みたい人にとっては、フルーティで甘さのあるタンニンのワインとして楽しめ、長く熟成させてワインのストラクチャーを楽しむ、ということができる品種です。
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Dominio del Plataについて
Q.ドミニオ・デル・プラタのコンセプトは?
A.1)正確なヴィティカルチャー、2)継続可能であること、3)醸造における高い品質、4)愛と情熱です。
1)まず、確実な技術と知識に基づいてブドウを育てることです。畑はヴィンヤードマネージャーである夫のペドロがブドウの成長をフォローしています。自分の目で見て細かくチェックし、プロセスの確認をすることが大事です。
2)子供たちに今のきれいな環境を残したいので、それを守るために長く続けられるプロジェクトが必要です。すべてオーガニックだから良いというわけではなく、不意のアクシデントにも対応できなければなりません、オーガニックよりも幅の広い統合的なコンセプトで継続していければ、と思っています。
3)品質の高いワインをつくるには、まず醸造知識が必要ですが、20数年の経験でそれは実現できるようになってきていますし、最新の技術にも対応したいと思っています。
4)ワインづくりには愛と情熱が欠かせません。自分ひとりだけでなく、家族一丸となって取り組んでいくことが大事だと思っています。
Q.ワイナリーのあるAgrelo(アグレロ)はどのような土地ですか?
A.地域はメンドーサで、標高は1000mあり、湿度20%くらいの半砂漠です。非常に乾燥しています。冬は寒く、夏の日中は暑いですが、夜になると14~18℃くらいまで気温が下がります。1日の気温の差が激しいので、ブドウの色付きが良く、黒ブドウに最適な場所といえます。「アグレロ」は「粘土」の意味で、実際ここの土壌は粘土質です。
Q.ワインづくりで重要な要因はテロワールでしょうか?品種でしょうか?
A.メンドーサでは雹が降ることがあり、場合によってはすべてを失うこともあります。そのため、テロワールも品種も大事ですが、人的な要因も大きな影響を与えます。
例えば隣り合った土地で、手のかけ方の違うブドウからワインがつくられた時、それは同じテロワールを持つワインといえるでしょうか?ワインは人がつくるものです。材料が良いか悪いかはもちろんのこと、生産者のパーソナリティが反映されます。これが“作者のワイン”で、“場所のワイン”という考え方とは対立するでしょう。私は良いパーソナリティを持ったワインを目指しています。
Q.ドミニオ・デル・プラタでは、アルゼンチンでは珍しいプティ・ヴェルドとカベルネ・フランを栽培しているようですが?
A.私のつくるワインにこの2つの品種が必要だったからで、ボルドースタイルの“ブリオーソ”にブレンドしています。カベルネ・フランは2ha、プティ・ヴェルドは1haですが、2001年に自分たちで植えました。植樹率は8000本/haです。
Q.普段はどのようにワインを楽しんでいますか?
A.アルゼンチンの料理はヨーロッパ風や地中海風のものが多いので、白ワインのトロンテスなどはサラダや野菜料理に合わせています。
アルゼンチンの主食は“肉”といっていいほど、1人あたり年間90kgも牛肉を食べます。肉にはマルベックの赤ワインですね。パスタ類もよく食べます。肉、サラダ、シチュー、パンやパスタ、といった組み合わせの食事が多いです。
Q.アルゼンチンワインと日本の食事との相性はいかがですか?
A.私は初めて日本に来ましたが、素材の自然の香りを生かして調理され、また、魚介料理がとてもきれいに作られていたことに感心しました。日本の食事はバラエティ豊かなので、アルゼンチンのワインともピッタリ合うものがあるはずと思いました。
アルゼンチンワインは薀蓄を語るためのワインではなく、飲むためのワインですから、色々な料理に合わせて楽しんでほしいと思います(ペドロさん談)。
<テイスティングしたワイン>
Crios
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Crios Trrontes 2005
Crios Malbec 2005
“Crios”は“子供たち”のこと。“Susana Balbo”シリーズのレベルに達しないキュヴェや若木からのワインがCriosになります。
ラベルにはスザンナさんの大きな手と子供たちの小さな手が描かれていますが、
「ラベルの子供たちの手は小さいですが、今では子供たちの身長は私よりはるかに大きく、手も大きくなりました」と笑うスザンナさん。
トロンテスはフレッシュで爽やか、マルベックはやわらかくチャーミングな味わいで、Criosシリーズは全体的にやさしい印象があります。毎日飲みたくなるワインです。
Susana Balbo
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Susana Balbo Malbec 2004
Susana Balbo Cabernet Sauvignon 2003
Susana Balbo Brioso 2003
スザンナさんの手がけるシリーズ。その年の最高のブドウを選び、より複雑かつ繊細な味わいとアロマを追求したワインです。
マルベックもカベルネもエレガントなタンニンが素晴らしく、フィネスを感じます。
ブリオーソはカベルネ・ソーヴィニヨンを主体に、マルベック、プティ・ヴェルド、カベルネ・フランをブレンドしたボルドータイプ。ブドウは完熟したものを使っているので、タンニンに丸みが出ていて、飲みやすく心地良いワインです。まだ若いですが、長期熟成が期待できそうです。
Ben Marco
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Ben Marco Malbec 2004
Ben Marco Cabernet Sauvignon 2004
Ben Marco Expresivo 2003
ペドロさんの手がけるシリーズで、ブドウ本来の味とアロマをそのままワインに表現することを目指しています。
マルベックはやわらかく、カベルネにはしっかりしたタンニンを感じます。
エクスプレシーボは、マルベック、カベルネ・ソーヴィニヨン、ボナルダ、シラー、タナの5種類のブドウをブレンドしたもの。ボナルダは70年という樹齢の木(ラベルに描かれているもの)のブドウも使われています。まだまだ固いものの、酸味が大変しっかりとしているので、もうしばらく辛抱すると素晴らしい味わいになりそうです。
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ブドウ園とシエスタ
“シエスタ”とはランチ&お昼寝休憩のこと。
ブドウ園では朝の8時から12時まで働き、12時から16時までがシエスタタイム。
その後16時から20時までもうひと働きします。お昼休みが長いのは、日中は暑くて仕事にならないからだそうで、なるほど合理的なシステムです。
休憩時間が4時間とたっぷりあるので、ランチにワインを1杯飲んでも、お昼寝すれば全く問題ありません。
ブドウ園で働く人たちはお昼になるといったん家に帰り、ゆっくりとシエスタをむさぼります。
一方、ワイナリー(ファクトリー)で働く人たちの勤務時間は朝8時から夕方17時までで、お昼休みは1時間。都会のオフィスと全く同じで、これでは昼休みにワインを1杯というわけにはいかないようです。
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■ インタビューを終えて
スザンナさんと夫のペドロさんはどちらも離婚経験者で、それぞれ2人ずつ子供がいました。1994年に出会い、1995年に結ばれた2人と4人の子供たちは一緒に暮らし始めます。
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家族で集まった時の写真を色々と見せてもらいましたが、本当に仲の良い家族で、2人が4人の子供たちに分け隔てない愛情を注いできたことが手に取るように伝わってきます。そうした2人の愛情を一身に受けて成長した子供たちは、ドミニオ・デル・プラタのワインのラベルデザインを手がけたり、農業技術者になったり、醸造学や経営学を大学で勉強中と、両親の志を継ぎつつあります。
スザンナさんがワインづくりで得た知識や情報を惜しみなく他の人に提供してきたことは、4人の子供たちに愛情を注いできたことと通じるものがあります。彼女の母性による深い愛情は、これからのアルゼンチンワイン界の力強い支えとなってくれること間違いなしです。
もちろん、夫と子供たちという家族の愛情に支えられたスザンナさん自身の今後の活躍も期待大ですね。
今回、日本で行われたアルゼンチンワインの試飲会では、かつてのイメージを覆す素晴らしい品質のワインが目白押しでした。
変革を遂げつつあるアルゼンチンワインは、今後要チェックです!
取材協力:アルゼンチン大使館
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