MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

チャィコーフスキィ 弦楽セレナーデ

2009-04-04 00:20:16 | その他の音楽記事

04/04  チ(ャ)ィコーフスキィ と 『カマーリンスカヤ』

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       前回は、チ(ャ)ィコーフスキィ の

交響曲第4番ヘ短調作品36 (1877年) を見てきました。




 第Ⅳ楽章で突然生えてきた "白樺"。 実はこの
交響曲の、影の黒幕だったのかもしれません。



 作曲者を操り、民謡から代表作の交響曲を作らせ、
その主役にまでなってしまったのですから。






    今回の作品は、やはり名曲の一つ、

弦楽セレナーデ ハ長調 作品48 (1880年) です。




 ここで注目したいのは、やはり第Ⅳ楽章 Finale、その
一番終わりの部分です。



 あるサイトの言葉を借りれば、「最後に第楽章の
冒頭の部分が再現され全曲の統一が図られている」
とあります。

 なるほど、第楽章冒頭の主題が再現し、徐々に
テンポを上げながら、再び第楽章の主要主題へと
移り変わっていく部分があります。




 それでは、その部分だけでも、ご一緒に聴いてみましょう。

 下の音源で記してあるのは「」の数字で、その移行部分です。 




   音源



 [Boston's exciting, young conductorless
      chamber orchestra, "A Far Cry"

       (6'08" ~ 7'08")



 [At the 2008 Solo Ensemble Contest
       (6'51" ~ 7'31")



 [Christopher Morris Whiting, conductor.
   Zuercher Akademie Kammerensemble

       (7'02" ~ 7'47")



 [Performed by Bournville String
  Orchestra, conducted by Alpesh Chauhan

       (5'52" ~ 6'22")




  [第楽章 冒頭]






  [第楽章 終わりの部分]






 先ほど、「第Ⅰ楽章の主題が、第Ⅳ楽章の主要主題に
移り変わる」と書きましたが、私のこの表現は正しかった
でしょうか?



 そう言われてみれば、楽章を跨いでいても、この二つは、
両方とも下降する音階から出来ています。

 この二つの楽章の主題は、少なくともその由来はまったく
同じものなのではないでしょうか。




 また、第Ⅳ楽章の冒頭には、"Tema russo" (ロシアの主題)
と記されています。



 まるで作曲者が言っているようです。

 「実はね、第Ⅰ楽章の最初のテーマもね、

   ロシア民謡から作ってあったのさ、ハハハ。」





 それでは、第Ⅱ楽章のワルツは?



  [第楽章の冒頭]





 八つの音符が、ト長調の階段を軽やかに舞い上がって
いきます。

 (音源 )




 第Ⅲ楽章の "エレジー" は?



  [第楽章の冒頭]





 ニ長調の主題はこれも上昇音階で始まりますが、この譜例は、
それに先立つ序奏の部分です。 ViolinⅠには、10個の連続した
音符がありますが、まるで白樺の木々が、ロシアの空高く伸びて
いくようです。 同時に低音パートで下降形が奏されているので、
空間が余計に広く感じられます。

 (音源 )

 なおこの上昇音形は、前回の交響曲第4番、第Ⅰ楽章冒頭
の下降音階
を思わせます。 あたかもこの二曲でバランスを
取っているかのようです。 また後年、別の曲でも似た扱いが
見られます。




 この二つの中間楽章では、冒頭に滑らかな上昇形が使われ、
歯切れのよい両端楽章とは、敢えて趣を異にしています。



 しかし、上昇形は "下降形の裏返し"。 音形の素材としては、

       「すべてロシアのテーマに由来する

        と書いても間違いとは言えません。 




 なお、終楽章には「ロシアの主題」 ("Tema russo") と単数形で
書かれていますが、自作のピアノ連弾曲 "50のロシア民謡曲集"
(1868-69) から2曲を引用しています。 
 
   序奏部のゆっくりした、夢見るような主題は
      第28曲『緑の牧場で』、

   主部の活発なテーマは
      第42曲『緑のりんごの木の下で』です。




 (続く) →  『青りんごのタネ



  私は青りんごが大好きです。 今もこうして食べながら。
          (日本の "王林" ですが。)






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