MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

『用が無いなら構うなよ』

2009-04-15 00:00:07 | その他の音楽記事

04/15  グリンカの歌曲 ① 『用が無いなら構うなよ』




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  [音 源



① Galina Vishnevskaya sings Glinka



② Olga Kormukhina and Erik Kurmangaliev




  [歌 詞




   用が無いなら 構うなよ

     お決まりの その 優しさで。

       幻滅しちゃった 僕には無縁

         誘惑なんて 過ぎし日のこと!




    もう信じないよ 告白なんか

     愛に真実 あるわけ無いさ。

       無理だよ も一度 浸 (ひた) ろうなんて

         夢とは所詮 裏切り者よ!


               (繰り返し)




   滅入って言葉も 無いのにさ

     昔のことなど 喋るなよ。

       君は世話好き 僕 病人

         瞼 (まぶた) が重いよ ほっといて。 




   ウトウトすれば 心地良い

     かつての夢は 忘れよう!

       胸は確かに 騒いでいるが

         愛は君にも 呼び覚ませぬさ。


               (繰り返し)




               [拙訳]

         字句どおりの正確な訳ではありません。





 グリンカ (1804~1857) のこの歌は、一般に、

  『故なく私を誘うな』、
  『わけもなくぼくを誘わないで』、
  『いたずらに誘いをかけないで』

などの邦題で親しまれているもので、プーシキン (1799~1837)
と同時代のバラートィンスキィ (1800~1844) の詩に作曲され
たものです。



 詩の本来の題名は『幻滅』(1821年) で、歌詞の中にも同じ
語が見られます。 また『エレギア (哀歌)』という副題も添え
られ、今日まで伝わっています。

 グリンカはこの詩のごく一部を手直しし、25歳の年、1829年
に作曲しています。 音源②の二重唱もグリンカ本人による
編曲です。




 詩の内容は、ご覧のとおり、感傷的、投げやりなものです。

 原詩では、場面のやり取りが男性同士のものであることが、
途中で判るように書かれています。 ただし、実際の歌い手
が女性であることも多いのは、この曲に限らず、よく見られる
ことです。

 グリンカとよく比較される、シューベルトの作品であれば、
"絶望のふち" を感じさせる、『冬の旅』のような作品になった
かもしれませんね。 しかしグリンカのスタイルは、これとは
まったく別のものです。

 なお自身はこの曲について、「成功を収めた最初の歌曲」
と、のちに呼んでいるそうです。






 下記のサイトでは、優れた訳詞がご覧いただけます。



  日本・ロシア音楽協会 より

  伊東一郎氏訳詩 『故なく私を誘うな』

   ページ中頃、番目ぐらいにあります。

 (『グリーンカ歌曲歌詞対訳全集』として出版されています。)




  梅丘歌曲会館 詩と音楽 より

  藤井宏行氏訳詩 『わけもなくぼくを誘わないで』