11/14 私の音楽仲間 (533) ~ 私の室内楽仲間たち (506)
うろたえて
これまでの 『私の室内楽仲間たち』
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室内楽で Viola
引き続き、Mozart の レクィエム、その編曲版です。
第7曲は、“Confutatis maledictis”。 もちろん
ラテン語の題名です。
[譜例 1]は原曲の冒頭。 合唱と弦楽器の部分
のみをご覧いただいています。
[演奏例の音源]も、ここからスタートします。
編曲版では、2つの Violin パートが男声合唱を
担当しています。
次の[譜例 2]は 15小節目からの様子で、私が
受け持った Viola パートです。
(1) 弦楽器全員の、同じ動き。
(2) トロンボーン、(3) バセット-ホルン を経由して、
(4) 2つの Violin のユニゾンを、一手に引き受けています。
Violin さんたちは、ここでは女声合唱に回っている。
(5) Violins、Viola が鳴らす3つの音を部分的に受け持つ。
Vn.Ⅰ は、ここでも合唱を担当しています。
さて、今回の記事の題名は 『うろたえて』 ですね。
「ははあ。 曲をよく知らないものだから、演奏ぶり
が不安なんだな?」
そう貴方がお考えになっても、無理はありません。 事実、
そのとおりですから。
でも今回ばかりは、そうとばかりは言えないようなのです。
今回の “Confutatis” ですが、解説書によっては “呪われた
者”、あるいは “呪われ、退けられた者たちが”、“呪われた
者たちが退けられ”…などと記されています。
どれも一見、もっともそうなのですが…。
ところでこの単語、英語の “confused” に似ていませんか?
“混乱した”、“困惑した”…という、あれです。
さて、私はラテン語の知識など、ゼロに等しいのですが、
いくら辞書を引き、また検索しても、“呪われて” なる語句
には行き当りません。
“退けられて” も、ほぼ同様です。 これ、意味不明…。
ただし “Confutatis maledictis” の後者のほうは、
“呪われて” と訳せなくもありません。
接頭辞や接尾辞が二つ。 “mal” は “悪く”、
“dict” は “言われた” の意味だからですね。
しかし前者を差し置いて、“呪われて” を題名
にするのは、おかしくはないか。
識者のかたがたは、どうお考えでしょうか?
では、この “Confutatis” は、一体どういう意味なのか?
いくら検索を続けても、結果は同じようなものでした。
“審判を受けた者は誹謗され”、“呪われ、弁解の口
を封じられた者たちに”…となると、混迷の度は深まる
ばかりです。
“Confused”…。
仕方なしに、英語で検索したときのこと。
[English Translation of Mozart's Requiem]なる
ページに、以下の英訳文があるのを目にしました。
1 Confutatis maledictis,
2 flammis acribus addictis,
3 voca me cum benedictus.
4 Oro supplex et acclinis,
5 cor contritum quasi cinis,
6 gere curam mei finis.
1 When the accused are confounded,
2 and doomed to flames of woe,
3 call me among the blessed.
4 I kneel with submissive heart,
5 my contrition is like ashes,
6 help me in my final condition.
1 罪ある者 うろたえ
2 紅蓮の炎に 包まれるとき
3 祝福される側に 我を置きたまえ。
4 跪きひれ伏す 我が心の
5 砕かれし様 灰の如し
6 最期に臨みて 守りたまえ。 (拙訳)
1、2は、容赦の無い厳しいリズムと、男声合唱。
3 は Viola の優しい歌と、女声合唱。
4~6は、16分音符が切れ切れに喘ぎながら、
神秘的な転調が続く箇所です。
同じ[演奏例の音源]です。
さて、英訳文自体が正確かどうか。 今の私には解りません。
詳しいかたから、ぜひご教示いただければ幸いです。
しかし、もしそれが正しければ…。 “Confutatis maledictis”
を直訳すると、“告発された者たちは狼狽し”、“罪に問われて
うろたえ”…となります。
とにかく、“Confutatis” が “呪われて” でないことは確か
です。 曲の題名としては相応しくない。
また、“maledictis” を “誹謗、中傷され”、あるいは
“呪われて” と訳すことも、可能ではあります。
しかし “炎に包まれる” のは、最後の審判の結果
ですね。 それならば、“告発され”、“罪に問われ”
…のほうが自然ではないでしょうか。
いずれにせよ、10人足らずの私たちは、まだ演奏を
続けなければなりません。
厳しい耳を持った貴方に、今後も罪を問われながら。
[レクィエム 音源ページ]