MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

イチロー ~ 見えないチームプレー

2012-08-02 00:00:00 | 音楽演奏・体の運動

08/02      見えないチームプレー




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 米オールスター戦に10回も出場した、イチロー選手。



 貴方もご覧になりましたか? ベンチ内を写すカメラは、
その笑顔を何度も捉えていましたね。

 周囲の大選手たちと対等、あるいはそれ以上の存在
として認められ、楽しげにはしゃいでいる、少年のような
イチロー選手。 一ファンに過ぎない私も、いったい何度、
嬉し涙をこぼしそうになったことか…。

 2007年のオールスター戦では、ランニングホーマーを
放ち、MVPに選ばれました。




 その年のこと。 一緒に出場した、New York Yankees
生え抜きのスター選手、ジーターから、次のような強い
誘いを受けたと言われます。

 「キミとプレーしたいんだ。 一緒に優勝しないか!?」

 彼が契約にタッチするわけではありませんが、もちろん
「ニューヨークへ来い!」という意味です。 Yankees には、
やはりイチローを尊敬する、A.・ロドリゲス選手もいます。



 イチロー選手は、これまで3度、Seattle Mariners と複数年
契約を結んできましたが、この2007年は、4年契約の最後の
年でした。

 2008年を迎えるに当って、イチローは真剣に悩んだそうです。

 常勝を義務付けられた人気チームへ移り、優勝を争うか?

 それとも、今の環境で同じ目標を実現すべく努めるか?
その場合、同じように高い意識を持つ仲間は数えるほど
しかおらず、自分は “孤高の存在” で在り続け、後進の
面倒も見なければなりません。



 彼が選んだのは、Seattle に留まることでした。

 「今年こそ、このチームが優勝できるように貢献したい。」

 仲間の選手たちの顔、熱烈な Seattle のファンたちの顔
が、彼の脳裏からはおそらく消えなかったことでしょう。




 野球はもちろんチームプレー。 個人技ではありません。

 「チームが勝つために、自分は何をすべきか?」

 イチローは人一倍、その意識が強い選手であることは、
どなたもきっとご存じでしょう。



 ところが Seattle では、そのイチローを非難する記事が、
当初から珍しくなかったといいます。

 ① 「Mariners 敗戦の戦犯として、筆頭的存在!」

 ② 「個人記録をまず大切にする “高給取りの大スター”。」

 ③ 「チームの改革を阻害する主要原因。」




 ① イチローとて神ではありませんから、敗戦の責任を問われる
こともあるでしょう。 それは本人が一番よく解っているはずです。

 一流であればあるほど、論調も厳しくなる。 “原因~結果” を
短絡的に書きたがる米メディアには、トルストイの『戦争と平和』
でもじっくり読め!…と言いたくなります。




 ② 肉体的コンディションを維持するために、イチローは壮絶な
努力を続けています。 道具の取り扱いに払う神経も、並大抵
のものではない。 でもそれは、“個人記録本意だから” では
ありません。

 まず個人がベストの状態でなくして、チーム全体にどんな貢献
が出来るというのでしょうか?

 それとも、そこまで打ち込む選手は、米国人には皆無だから?




 ③ 必要なのは、“意識改革” だったんじゃないの?
上も下も。 Mariners 球団の。



 優勝を真剣に争うなら、あんな中途半端な補強なんて
考えられない…というのが、私の抱く毎年の印象でした。



 一方では、「あんな遊ゴロで二塁走者が飛び出したら、
三塁でアウトになるのは当たり前じゃないか!」 そんな
光景をテレビ中継で何度、目にしたことでしょうか。

 打撃、守備、走塁のうち、「最も難しいのは走塁だ。
1.000 (10割) に近い結果を求められるから。」
イチロー選手の言葉です。 チームプレーの本質を
占める分野だからなのでしょう。 その点で、選手
たちの意識は希薄で、教育も行き届いていません。




 ところが、まったく同じ状況で、Yankee となったイチロー
が “無謀にも” 三塁を狙った場面を、数日前にテレビで
観ました。

 結果はセーフ! ボールは一塁へ送られたからです。

 私が最初に受けた印象は、もしボールが三塁へ送ら
れたら、「間一髪でアウトかな…?」というものでした。
そうなれば、“暴走” の誹りを免れません。



 ところが、日本人解説者の直後のコメントは、私の “無知”
を戒めるものでした。 「ちゃんと、送球が背後から来るような
コースを走ってますよね!」 大島康徳氏だったでしょうか。

 つまり、もし遊撃手が三塁へ送球しても、「自分の背中に当る
ように、わざと大回りしていた」…ということ。



 これでは遊撃手は送球できません! もちろん、自分の俊足
も計算に入れた上のことだったのでしょう。 この深謀遠慮!

 ゴロを捕球した遊撃手は、一塁へ送球するしかなかったはず
です。 それを「瞬間的に判断しなければならないのが走塁だ。」
…と、イチローは言うのです。



 Seattle のメディアさん? イチローのこの姿勢、解ってる?




 Seattle のファンの熱烈な声援。 それをイチロー
選手は、きっと終生忘れないことでしょう。



 しかしまた、彼はこうも言っています。

 「Yankees のファンは、野球をよく知っている。」

 声援の仕方で、それが解るというのです。 その
タイミング、声の大きさ、果ては個々の内容…。




 野球は個人プレーではない。 それが一番
よく解っているイチロー選手。

 「少しでも質の高い環境でプレーしたい。」

 「それをゲームの勝利に結び付けたい。」

 「そのためにプレーしている自分を理解してほしい。」

 彼がそう望んだとして、誰が今回の移籍を非難できる
でしょうか?




 このところ4連敗の Yankees ですが、引き続き東部
地区の首位を走り続けています。

 イチローは、悲願のワールド シリーズ チャンピオン
になれるのか?

 今期の結果がどうあれ、今年限りで放出されるのか?

 その移籍先での野球人生は、どんなものになるのか?



 未だに “全国優勝” を経験したことのないイチロー。

 何よりもチームプレーを大切にするイチロー選手が、
祝杯にまみれ、泣き濡れる光景!

 ファンの一人として、私もそれを待ち侘びているのです。




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