04/15 グリンカの歌曲 ① 『用が無いなら構うなよ』
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[音 源]
① Galina Vishnevskaya sings Glinka
② Olga Kormukhina and Erik Kurmangaliev
[歌 詞]
用が無いなら 構うなよ
お決まりの その 優しさで。
幻滅しちゃった 僕には無縁
誘惑なんて 過ぎし日のこと!
もう信じないよ 告白なんか
愛に真実 あるわけ無いさ。
無理だよ も一度 浸 (ひた) ろうなんて
夢とは所詮 裏切り者よ!
(繰り返し)
滅入って言葉も 無いのにさ
昔のことなど 喋るなよ。
君は世話好き 僕 病人
瞼 (まぶた) が重いよ ほっといて。
ウトウトすれば 心地良い
かつての夢は 忘れよう!
胸は確かに 騒いでいるが
愛は君にも 呼び覚ませぬさ。
(繰り返し)
[拙訳]
字句どおりの正確な訳ではありません。
グリンカ (1804~1857) のこの歌は、一般に、
『故なく私を誘うな』、
『わけもなくぼくを誘わないで』、
『いたずらに誘いをかけないで』
などの邦題で親しまれているもので、プーシキン (1799~1837)
と同時代のバラートィンスキィ (1800~1844) の詩に作曲され
たものです。
詩の本来の題名は『幻滅』(1821年) で、歌詞の中にも同じ
語が見られます。 また『エレギア (哀歌)』という副題も添え
られ、今日まで伝わっています。
グリンカはこの詩のごく一部を手直しし、25歳の年、1829年
に作曲しています。 音源②の二重唱もグリンカ本人による
編曲です。
詩の内容は、ご覧のとおり、感傷的、投げやりなものです。
原詩では、場面のやり取りが男性同士のものであることが、
途中で判るように書かれています。 ただし、実際の歌い手
が女性であることも多いのは、この曲に限らず、よく見られる
ことです。
グリンカとよく比較される、シューベルトの作品であれば、
"絶望のふち" を感じさせる、『冬の旅』のような作品になった
かもしれませんね。 しかしグリンカのスタイルは、これとは
まったく別のものです。
なお自身はこの曲について、「成功を収めた最初の歌曲」
と、のちに呼んでいるそうです。
下記のサイトでは、優れた訳詞がご覧いただけます。
日本・ロシア音楽協会 より
伊東一郎氏訳詩 『故なく私を誘うな』
ページ中頃、9番目ぐらいにあります。
(『グリーンカ歌曲歌詞対訳全集』として出版されています。)
梅丘歌曲会館 詩と音楽 より
藤井宏行氏訳詩 『わけもなくぼくを誘わないで』