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よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。
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第37回 Sylvie Spielmann & Jean Claude Rateau
<Domaine Sylvie Spielmann & Domaine Rateau >
今回のゲストは、夫婦それぞれがフランスの著名生産地でワインづくりを行い、しかも普段は300kmも離れた生活を送っているという、
シルヴィー・スピールマンさんとジャン・クロード・ラトーさん夫妻です。
夫婦を一度に取材というのは、「キャッチ The 生産者」では初ですが、なかなか興味深い 話が聞けそうです。
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<Sylvie Spielmann> (シルヴィー・スピールマン)
アルザス地方のベルグハイム村(ストラスブールとコルマールの間に位置)生まれ。
1988年よりドメーヌ・シルヴィー・スピールマン当主。
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Jean Claude Rateau> (ジャン・クロード・ラトー)
1953年生まれ。14歳で家を出て修行に出る。
1979年、祖父母や父の所有するブドウ畑を元に、ボーヌにドメーヌ・ラトーを設立。
300km離れた情熱的カップル
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奥様のシルヴィーさんはアルザス、夫のラトーさんはブルゴーニュにそれぞれ所有するドメーヌがあるため、二人が一緒にいられるのは週末だけ。それでも毎週車を走らせて会いに行くというのですから、非常にラブラブな夫婦です。
しかも、遠く離れながらも、それぞれのワインづくりに情熱を注ぐ二人ですが、どちらのドメーヌもビオディナミ農法を行っているという、ビオディナミ夫婦でもあるのです。
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Domaine Sylvie Spielmann
Q.あなたがワインづくりを始めた経緯は?
A.この地で祖父が採掘の仕事をしていました。それが100年ほど続くスピールマン家の本業ですが、祖父はブドウを植え、副業的にブドウ栽培を始めました。その後、瓶詰めをするようになり、それがドメーヌ・シルヴィー・スピールマンの前身です。
父の代はコンクリート業で、石を仕入れて卸したりする仕事をしていますが、ワインづくりに関しては、母が祖父から引き継ぎました。
そして、母から引き継いだのが私です。兄も姉もいましたが、私は自然と接することが好きでしたので、私がワインづくりをしようと思いました。
まずシャンパーニュとブルゴーニュで勉強をし、カリフォルニアやオーストラリアのワイナリーにも修行に行きました。
そして、アルザスに戻って来たのが1988年です。
Q.あなたのいるベルグハイム村の土壌は特殊だと聞きますが?
A.ここは石膏(ギプス、フランス語ではジプス)を取り出していた採石場でしたので、ブドウ畑の下は石膏の岩盤となっています。
そのため、所有する8haの畑のうち7haが石膏混じりの泥灰土の土壌です。石膏は水分を閉じ込めるので保湿効果があり、ブドウの根に水分を補給してくれます。
また、石膏が混ざると重くて冷たい土壌になるので、ブドウが熟す速度はゆっくりになります。
よって、石膏混じりの土壌のワインは、何年か熟成して飲むとよりおいしくなるという特徴があります。
また、ミネラルをたくさん含み、ボディにフレッシュ感を与える酸が豊かなワインになります。これらはすべて石膏のおかげです。
Q.アルザスの土壌の特徴は?
A.アルザスの地形は、長い歴史を持ってつくられたため、非常に複雑です。かつてボージュ山脈とドイツの黒い森はつながっていましたが、地殻変動により、アルザス側とドイツ側それぞれに大きな断層ができました。アルザスのブドウ畑は、このボージュ山脈の断層に沿ってあり、縦100km、横2~5kmに広がっています。断層の上は花崗岩で、崖の下の方や平地は川からの丸い石ころ(アルプスから川の流れで流れてきたもの)が見られます。また、いくつもの段々もあります。
私の畑は石膏+泥灰土の土壌で、水の溜まる沼や潟だった時代にできた堆積土によってつくられました。他の土地は海だったところが多く、化石が堆積したものが多く見られます。火山岩(ランゲン)、スレート(カステルベルク)、貝殻土壌(カイゼルベルク)等、さまざまな土壌があり、13の土壌とぶどう品種7つの組み合わせで、アルザスというところは実に多種多様なワインがつくられる地域だといえます。
Q.醸造についてのこだわりは?
A.プレスは長い時間をかけてゆっくり行います。自然な醸造で、温度コントロールは行いません。自然酵母のみで4~5カ月かけて発酵させます。
良いブドウだけを選び、皮のうまみを出すためにオリと一緒に長く漬け込みます。旨味をどんどん取り出すことでワインの資質が高まります。こうした作業が土壌のミネラル分を引き出します。
Q.白ワインが主流のアルザスにおいて、赤ワインも生産しているということですが?
A.はい、ジャン・クロードと知り合ってからピノ・ノワールのつくり方を学んできました。
まずは、完熟したブドウからワインづくりをすることを心がけています。次に、以前はルモンタージュ(=発酵槽の下から果汁を抜いて循環させること)だったのを、ピジャージュ(発酵槽の上に浮かんだ果皮の塊をほぐすこと)に変えました。ピジャージュは、ブルゴーニュでは足で踏んで行いますが、私は手で行っています。これにより、ピノ・ノワールのやさしさが引き出され、繊細でやさしいワインになったと思います。
樹齢がまだ若いので新樽は使わず、ドメーヌ・ラトーの1年か2年使用樽を使い、丸みのあるピノ・ノワールに仕上げています。また、黒ブドウのスパイシーな味わいも出したいと思っています。
畑の剪定方法もジャン・クロードから習いました。樹液の流れをコントロールするコルドン仕立て(ブルゴーニュ方式)にし、自然に収穫量を抑え、資質のあるワインをめざしています。
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Domaine Rateau
Q.なぜビオディナミ栽培に?
A.ボージョレで自然なつくりのワインに出会い、感銘を受けたことがきっかけでした。そこで、ドメーヌを立ち上げた1979年からビオディナミ栽培を始めました。
自然な栽培をしていると、どんな時でも、熟度、健全さ、すべてにおいて、ブドウがバランスの良い成長をしているのを感じます。私のすることは、畑で植物の状況を見ながら、自然な対応を行うだけです。
例えば、2003年は酷い猛暑でしたが、長年ビオディナミでやってきたおかげで根が深く伸び、水分やミネラル補給が適度に行われ、ブドウの成長や成熟にはまったく問題ありませんでした。暑い年でも、土壌の味わいがどんどん出てくるワインになったと思います。
Q.あなたにとって、ワインづくりとは?
A.“ヴァン・ナチュール”(フランス語で“自然なワイン)は、すべてはブドウ次第で、自然が勝手につくるものだと思います。人、ブドウ、すべてが健全なハーモニーを持つワインで、テクニックを使った工業的ワインの対極にあるワインといえるでしょう。
結果はグラスの中のワインにあります。
私は気持ちと情熱をワインに込めているだけです。
Q.ブルゴーニュとアルザスの地形&地質の違いは?
A.アルザスよりシンプルですが、似ています。ブルゴーニュはアルプス山脈が隆起した時に山が落ち込んでできた渓谷です。昔は海でしたが、地殻変動時の圧力で砕けたものが土壌に混ざり、粘土石灰質がメインとなっています。
Q.地球温暖化の影響はありますか?
A.ブルゴーニュは比較的冷涼な気候ですが、温暖化により、今まで涼しかった場所でも毎年完熟したブドウが収穫できるようになってきています。
Q.ワインづくりにおいて、シルヴィーさんの影響はありますか?
A.白ワインのプレスの方法が変わりました。シルヴィーがやっているのと同様、ゆっくりゆっくりとプレスすることで、美味しい白ワインになってきたと思います。私のつくるワインの40%は白ですから、彼女から学んだ影響はかなり大きいですね。
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<テイスティングしたワイン>
Domaine Sylvie Spielmann
Riesling V.V. 2004
果実味が豊かで、フルーツの充実感を感じます。果実の甘味と酸味のバランスが良く、ボリューム感、旨味も楽しめます。
「祖父が1960年に植えた樹です。畑は泥灰質混じりの石膏土壌で、石膏土壌からは燻したような香りが感じられます。白い花のフレッシュ感があり、やさしい味わいのワインです。ミント、ウイキョウ等の涼しいハーブを感じ、繊細でミネラル感があります。食事に合うワインだと思います」(シルヴィーさん)
Riesling Grand Cru 2001
より強いミネラル感と果実味を感じます。ふくよかで厚みがあり、さすがグラン・クリュの風格を感じます。
「ここの土壌は、昔は海だったところの堆積土で、水晶が含まれています。水晶といってもジュエリー用ではなく、もっと硬くて加工しにくい鉱物です。
土壌に水晶が含まれていると、光合成が増えます。雨が多い年は水分を飛ばします。畑は3.2haのガイゼルベルクで、傾斜が大きいですが、岩があるので雨で土が流れることはありません。
水晶はパワーストーンといわれていますから、エネルギーを持った土壌といえます。しかも、ここは磁場のある土地と言われていて、かつて十字軍の宿舎があったのも、それに関係しているようです」(シルヴィーさん)
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Pinot Noir 2005
しっかりと辛口の赤ワイン。凝縮感があり、タンニンがなめらかです。樽のニュアンスはないものの、ほろ苦さを少し感じます。
「ブルゴーニュのピノ・ノワールが熟した約2週間後にアルザスのピノ・ノワールが熟すので、収穫時期決定の目安にもなっています。05年からはフィルターをかけず、ワインの旨味をそのまま残して瓶詰めしています」(シルヴィーさん)
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Domaine Rateau
Hautes Cotes-de-Beaune Blanc 2005
やさしい飲み口の、ピュアな白ワインです。
「オート・コート・ド・ボーヌは、かつてフィロキセラで死んでしまった土地ですが、現在は良い区画がたくさんあり、可能性のある土地です。ボーヌ1級畑よりも規制が厳しくありません。
私の畑では、風の通りをよくするためにY字に剪定をしています。中に湿気がこもらないので、ブドウが健全な状態でいられます。葉っぱが広がりやすく、そうすると自分で蒸発させ、光合成にも良い仕立てといえます」(ラトーさん)
Beaune 1er Cru Les Coucherias 2003
ほっとするやさしいワインで、突き刺すようなところは全く感じません。果実の旨味が充分感じられ、甘さの余韻も長く、質の高さを感じるワインです。
「ボーヌの1級畑の中でも、クーシュリアはちょっと特殊な畑です。南向きなので太陽が沈むまで日が当たり、日照量が多くなります。また、昔は石切り場(オスピスをつくるために切り出したところ)でしたので、硬い岩盤の上に表土があります。そのため、根が岩盤に近づくように深く張らせ、5~10mまで行くようにしています。土は繊細で、触るとポロポロ崩れますが、モンラッシェと同じ土壌なので、偉大な白ワイン向きです。完熟して凝縮した良いブドウが得られるので、リッチでボリュームがあり、ずっと余韻の残るものになります」(ラトーさん)
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Beaune 1er Cru Bressandes 2004
スパイシーな香りがあります。タンニンはまだ若くてタイトな感じがありますが、エレガンスを感じるワインです。
「傾斜の強い区画で、乾燥するため病気が少なく、種まで完熟するまで待つことができ、ブドウの実が凝縮します。ブレッサンドはボーヌの中でも熟すのが遅い区画ですが、私の目標は、完熟したピノ・ノワールでワインをつくることです。
これはたくさん抽出しようというワインではなく、エレガントさや女性的な優しさを残したワインです。まだ若いですが、タンニンの質がやさしく繊細で、もう1~2年置くと良いと思いますが、飲む1時間ぐらい前にカラフェに移しておくと良いでしょう」(ラトーさん)
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■ インタビューを終えて
「1999年にパリで試飲会があった時にジャン・クロードと出会ったんだけど、
私の方が好きになっちゃって(笑)」とシルヴィーさん。
そのラトーさんの影響で、シルヴィーさんがドメーヌ・シルヴィー・スピールマンにビオディナミを導入したのが1999年。愛の力はドメーヌの方向性を変えてしまい、そして二人は結婚、となったわけです。
しかしながら、普段は離れ離れという生活は淋しいかと思うのですが、この二人の様子を見ていると、いつも会えない分、一緒にいられる時は非常に嬉しいようで、特にシルヴィーさんのラブラブパワーがしっかりと伝わってきました。
しかも、ラブラブなだけでなく、シルヴィーさんは、特にピノ・ノワールづくりでは絶大な信頼をラトーさんにおき、
ラトーさんはシルヴィーさんのワインのことを、
「ピュアで明確につくられているワインで、土壌の味わいがしっかり出ています」と言っているように、お互いを尊敬し合っていることがよくわかります。
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ラトーさんはブルゴーニュで最も早くビオディナミに取り組み始め、そのラトーさんの影響でシルヴィーさんもビオディナミに転向したわけですが、二人からは、「ビオディナミでやっているんだ!」という気負いは全く感じられません。
ごくごく自然にやっている・・・、そんな姿勢がどちらのワインにも素直に現れていると感じました。
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すらっとしたラトーさんに、ふっくらとしたシルヴィーさん。このカップルは一見全く正反対のように見えますが、ハートは見事につながっているようです。
取材協力: BMO株式会社
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