ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第25回 Vina Cono Sur@「キャッチ The 生産者」

2009-03-01 09:55:39 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2006年8月11日)

第25回  Adolfo Hurtado  <Vina Cono Sur>

チリのコノ・スル社から、チーフワインメーカー兼CEOのアドルフォ・フルタード
さんが来日。 コノ・スル社の新しい取り組みについて語ってくれました。



<Adolfo Hurtado >
1970年生まれ。
チリのカトリック大学農業学校を卒業後、カチャポアル・ヴァレーのVina La Rosa(ヴィーニャ・ラ・ローザ)にワインメーカーとして入社。26歳の時(1997年)にコノ・スルのチーフワインメーカーに就任。
現在はコノ・スル社のCEOでもある。


止まらない快進撃のヒミツとは?

日本市場でチリワインが不調といわれる中、2006年に入って4ヶ月で前年比147%と好調なコノ・スル社。
特にオーガニックワイン では、200%の伸びを見せる絶好調ぶりです。
その秘密はどこにあるのでしょうか?



Cono Sur  VINEYARD & WINERY
1993年 チリのラペル地区コンチャグア・ヴァレーのチェンバロンゴに設立
1998年 オーガニックワインに取り組み始める
1999年 ピノ・ノワール・プロジェクト発足
2006年 スクリューキャップを本格導入



Q.コノ・スルのワインは日本で非常に伸びていますが、どうしてでしょうか?
A.当社が設立された1993年当時のチリでは、伝統的なワインばかりがつくられていました。しかし、我々は新しいコンセプトのワイン、つまり、より品質の高いワインを発信していこうと考え、イノベーションのパイオニアとして、短期間に急激に成長してきました。
このようにして高い品質を保ちながら良いものを安定して供給してきた結果、我々のクオリティが日本の市場で受け入れられたのだと思います。

Q.イノベーションの具体例は?
A.1997年にはチリで初めてシンセティックコルク(プラスティック樹脂コルク)を採用し、その後、いち早くスクリューキャップを導入したのも当社です。2006年から、白ワインとピノ・ノワールの一部でスクリューキャップを本格的に採用することになりました。

Q.なぜスクリューキャップの本格採用に踏み切ったのですか?
A.コルク臭のトラブルをほぼ100%回避し、酸化のリスクを減少させることができるからです。さらに、ワインをよりフレッシュに保ち、よりよい状態で熟成させることもできます。これは実験でも確認できました。

Q.スクリューキャップに対する反応はいかがですか?
A.イギリスや日本では非常に受け入れられています。しかし、チリ国民は保守的ですので、国内での認識はこれからですね。
チリでは海外から他国のワインが入ってくることがほとんどなく、新しいものに目が行くというような環境にありません。国内市場で流通しているのは自国の伝統的なワインで、その大半が天然コルクです。2年前の段階では、スクリューキャップはほぼ拒絶されていました。ところが、ようやく国内でも少しずつスクリューキャップが受け入れられるようになってきました。
その他のワイナリーでもスクリューキャップを導入し始めていますが、まだトライアル的で、当社のように大々的に導入しているところはありません。

Q.オーガニックワインが順調のようですね?
A.1998年からオーガニックに取り組み始めました。ワイナリー内の化学物質をできるだけ排除し、自然のサイクルに従った栽培を行っています。ただし、当社の管理する畑は1000haと広いため、すべてをオーガニックにしようとすると手が回りません。
現在はチェンバロンゴの300haだけがオーガニックですが、そのほかの畑もオーガニック同様に厳しい規制の下、消費者にとってヘルシーなワインづくりを行っています。残りの畑の今後のオーガニックへの切り替えは、段階的に進めたいと考えています。

なお、現在オーガニックワインは1アイテムのみですが(赤ワインブレンド)、ピノ・ノワール、シャルドネでもつくる予定です。

Q.ドイツのオーガニック農産物認定機関“BCSエコ”の認定を受けているそうですが?
A.BCSエコはかなり厳しい認定基準の機関です。我々は、南米ということだけでなく、インターナショナルスタンダードとしてのオーガニックの認定を取得したかったので、評判の高いBCSエコを選びました。

Q.チリ国内でのオーガニックへの意識はいかがですか?
A.現在のチリではまだまだ環境への意識が低い状態ですので、オーガニックワインへの関心もほとんどありません。これからですね。

Q.貴社のアイコンワイン“OSIO”(オシオ)“ピノ・ノワール・プロジェクト”から誕生したということですが?
A.チリNo.1のピノ・ノワールをつくることを目的とし、ブルゴーニュのドメーヌ・ジャック・プリュールのマルタン・プリュール氏の協力の下、1999年にこのプロジェクトを発足させました。
他のワイナリーと違うものをつくりたいと努力した結果、ワインの品質が飛躍的に向上し、オシオが生まれました。
冷涼で良い区画の樹齢の高いブドウを選び、収穫量を抑え、より凝縮した味わいに仕上げています。昨年度はチリのベスト・ピノ・ノワールにも選ばれました。



Q.チリワインの特徴と魅力は?
A.南北に長いチリにはさまざまな気候があるので、各地に最適なブドウ品種があり、多様性のあるワインをつくることができます。当社でも、北はエルキ・ヴァレーから南はビオビオ・ヴァレーまで42の農園に適した品種を栽培し、最終的にはブレンドを行って良いものをつくる努力をしています。

また、チリは四方を自然の要塞に守られているので、他から病原菌の進入がなく、フィロキセラ禍もありませんでした。チリがブドウ栽培の楽園といわれるゆえんです。

Q.地域による特徴には、どんなものがありますか?
A.例えばチェンバロンゴのあるコンチャグア・ヴァレーとカサブランカ・ヴァレーで比較すると、チェンバロンゴの成長期の気温は28~29℃ですが、カサブランカは23~24℃と冷涼で、収穫時期も異なります(チェンバロンゴは3月中旬、カサブランカは4月の第2週頃)。
同じピノ・ノワールでも、チェンバロンゴではカシスやブラックベリーの濃い香りのするワインになりますが、カサブランカでは、フレッシュで花のような華やかな香りを持つワインになります。




<テイスティングしたワイン>   (S)はスクリューキャップ

White Wine

Cono Sur Chardonnay Varietal 2005(S)
冷涼地からのブドウを使用しているため、しっかりとした酸がフレッシュで心地良く、非常にコストパフォーマンスのよいシャルドネ。
バラエタルシリーズには、シンセティックコルクとスクリューキャップが使われています。

Cono Sur Vision Sauvignon Blanc Single Vinyard “Loma Roja” 2005(S)
ソーヴィニヨン・ブランのアロマと味わいが楽しめるワイン。
ヴィジョンシリーズは、シングルヴィンヤード(単一畑)からのブドウを使い、ワインメーカーが自由につくっているワインとのこと。


Red WIne

Cono Sur Organic Cabernet Sauvignon Carmenere 2005
紫の色が鮮やか。スパイシーさとやわらかさ、まろやかさが相俟って、飲み口良好。
チェンバロンゴのオーガニック栽培によるカベルネ60%、カルムネール40%をブレンド。

Cono Sur 20 Barrels Limited Edition Cabernet Sauvignon 2004
タンニンが豊かで、しっかりと凝縮した素晴らしいカベルネ。

20 Barrelsは、1995年にイギリスからのリクエストで品質の高いピノ・ノワールを20樽選んだことに始まるシリーズ。
実は“ピノ・ノワール・プロジェクト”はこのために始まったもので、ブドウを厳しく選別し、収量を落とし、樽熟成の期間も長くしています。
アドルフォさん曰く、「6~7年熟成させて楽しめます」とのこと。



Pinot Noir

Cono Sur Pinot Noir in Transition to Organic 2005
果実味が豊かで、酸味もしっかりとしたチャーミングなピノ・ノワール。
100%チェンバロンゴでオーガニックに転換中の畑からのブドウでつくられています。
08年ヴィンテージから正式にオーガニックワインとしてリリースします。

Cono Sur Reserve Pinot Noir 2005(S)
果実の甘さがありながらも引き締まったアタックで、凝縮感があり、余韻も長め。
リザーヴシリーズは、樽熟成させたキュヴェを高い比率でブレンドした、比較的クラシックなレンジに仕上がっています。

Cono Sur OSIO Pinot Noir 2004
深いガーネット。少しモワモワ感があり、スモークベーコンのような燻したニュアンスと豊かな果実味、濃縮感があります。年間3000本という超限定品。
“OSIO”はスペイン語で“余暇”の意味。「家族や友人と一緒にゆっくり飲んで、リラックスして過ごしてほしいということから名づけました」とアドルフォさん。


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インタビューを終えて

弱冠26歳という若さでチーフワインメーカーに就き、その実力を発揮してきたアドルフォさんは、2005年度のチリのワインメーカー・オブ・ザ・イヤーにも選ばれました。
そのワインメーカーとしての腕もさることながら、経営でも手腕を発揮し、コノ・スル社の業績をどんどん伸ばし続け、スクリューキャップや新プロジェクトにも積極的に着手し、確実に成果を出しているやり手です。

「スクリューキャップはマーケティング的な側面から始めましたが、テクニカル面でも効果があることがわかってきて、今後は非常に期待しています」とアドルフォさんは言います。

ニューワールドと言われながらも、実は古い体質を持っているチリで、さまざまな革新を行ってきたアドルフォさんとコノ・スル社は、クオリティの高いワインをコストパフォーマンス抜群のプライスで提供しています。これはコノ・スル社と彼の努力の賜物で、私たち消費者にとっては大歓迎です。

今後は、どんなことで私たちを驚かせてくれるでしょうか?

まずは、オーガニックに移行中のピノ・ノワールとシャルドネの本格リリースが待たれるところです。



右はアジア担当輸出マネージャーのゴンザロ・マリナさん


取材協力:株式会社スマイル


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